灸の臨床|消化器② エビデンスと臨床判断
この教材が扱うこと効果量より先に、対照を見る
この教材の数字3つ
- 症状も血液も組織も動いたのに、内視鏡だけが動かなかったクローン病RCTでCDAIは210.84±48.03→95.49±41.70。CDEISは両群とも有意差なし
- 薬末を入れた隔物灸と、小麦粉を入れただけの隔物灸に差はなかったn = 210の多施設試験。有意差が報告されているのは灸と薬物のあいだである
- 過敏性腸症候群の灸試験20件のうち、割付隠蔽が記述されたのは2件19件が中国、偽対照はただ1件で、その1件は全般指標に差がなかった
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 08章 陰性の小規模試験をどう扱うか
便秘に対する灸について、施術者が言えるのはここまでである。「偽の灸と比べた試験は小規模なものが1件あり、差は出ませんでした。ただし人数が少なく、効果がないと結論できる試験でもありません」。第1巻の第10章で見たとおり、この試験も含めて灸の便秘試験が用いているのは患者の記録による指標だけである。大腸通過時間で灸を評価した試験には到達できなかった。したがって「腸の動きが変わった」という説明は、便秘についても現時点で支えを持たない。
- 12章 効果量そのものが警告灯になるとき
実薬対照の試験で、効果量が桁違いに大きいときは、効果ではなくバイアスを疑うのが順序である。これは灸に限らない一般則だが、この領域ではとくに有用である。実務的な目安を一つ置く。ある補完的介入が、確立した薬剤に対して2倍を大きく超える有効率を示しているメタ解析を見たら、まず含まれた試験の質と発表国の一覧を見る。そこを見ずに効果量だけを引用することは、患者に対して誠実ではない。
- 15章 GRADE表示の内部矛盾を見つける
この章から持ち帰るべきは、灸についての知識ではなく、読み方の習慣である。GRADE の格付けは、著者が付けた判断であって、データそのものではない。格付けの隣にある試験数と例数を必ず見る。そして格下げの脚注が付いていないかを見る。2試験しかないのに脚注が一つも付いていない「高」は、疑ってよい。これは論文を批判するための技術ではない。自分が患者に伝える確実性を、自分の責任で決めるための技術である。本書がこの章を置いたのは、査読を経た論文であっても、表の一マスを鵜呑みにしてはならないことを、実例で示すためである。
この教材を読むとできるようになること
- 序章効果量より先に、対照を見る効果量を見る前に、その数字が何と比べられた数字かを見る順序が身につく。
- 第I部機能性ディスペプシアのエビデンス偽対照アームのない試験から何を言い、何を言わないかを線引きできるようになる。
- 第II部過敏性腸症候群のエビデンス同じレビューの中で対照を変えると結論が反転することを、自分の言葉で説明できるようになる。
- 第III部便秘のエビデンス小規模な陰性試験を、過大にも過小にも扱わずに読めるようになる。
- 第IV部炎症性腸疾患と隔物灸試験群症状指標と内視鏡が食い違ったとき、それを指標の構造から説明できるようになる。
- 第V部割り引き方と臨床判断出版バイアスとGRADE表示の両方を、自分の責任で割り引けるようになる。
分かっていないこと第16章「患者に言えること、言えないこと」より
- 機能性ディスペプシアに対する、偽灸対照の盲検化ランダム化試験
- シンチグラフィ・¹³C呼気試験・無線モチリティカプセルのいずれかで、灸の胃排出能への影響を測った試験
- 大腸通過時間を測った灸の便秘試験
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