灸と痛みの生理学②
この教材が扱うこと二分冊の②にあたる本書は、痛みの種類別の臨床エビデンスと、その数値の読み方を扱う
この教材の数字3つ
- 疾患別の効果量を一覧にして並べるそのうえで、なぜ額面どおり受け取れないかを書く
- 撤回されたメタ解析が引用され続ける診療ガイドラインの記載にも誤りが指摘されている
- 熱傷の頻度は試験によって桁が違う安全性ではなく何を記録したかが違っている
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 09章 安全性——熱傷と有害事象の実数
感覚が低下している部位への施灸は、患者の「熱い」という訴えを安全弁として使えないことを意味する。第2章で扱った神経障害性疼痛の患者には、まさにこの条件が当てはまる場合がある。神経障害性疼痛に対する灸の適応を考えるとき、効果量の議論より先に、その部位の温度覚が保たれているかを確認する必要がある。
- 06章 炎症マーカーは動くのか
炎症マーカーの変化を灸の効果の説明として患者に用いる場合、その根拠は出版バイアスが検出された中国単一国由来のメタ解析であり、痛みとの対応関係は検討されていない、という条件が付く。説明の材料としては弱い。『灸と痛みの生理学①』第12章で見た「炎症性疼痛では温度依存的に鎮痛が強まる」という動物実験のほうが、機序の説明としては筋が通っている。
- 10章 撤回論文とガイドラインの誤り
結論だけを引用する態度は、この二種類の事故のどちらにも無防備である。教材・研修・患者説明で数値を用いるときに最低限必要なのは、次の三つの確認である。①その論文は撤回されていないか。②その数値は原著の表に実在するか。③統合値のI²と対照の内容は何か。本書がすべての数値に文献番号と到達可能なURLを付しているのは、読者がこの検算を実行できるようにするためである。
この教材を読むとできるようになること
- 序章疑い方を先に渡す効果量の数字を見たときに、まず何を割り引くべきかの手順が身につく。
- 第I部痛みの種類別に見る灸の反応痛みの種類ごとに灸の反応を整理し、データがない領域を空白として名指せるようになる。
- 第II部数字の読み方・安全性・未解決問題偽灸の妥当性・有害事象の実数・撤回論文という三つの落とし穴を避けられるようになる。
分かっていないこと第11章「研究方法論と未解決問題」より
- 灸がヒトの痛覚閾値(圧痛閾値・熱痛閾値)をどれだけ変えるか
- 灸がヒトでCPMを誘導するか
- 『灸と痛みの生理学①』第12章の温度反応曲線(炎症性=連続、神経障害性=階段状)がヒトで再現されるか
灸エビデンス・ライブラリ https://kyu.yomogi-base.jp