灸エビデンス・ライブラリ
Moxibustion & Gynecology II — 全16章

灸の臨床|婦人科② エビデンスと臨床判断

アウトカムを変えると、同じ灸が首位にも最下位にもなる。
どの指標が動いたのかを、効果量より先に見る。

第1版 2026年8月 月経困難症 / PMS / ART併用 / ホットフラッシュ / 確実性

3分で要点だけ

本文で示した報告値のうち、この教材の骨格になる3点。

  1. 生児出産率まで見た試験は1件、しかも有意差なし採卵数は 5.8±1.9 対 4.7±1.9(p = 0.012)で有意。累積生児出産率は 27.3% 対 13.3%(p = 0.172)
  2. 同じ灸が、指標を変えると最高位にも最下位にもなる更年期のネットワークメタ解析で総有効率 SUCRA 95.8%、Kupperman指数 SUCRA 0%
  3. 月経困難症のVASは、解析によって有意・非有意が分かれる有効率は両解析で一貫して有意。研究者が定義した二値指標と連続量で結果が食い違う

続けて読むなら 序章から。要点だけ確かめたい場合は 理解度チェック へ。

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序章

効果量を見る前に、何が測られたかを見る

この巻は婦人科領域における灸の臨床エビデンスを扱う。ただし本書の中心は効果の大きさではなく、何が測られ、何が測られなかったかである。同じ介入が、アウトカムを変えるだけで最上位にも最下位にもなる例を、この巻は二つ持っている。

この部を読むと効果量を見る前に、その数値にかかる四つの割引を先に持てるようになる。

00この巻の境界と、四つの割引

本書に出てくるすべての数値には、共通してかかる割引がある。序章でそれを先に渡す。あわせて、既刊との重複を避けるための境界を宣言する。

0-1 既刊との境界

原発性月経困難症に対する灸の鎮痛効果量は、既刊『灸と痛みの生理学② 臨床エビデンスと限界』が正本である。そこでは Yang ら 2017 の実薬対照試験[1]と、熱敏灸のメタ解析[2]を、痛みの効果量として詳細に扱っている。本書はそれを繰り返さない。

本書が扱うのは、痛みの強さ以外の指標である。具体的には月経痛の持続日数、鎮痛薬の使用、治療終了後の維持、施灸のタイミング、そして月経困難症以外の四主題(PMS・不妊治療の補助・更年期・子宮内膜症)である。

読む順の目安

灸で月経痛がどれだけ軽くなるかを知りたい読者は『灸と痛みの生理学②』へ。訴えの分類と施術の可否を知りたい読者は『灸の臨床|婦人科① 病態と適応』へ。本書はその二つの間を埋める巻である。

0-2 四つの割引

本書に登場する統合値のほとんどは、次の四つの割引を同時に受ける。個別の章で毎回繰り返さないため、ここで一度に述べる。

表 0-1 本書の数値に共通してかかる割引
割引内容本書での確認
1 盲検化されていない灸は熱と煙を伴うため、参加者の盲検化が原理的に難しい。多くの試験は評価者の盲検化も報告していない第4章・第14章
2 ほぼ全部が中国発陽性結果の比率が国によって偏ることが実証されている第14章
3 アウトカムが上流に寄る有効率・ホルモン値・採卵数といった代理指標が主要アウトカムに置かれる第8章・第9章
4 追跡が短い、または無い治療終了直後の値だけで結論が出されることが多い第2章・第13章

0-3 確実性の語彙

本書は効果の断定をしない。Cochrane の確実性の語彙に寄せて、次のように書き分ける。

高い確実性
「〜である」「〜を示している」
中等度
「おそらく〜する」「〜と考えてよい」
低い
「〜と報告されている」「〜の可能性がある」
非常に低い
「〜という報告があるが、確実性は非常に低い」
不明
「〜については定量的なデータが見出せなかった」

本書に登場する灸の統合値で、「高い確実性」に相当するものは一つもない。

0-4 この巻を貫く三つの問い

  1. その試験は、患者が本当に知りたい結果を測ったのか。
  2. その介入は、灸だけなのか。
  3. 対照群は、何もしなかったのか、それとも何かをしたのか。
第I部

月経困難症——痛み以外の指標

痛みの強さは既刊が扱った。この部が扱うのは、持続日数・鎮痛薬の使用・治療終了後の維持・施灸のタイミングである。いずれも、痛みの点数より臨床判断を変える指標である。

