灸と痛みの生理学①
この教材が扱うこと二分冊の①にあたる本書は経路と機序を扱い、痛みの種類別の臨床エビデンスは②に送る
この教材の数字3つ
- 痛みは三つに分類される侵害受容性・神経障害性・侵害可塑性で灸の届き方が違う
- 「熱い灸」と「温かい灸」は別の刺激同じ機序の強弱として説明することはできない
- 灸が届いていない地点を明示する経路地図のどこに証拠が無いのかを一章使って書く
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 06章 下行性疼痛調節系とCPM
灸は侵害受容系への入力から始まる(第4章)。もし灸の鎮痛の一部がDNIC様の機構に依存しているなら、その機構が壊れている患者では同じ刺激が同じようには働かないことになる。罹病期間の長い患者、複数部位に痛みを抱える患者で反応が乏しいという臨床印象は、この生理学と整合する。ただし「灸がヒトでCPMを誘導するか」を直接測った研究には、今回の調査範囲では到達できなかった(第14章・『灸と痛みの生理学②』第11章)。
- 08章 灸の実測温度
棒灸において「距離」は補助的な調整項目ではなく、刺激の種類そのものを決める第一の変数である。高さ100 mmの棒灸は、この実測値に照らせば侵害受容器を動かす熱刺激ではない。効果が出ないときに壮数や時間を増やす前に、まず距離を確認する根拠がここにある。
- 14章 灸が届いていない地点
下行性抑制系の駆動を灸の作用機序として患者に説明することは、現時点ではヒトでの裏づけを欠いた説明である。動物実験と鍼の研究からの類推にとどまる。説明するなら「動物実験ではこう示されているが、ヒトでは確かめられていない」と付す必要がある。教材としてこれを書かずに済ませることはできない。
この教材を読むとできるようになること
- 序章疑い方を先に渡す痛みの話を聞いたとき、それが三分類のどれについての話かを先に確かめられるようになる。
- 第I部痛みはどんな経路をたどるのか末梢から脳まで痛みの経路地図を持ち、灸が触れうる地点を指させるようになる。
- 第II部灸が与えている物理量灸が与えている物理量を実測値で押さえ、熱い灸と温かい灸を別の刺激として扱えるようになる。
- 第III部灸はどの経路の何を動かすのか灸がどの経路の何を動かすのかを、動物実験とヒト研究を区別して説明できるようになる。
分かっていないこと第14章「灸が届いていない地点」より
- 本書の調査範囲では、灸がヒトの痛覚閾値(圧痛閾値・熱痛閾値)をどれだけ変化させるかを定量的感覚検査(QST)で測った査読済み研究に到達できなかった
- 同様に、灸がヒトでCPMを誘導するかを測った研究にも到達できなかった
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