灸の臨床|産科① 病態と適応
この教材が扱うこと灸を選ばない判断のために
この教材の数字3つ
- 逆子は、放っておいても多くが頭位になる妊娠22〜26週で36.8%が骨盤位。分娩開始時まで残るのは4.2%である
- 「安全だった」という報告は、監視下で得られている入院管理・産科医との連携下の23名157回で、有害事象は2件(Grade 1)
- 至陰灸のあとの胎児死亡は、報告されたことがある公表された2例は、いずれも妊婦本人によるセルフ施灸だった
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 07章 妊娠に固有の危険——日本の実数
安全性について患者に説明できる内容は、確実性の順に次の三段である。①入院管理下・産科医との連携下では、23名157回で重篤な事象の報告がない[18]。②外来を含む371名1,916回で、施術回数あたり1.1%の有害事象が記録されている[17]。③世界の症例報告には、灸との関連が示唆される胎児死亡・早産の報告が存在する[15]。この三つを順に伝えることが、「安全です」と言うことよりも誠実であり、かつ患者の判断材料になる。
- 10章 症例——公表された有害事象報告
症例1が示す最も実務的な教訓は、「回った」で終わらせないことである。原著では、頭位への回転が確認されたあとに胎児心拍異常が見つかっている。施術者が患者に伝えるべきは「回りましたね」ではなく、「回ったかどうかは健診で確認してください。そして、胎動が減ったらすぐに受診してください」である。回転の確認も、その後の管理も、施術者の担当範囲ではない。
- 11章 この領域の適応の現在地
本書を読み終えた読者が明日から変えられることは、三つある。①施術前に、超音波での胎位確認と妊婦健診の受診状況を必ず聞く(表8-2)。②施術体位を左側臥位にする[17]。③表9-2の受診勧奨の閾値を、初回に文書または口頭で患者へ渡す。この三つは、効果の有無にかかわらず、今日から実行できて、患者の安全に直接寄与する。
この教材を読むとできるようになること
- 序章灸を選ばない判断のために「鍼灸」と書かれた研究と「灸」の研究を、介入分類表で読み分けられるようになる。
- 第I部三つの主訴を知る骨盤位・つわり・分娩それぞれの標準治療とレッドフラッグを挙げ、受診を勧める閾値を言えるようになる。
- 第II部患者は何に困っているのか患者の訴えのうち、研究で測られているものと測られていないものを分けられるようになる。
- 第III部安全性——妊婦に灸をする危険灸の一般的な危険が、妊婦では何によって許容度を変えるのかを説明できるようになる。
- 第IV部禁忌と連携の判断リスク5段階に沿って、行う/行わない/確認するを判断し、中止基準を患者に渡せるようになる。
- 巻末この領域の適応の現在地この領域で根拠が「実証」なのか「慣習」なのかを、項目ごとに区別できるようになる。
分かっていないこと第11章「この領域の適応の現在地」より
- 分娩の誘発・所要時間・分娩痛を主要アウトカムとした灸の対照試験を見出せなかった
- 妊娠悪阻に対する灸の個別の公表症例報告を見出せなかった
- 骨盤位の訴えのうち、自責・予定の不確実性・不安に対応する研究アウトカムがない
灸エビデンス・ライブラリ https://kyu.yomogi-base.jp