灸と呼吸器
この教材が扱うこと数値が動かない研究と、点数が動く研究
この教材の数字3つ
- 肺の実数が動かない研究でも、症状の点数は動く安定期COPDの220名試験で、6分間歩行距離は動き、努力肺活量と1秒量は動かなかった
- 「灸」という袋には、艾を燃やさない手技が入っているアレルギー性鼻炎のネットワークメタ解析が比べた5種のうち、艾を燃やすのは1種だけだった
- 偽灸を対照にした呼吸器の試験は、一つも見つからなかった妥当性を検証済みの偽灸デバイスは2006年から存在している
臨床への翻訳本文からの抜粋
- 13章 「悪化を遅らせる」と「良くする」
本章の二つの研究はいずれも鍼であって灸ではない。灸について同じ設計——偽灸対照、FEV1%を主要評価項目、用量反応の検討——が行われた研究に、本書は到達できなかった。COPDにおいて灸の話をするとき、この鍼の数値を借りてくることはできない。できるのは、灸でも同じ設計が可能であることを知り、それが行われていないという事実を正しく認識することである。
- 15章 信用区間が1360まで伸びるとき
ネットワークメタ解析の「最良」という語は、その解析が比較の網に入れた介入のなかで、という限定つきの語である。網の中身が違えば最良も変わる。信用区間が数百倍の幅を持つ順位づけを、施術方針の根拠にすることはできない。確認すべきは順位ではなく、信用区間の幅と、網に入っている介入の一覧である。
- 17章 研究方法論と未解決問題
本書の結論は、上巻と同じ形をしている。呼吸器疾患に対する灸は、「症状の点数が改善したという非盲検試験の報告がある」段階にある。肺の数値を動かしたという根拠には、本書は到達できなかった。この状態で施術を行うこと自体は否定されない。否定されるのは、この状態を「効果が証明されている」と言い換えることである。標準治療の隣に、限定つきで置く。それが現時点の根拠から導ける、唯一の位置づけである。
この教材を読むとできるようになること
- 序章数値が動かない研究と、点数が動く研究症状の点数が動いた研究と、肺の実数が動いた研究を、読む前に見分けられるようになる。
- 第I部アウトカムを読む道具「総有効率」という数字を前にして、確認すべき三点を即座に挙げられるようになる。
- 第II部「灸」という袋の中身メタ解析の結論を引用する前に、比較の網に入っている介入の一覧を確かめる習慣がつく。
- 第III部喘息喘息で差が出た研究と出なかった研究の違いを、介入と対照の指定として説明できるようになる。
- 第IV部COPDCOPDについて「良くする」と「悪化を遅らせる」を区別して語れるようになる。
- 第V部アレルギー性鼻炎ネットワークメタ解析の「最良」を、信用区間の幅とセットで読めるようになる。
分かっていないこと第17章「研究方法論と未解決問題」より
- 偽灸を対照とした、呼吸器疾患の無作為化比較試験
- 灸によって肺機能の実数(FEV1・FVC)に群間差が示された試験
- 喘息に対する灸の Cochrane レビュー
灸エビデンス・ライブラリ https://kyu.yomogi-base.jp