灸の臨床|産科② エビデンスと臨床判断
この教材が扱うこと数字を、額面で受け取らないために
この教材の数字3つ
- Cochraneは中等度で有効、西欧のRCTは陰性が並ぶ分娩時の非頭位は RR 0.87(95%CI 0.78–0.99)。個別試験では陽性と陰性が並存する
- 非頭位は減るのに、帝王切開は変わらないRR 0.94(95%CI 0.83–1.05)、I² = 0%、中等度の確実性
- 分娩を目的とした灸の対照試験は見つからなかった「安産の灸」が指している内容を検証した試験に到達できていない
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 07章 なぜ結論が割れるのか
患者に「Cochrane のレビューでは効果があるとされています」と伝えるのは、正確ではあるが不十分である。正確かつ十分な伝え方は次のようになる。「複数の試験をまとめると、灸をした群のほうが分娩時に頭位である割合がおそらく高い、と評価されています。ただし個別の試験では、効果があったものと、なかったものが両方あります。そして帝王切開になる割合は、まとめて見ても、ほとんど変わっていません」——この三文が、表1-1と表2-1の内容である。
- 10章 公表症例集積と、患者説明の型
項目1を最初に置くことが、この型の要点である。自然経過を先に伝えておくと、頭位になったときに施術者が手柄を主張しなくて済み、ならなかったときに患者が自分を責めなくて済む。順序を逆にして「灸には効果があります」から始めると、この二つの逃げ道が両方ふさがる。
- 11章 現在地・用量ログ・質評価ログ
表11-3で登録番号が記載されている試験は5件である。そのうち事前に計画書を公表しているのは1件[16]。この列を見ることは、効果量を見ることと同じくらい実務的である。登録のない試験の陽性結果は、報告バイアスの可能性を割り引いて読む。それは試験を否定することではなく、確実性の段を下げるということである。
この教材を読むとできるようになること
- 序章数字を、額面で受け取らないために効果量を読む前に、それを割り引く四つの理由を先に持てるようになる。
- 第I部灸のエビデンス骨盤位・つわり・分娩それぞれに、どの程度の根拠があるのかを確実性の語彙で言えるようになる。
- 第II部介入を分解する試験の介入に鍼が混じっていないかを1件ずつ判定し、偽灸が二種類あることを見分けられるようになる。
- 第III部参考:鍼ではどうなのか鍼のデータが灸の何を教え、何を教えないのかを区別できるようになる。
- 第IV部確実性と、分かっていないこと結論が割れている理由を、集団・対照・アウトカムの差として説明できるようになる。
- 第V部臨床判断と患者への説明研究結果を過剰に伝えず、期待できること・できないことを6項目で説明できるようになる。
分かっていないこと第08章「研究の限界と空白リスト」より
- 分娩の誘発・所要時間・分娩痛を主要アウトカムとした灸単独の対照試験を見出せなかった
- 妊娠悪阻に対して灸単独を検証し、かつ盲検化された試験を見出せなかった(原著自身が灸を比較した研究の数は限られていたと記す)
- 用量反応関係(時間・回数・期間)を検証した試験を見出せなかった
灸エビデンス・ライブラリ https://kyu.yomogi-base.jp