灸と血流の生理学①
この教材が扱うこと二分冊の①にあたる本書は、血流そのものの生理学と、熱源としての灸の物理を扱う
この教材の数字3つ
- 血管抵抗は半径の4乗に反比例する半径が19%広がるだけで血流は2倍になる
- TRPV1は約43℃で開く灸の温度設計は42〜44℃という狭い帯域をめぐっている
- 艾の燃焼帯は550〜700℃皮膚に届くのは後方の赤外放射帯(200〜400℃)からの輻射
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 04章 温度受容の分子基盤:TRPチャネル
この分子機構は、同一部位に同じ灸を繰り返し据えたとき、物理的な温度が同じでも神経応答は目減りしうることを意味する。ヒトでの目減りは約25%と報告されており[66]、無視できない大きさである。実務上の含意は次の通り。 ①連続壮数を増やしても、後半の壮の神経応答は前半より小さい——『灸と血流の生理学②』第4章で見た「1壮と3壮で皮膚温に差がない」という所見[4]と整合する。②取穴を分散させる/日を空けるという伝統的な作法には、分子レベルの合理性がありうる。③一方で、深部加温(伝導熱)はタキフィラキシーの影響を受けないため、連続壮による深部温度の累積[20]とは矛盾しない。 ただし、灸を用いてヒトでタキフィラキシーを直接測定した研究は存在しない。これは他分野の知見からの外挿であり、本書では仮説として提示する。
- 04章 温度受容の分子基盤:TRPチャネル
短時間・高温の灸(透熱灸、温筒灸)は主に軸索反射相を、長時間・中等温の灸(棒灸、箱灸、灸頭鍼)は主にNOプラトー相を狙っていると整理できる。前者は「点で強く」、後者は「面で長く」。この違いが、後述する灸種別の血流曲線の形の違いとして現れる。
- 06章 42℃という境界線
灸の温度設計は「42℃を超え、44℃を超えすぎない」時間をどれだけ確保するかの勝負である。『灸と血流の生理学②』第2章で見る通り、市販の間接灸はいずれも42℃超過時間を 87〜182秒 の範囲に収めている。これは偶然ではなく、HSP誘導域に入りつつ熱傷を最小化するという物理的最適化の結果と解釈できる。
この教材を読むとできるようになること
- 序章血流という一本の軸で灸を読み直す「血流がよくなる」という一文を、どの血管床の何が何%という形に翻訳する準備ができる。
- PART I基礎生理学血流を決める量・皮膚循環の特殊性・血管径の制御系を押さえ、42℃という境界線の意味が分かるようになる。
- PART II灸の物理学と分類灸を伝導・輻射・成分という物理の側から分類し、灸法の違いを熱の伝わり方で説明できるようになる。
- PART III本書が答えられなかったこと血流について何が定量されていないかを、具体的に指させるようになる。
分かっていないこと第11章「本書の範囲で見出せなかったこと」より
- 反復施灸による血管機能の変化
- ヒトにおける TRPV1 タキフィラキシーの実測
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