この部を読むと月経困難症を、痛みの点数ではなく持続日数・鎮痛薬・タイミングで語れるようになる。

01なぜ鎮痛効果量をこの巻で扱わないのか

この章は短い。既刊との境界を明示し、そのうえで本書が代わりに何を見るのかを述べる。

1-1 正本はどこにあるか

既刊『灸と痛みの生理学② 臨床エビデンスと限界』第3章は、原発性月経困難症を「内臓・骨盤の痛み」として扱い、Yang ら 2017 の実薬対照試験[1]の VAS 推移と、熱敏灸のメタ解析[2]の統合値を掲載している。そこには本書が繰り返すべきでない詳細——治療終了時点では実薬と差がなく、3か月後に差が現れたという時間構造の議論を含む——がすでに置かれている。

境界の宣言

本書は Yang ら 2017 と熱敏灸のメタ解析について、効果量の数値を再掲しない。書誌は引用文献に載せるが、それは読者が既刊と本書を往復できるようにするためである。

1-2 痛みの点数だけでは決まらないこと

臨床の判断は、痛みが何点下がったかだけでは決まらない。少なくとも次の四つが必要である。

  • 何日痛むのか。同じ痛みの強さでも、1日と4日では生活への影響が違う。
  • 薬を減らせるのか。鎮痛薬の使用量は、患者にとって痛みの点数より実感しやすい指標である。
  • やめたら戻るのか。治療終了後の追跡がなければ、通い続ける必要があるのかどうかが分からない。
  • いつ据えるのか。同じ介入でも、月経周期のどこで行うかで結果が変わりうる。

この四つを測った試験は、痛みの効果量を測った試験より少ない。だが臨床判断への寄与は大きい。以下の三章で順に見る。

02持続日数・鎮痛薬・治療後の維持

この領域で最大規模の無作為化試験は、痛みの強さだけでなく、持続日数・鎮痛薬使用・QOLを測り、治療終了後3か月まで追跡している。ただし効果量の実数は抄録に示されていない。

2-1 640名の隔物灸試験

Liu らは原発性月経困難症の患者640名隔物灸群と対照群に無作為に割り付け、3か月の治療と、その後3か月の追跡を行った[3]。主要アウトカムは VAS による疼痛緩和、副次アウトカムは Cox 月経症状尺度(CMSS)、月経痛の持続日数、鎮痛薬の使用頻度である[3]

表 2-1 隔物灸試験の報告内容(Liu ら 2019)[3]
項目報告された内容
疼痛強度両群ともベースラインより有意に低下(P < 0.05)。隔物灸群でより大きな低下(P < 0.001)
50%以上の疼痛減少隔物灸群で達成者が多かった
月経痛の持続日数3か月時点と6か月時点で隔物灸群が低い(P < 0.05)
CMSS同上(P < 0.05)
鎮痛薬の使用頻度同上(P < 0.05)
QOL身体・心理・社会・環境の各領域で両群改善。うち3領域で隔物灸が優越(P < 0.05)
効果の持続3か月の追跡期間を通じて維持された
この表に数値がない理由

本書は本研究の全文に到達できなかった。示されているのは有意性の判定のみで、効果量とその信頼区間は英文抄録に記載されていない。したがって「どれだけ減ったか」は本書からは言えない。言えるのは「群間差が有意であったと報告されている」までである。効果量が分からない有意差は、臨床的な意義の大きさを判断する材料にならない。

2-2 この試験の位置

それでも本書がこの試験を最初に置くのは、二つの理由による。

  1. 標本が大きい。640名は、この領域の灸の試験としては例外的な規模である。Song らのメタ解析に含まれた11試験は、最大でも120例であった[4]
  2. 鎮痛薬の使用頻度を測っている。これは患者にとって最も実感しやすい指標であり、同時に主観的評価の影響を受けにくい行動指標でもある。灸の試験で鎮痛薬使用を副次アウトカムに置いたものは多くない。
臨床への翻訳

「治療をやめたあと3か月間、効果が維持された」という報告は、臨床の設計に直結する。もし再現されるなら、灸は継続的に通い続ける介入ではなく、期間を区切って行う介入として設計できることになる。ただしこの試験は非盲検であり、追跡期間中の対照群が何をしていたかは抄録から分からない。患者に「3か月やれば効果は続きます」と言える段階ではない。言えるのは「治療終了後3か月まで差が続いたという報告が1件ある。ただし効果の大きさは公表資料からは確認できていない」である。

03いつ据えるか——タイミングという変数

同じ経穴に同じ灸をしても、月経周期のどこで行うかで結果が変わる。この問いを正面から比較した無作為化試験があり、そして同じ問いを扱ったメタ解析は、比較そのものを行っていない。

