灸の臨床|婦人科① 病態と適応
この教材が扱うこと訴えの名前を決めるまで、灸の話はできない
この教材の数字3つ
- 慢性骨盤痛または不妊の患者の35〜50%が子宮内膜症生殖年齢の女性一般の約10%に対し、鍼灸院に来る集団では事前確率が数倍高い
- ホットフラッシュの熱中性帯は0.0℃まで狭まっている発汗を始める体温と震えを始める体温が一致している。温熱刺激は誘発因になりうる
- 「灸で子宮の血流が増える」を支える測定がない腹部加温のヒトデータは男性の上腸間膜動脈、灸の子宮データはラットしかない
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 08章 「冷え」という訴えの扱い方
この試験の介入はレッグウォーマー・運動・ツボ圧迫であり、灸は含まれていない。したがってこの結果を灸の根拠として引くことはできない。しかしこの試験は、別の意味で施術者にとって重要である。冷えの皮膚温は、レッグウォーマーを履くという単純な行為で数℃動く。灸を用いる場合、比較すべき相手はここである。何もしないことではなく、保温である。この基準を置かないまま「灸で温まった」と述べることは、比較を省略した主張になる。
- 11章 子宮血管への作用は、ラットでしか測られていない
階層Cである。ラットにエストラジオールとオキシトシンを注射して作った状態は、ヒトの原発性月経困難症ではない。また灸の条件——皮膚から2〜3 cm、1日20分、10日連続——は、体重300g前後の動物に対する刺激量であり、ヒトへ直接換算できない。この研究から臨床が受け取れるのは、機序として血管径の変化という経路があり得ることが動物で示されたという一点である。それは仮説の格上げであって、効果の根拠ではない。
- 14章 未解決問題——この巻の空白
この空白の一覧は、施術を諦める理由ではない。患者に何を言ってよいかの境界線である。「灸で子宮の血流がよくなります」は、現時点で言えない。「腹部を温めると腹部内臓の血流配分が変わることは男性で測られていますが、子宮についてはまだ測られていません」は言える。後者を言える施術者は少ない。それが差になる。
この教材を読むとできるようになること
- 序章訴えの名前を決めるまで、灸の話はできない効果の話に入る前に、訴えの名前を決める順序が身につく。
- 第I部月経という周期同じ「生理が重い」を、原発性・続発性・PMSに分けて扱えるようになる。
- 第II部不妊と更年期不妊と更年期について、灸を語る前に押さえるべき前提を数値で言えるようになる。
- 第III部灸が届きうる経路灸の熱が骨盤内に届くという説明を、どこまで測定が支えているかを指させるようになる。
- 第IV部安全性と連携の判断行う/行わない/確認するを、事前確率にもとづいて分けられるようになる。
分かっていないこと第14章「未解決問題——この巻の空白」より
- 本書の調査範囲では、灸がヒトの子宮動脈または子宮内膜の血流を変えるかを直接測定した査読済み研究に到達できなかった
- 灸を介入とし、保温を対照とした冷えの対照試験に、本書は到達できなかった
- 本書の調査範囲で見出せなかったもの——(1) 灸によるヒト女性の子宮血流の実測、(2) 灸を介入・保温を対照とした冷えの対照試験、(3) 月経周期を統制した灸のヒト生理実験、(4) 月経困難症に対する灸の Cochrane による評価
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