灸の臨床|膝痛① 病態と適応
この教材が答える問い膝の痛みに灸を据えると決める前に、施術者は何を確かめるのか
この教材の数字3つ
- X線上の膝OAと症状のある膝OAは倍以上ちがう日本の地域住民3,040人で54.6%と24.3%。所見があることは痛むことを意味しない
- 重症度によって灸の効き方が分かれていた392人の解析でKL grade 2・3は改善が大きく、grade 4は有意な効果が示されなかった
- 臨床的に意味のある差は数値で共有されている膝痛の大規模試験では疼痛1.8単位(0〜10)、機能6単位(WOMAC 0〜68)
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 10章 適応をどこで線引きするか
患者が整形外科でX線を撮っているなら、grade を聞き取って記録する。それだけで、この表を使った説明ができる。撮っていない場合、症状が非常に重く日常生活が大きく制限されている患者では、まず医療機関の評価を勧める(第16章)。灸を続ける判断は、その後でよい。
- 13章 刺入深度が問うたこと
痛みと運動機能は、同じ介入に対して別々に動きうる。この試験では、痛みは両群で改善したのに、運動機能は浅刺群だけで改善した[13]。したがって「痛みが取れたか」だけを聞いていると、施術の条件を変えるべきかどうかの判断材料を失う。第6章で挙げた歩行時間の測定は、この点を補う。
- 17章 この分野で分かっていないこと
この巻の空白は、「効くかどうか分からない」ではなく「どこまで届くかが分かっていない」である。だからこそ、施術者が記録を残す意味が他の巻より大きい。KL grade・灸の種類・頻度・疼痛・歩行時間を書き残していけば、自院の記録が国際的な試験と同じ軸に乗る。この分野で足りていないのは、まさにそれである。
この教材を読むとできるようになること
- 序章画像の重症度と、痛みの重症度本書に出てくる数値がどの研究デザインから来たものかを、読みながら見分けられるようになる。
- 第I部膝痛という問題の形画像上の膝OAと症状のある膝OAを別の量として語り、併存する訴えまで見渡せるようになる。
- 第II部重症度をどう測るかKellgren-Lawrence分類が何を測っているかを説明し、評価尺度を役割で使い分けられるようになる。
- 第III部灸が届く層・届かない層重症度によって灸の適応の線を引き、進行した膝に何を目標として置くかを決められるようになる。
- 第IV部何が効果を左右するか頻度・種類・刺激量という、施術者が自分で決められる変数を報告値と照らせるようになる。
- 第V部測る・選ぶ測る軸と時点を決め、灸を選ぶ前に置くべき選択肢を患者に説明できるようになる。
分かっていないこと第17章「この分野で分かっていないこと」より
- KL grade 4 への効果
- 伝統的な灸とレーザー灸の同等性
- 日本の患者での対照つき試験
灸エビデンス・ライブラリ https://kyu.yomogi-base.jp