灸と自律神経②
この教材が答える問い「自律神経が整った」は、何を測った文なのか
この教材の数字3つ
- LF/HF比で交感・副交感バランスは測れない原著は仮説が反証されたと明言している
- HFの増加は迷走神経緊張の増加ではない国際的な専門家勧告が取り違えを戒めている
- 灸で神経活動を直接測った研究は今回の調査範囲では見出せなかった
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 11章 血圧という硬いアウトカム
表 11-1 の数値は「灸で血圧が下がった証拠」ではない。割付の隠蔽も評価者の盲検化も報告されていない試験の数値である[10]。血圧測定は評価者の期待に影響されやすいアウトカムであり、評価者盲検の欠如は重い。高血圧の患者に対して灸を降圧目的で提案することは、現時点のエビデンスでは支持されない。降圧薬の調整に関わる助言は、鍼灸師の業務範囲を超える。
- 13章 出版バイアスと国別の偏り
「鍼で副交感神経が高まるというメタ解析がある」という情報を、そのまま灸の説明に使うことはできない[13]。介入が違えば、根拠も別に要る。系統的レビューを引用するときは、①対象の介入が灸を含むか、②何件の試験が統合されたか、③著者自身が確実性についてどう述べているかの三点を確認する。
- 14章 有害事象
症例報告の総数が64例であることは、灸の有害事象が稀であることの証拠にはならない。症例報告は分母を持たないため、発生率を計算できない[15]。報告された事象の3分の2が熱傷であることは、施術上の注意がどこに集中すべきかを示している。とくに温度感覚が低下している患者(糖尿病性神経障害・脊髄損傷・意識レベル低下・小児)では、患者の「熱い」という申告に依存した温度管理が成立しない。灸の熱傷リスクと神経障害については既刊『灸と神経生理学②』第9章も参照されたい。
この教材を読むとできるようになること
- 序章「自律神経が整った」は、何を測った文なのか「自律神経が整った」という文が、何を測った文なのかを問い返せるようになる。
- 第I部何を測れば自律神経を見たことになるか指標ごとに、それが答えられる問いと答えられない問いの境界を引けるようになる。
- 第II部灸で測られた値を読む灸で測られた値を、測定条件と対照の側から検算できるようになる。
- 第III部交絡と方法論偽灸の妥当性と出版バイアスという二つの交絡を、名指しで指摘できるようになる。
- 第IV部安全性と空白安全性の報告と、この分野の空白を具体的に把握できるようになる。
分かっていないこと第15章「本書の範囲で見出せなかったこと」より
- 件数が少ないことは安全の証明ではなく、症例報告には分母がないため発生率は分かっていない
- 施術中の交感神経活動を直接記録した研究には到達できなかった
- 到達できなかった数値は記載していない
灸エビデンス・ライブラリ https://kyu.yomogi-base.jp