灸と免疫
この教材が答える問い「灸で免疫が上がる」は何がどれだけ測られた話なのか
この教材の数字3つ
- 臨床の刺激量では、ヒトの白血球は増えなかった米粒大2mgの追試で有意に変化したのは、施灸群ではなく非施灸の対照群だった
- ウサギで増えた分は、作られた白血球ではない原著は、好中球がマージナルプールから移動した見かけ上の増加と考察している
- 4週間続けると、動いた指標は消える週2回×4週間で白血球数・分画・リンパ球サブポピュレーションのいずれも変化しなかった
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 11章 反復すると消える
「灸を続けると免疫が上がる」という説明を、この研究は支えない。週 2回 を 4週間 続けても、白血球数も分画もリンパ球サブポピュレーションも動かなかったからである。ただし液性免疫(抗体)については、ウサギで 12週 にわたる群間差が報告されている。つまり細胞性の指標では反復の効果が確認されておらず、液性の指標では動物でのみ確認されている。この非対称を、そのまま伝えるのが正確な説明になる。
- 14章 偽灸は2006年から作れている
「灸は盲検化できないから質の高い試験がない」という説明は、2006年 以降は正確ではない。道具は妥当性を検証済みで存在し、参加者も施術者も区別できないことが示されている。それでもなお、感冒の発症をエンドポイントに置いた二重盲検試験に本書は到達できなかった。存在しない理由は、方法論ではなく研究資源の配分の側にある可能性が高い。
- 17章 研究方法論と未解決問題
臨床家にとっての結論は単純である。「灸で免疫が上がる」は、現時点では臨床アウトカムの根拠を持たない説明である。だからといって施術の価値が下がるわけではない。下がるのは、この説明を効果の保証として用いたときの信頼である。言えることの範囲を正確に語れる施術者は、言えないことを語る施術者より、長い目で見て強い。
この教材を読むとできるようになること
- 序章「免疫が上がる」という文の、主語を決める「免疫が上がる」という一文を、数・割合・活性という検証できる大きさに割れるようになる。
- 第I部免疫を測るとは何を測ることかNK活性や白血球分画の報告を読むとき、測定法と対照群と時点を先に確認できるようになる。
- 第II部動物で灸に起きたこと動物実験の所見をヒトの話に格上げせず、交感神経を介した全身反応として説明できるようになる。
- 第III部白血球増多報告の再現性「灸で白血球が増える」を、艾の大きさを添えて正確に語れるようになる。
- 第IV部ヒトで測られたこと灸単独の根拠と、鍼を含む介入の根拠を、引用の場で区別できるようになる。
- 第V部指標と発症のあいだ「灸で風邪をひきにくくなるか」に、三段の限定をつけて答えられるようになる。
分かっていないこと第17章「研究方法論と未解決問題」より
- 灸単独の介入で、ヒトのNK細胞傷害活性を測定した査読済み研究
- 感冒または上気道感染の発症を主要評価項目に置いた、灸の対照試験
- 健常者を対象に、灸を 4週間 を超えて反復したときの免疫指標を追跡した研究
灸エビデンス・ライブラリ https://kyu.yomogi-base.jp