3-1 月経前か、月経中か

Liu らは原発性月経困難症の患者を3群に無作為に割り付けた[5]

A群
月経開始の5〜7日前から施灸
B群
月経の開始から終了まで施灸
C群
待機リスト(無治療)

介入は温和灸である。艾条を皮膚から2〜3 cm の距離に保ち、皮膚が赤くなるまで1穴あたり10分、1回30分を1日1回、5〜7日連続で3周期行った[5]。経穴は三陰交(SP6)と関元(RN4)である。対象は18〜30歳、規則的な月経周期、出産歴なし、VAS 4以上であった[5]

登録は233名(A 78・B 77・C 78)、完了は208名89.3%)である。脱落率は A 21.9%、B 11.8%、C 2.6% であった[5]

3-2 主要アウトカム——疼痛の持続

表 3-1 CMSS による疼痛持続の推移(中央値と四分位範囲)[5]
時点A:月経前開始B:月経中開始C:待機
ベースライン18.0 (15, 20)18.0 (15, 20)17.5 (12, 23)
治療1か月9.0 (6.5, 11)12.0 (9, 16)18.0 (13, 22)
治療3か月2.0 (1, 3)6.0 (3, 9)19.0 (12, 21.5)

3か月時点の群間差は、A 対 B が平均差 −3.44(95% CI −5.31, −1.57、A 対 C が −13.80−15.71, −11.88)、B 対 C が −10.36−12.11, −8.60)であった[5]。すべての群間比較で p < 0.001 である。

3-3 ところが、痛みの強さには差がなかった

同じ試験の別のアウトカムを見ると、様相が変わる。

表 3-2 同一試験における、指標ごとの A 対 B の判定[5]
指標A(3か月)B(3か月)A 対 B
疼痛の持続(CMSS)2.0 (1, 3)6.0 (3, 9)有意差あり(p < 0.001)
疼痛の強さ(CMSS)3.0 (2.5, 4)3.0 (2, 6)有意差なし(p = 1.000)
疼痛強度(VAS)0.5 (0, 1)2.0 (0, 3)有意差あり(p = 0.001)

疼痛の持続と VAS では月経前開始が優れ、CMSS の疼痛の強さでは差がなかった[5]。両群とも待機群に対しては、すべての指標で有意に優れていた(p < 0.001)。

読者への注意

同じ試験の中で、二つの疼痛指標が異なる判定を出している。CMSS の「強さ」と VAS はどちらも痛みの強さを測る指標である。したがってこの試験は、痛みの強さについて一貫した答えを出していない。主要アウトカムである疼痛持続に絞れば結論は明快だが、そこだけを引用すれば副次アウトカムの不一致が消える。本書は両方を並べる。

3-4 有害事象と脱落

有害事象は1件であった。A群で施灸時間が過長であったことによるもので、2日で完全に回復している[5]

脱落率のほうが注目に値する。月経前開始群の脱落は21.9%で、待機群の2.6%の8倍以上である[5]。月経の5〜7日前という時期を予測して毎日30分の施灸を続けることの負担が、この差に現れている可能性がある。

3-5 メタ解析はこの比較をしていない

Gou らは「異なる介入時期における月経困難症に対する灸」と題する系統的レビューを行い、10のRCT・625名(脱落19名)を統合した[6]。含まれた試験の介入開始時期は月経前3日(2試験)、5日(3試験)、7日(4試験)、14日(1試験)である。

ただしこのレビューは、月経前と月経中を比較していない。比較されたのは月経前の何日前に始めるかであり、サブグループ解析では介入時期間に有意差は認められなかった(p = 0.12)[6]

臨床への翻訳

タイミングについて現時点で言えることは、次の一文に尽きる。「月経の5〜7日前から始める方法と、月経が始まってから行う方法を直接比較した無作為化試験が1件あり、疼痛の持続については前者が優れていた。ただし脱落率も前者のほうが高かった」。月経前の何日前が最適かについては、10試験を統合しても有意差が出ていない[6]。したがって「3日前が最適」「7日前が最適」という指導は、現在の根拠を超えている。患者に伝えるべきは、月経前から始める設計と、それを続けられるかどうかの現実的な見積もりである。

04有効率は有意で、VASは有意でない

同じ疾患・同じ介入について二つのメタ解析があり、結論の向きが揃っていない。この章は、その食い違いの正体を分解する。

4-1 二つのメタ解析

表 4-1 月経困難症に対する灸の二つのメタ解析
項目Gou ら 2016[6]Song & Chen 2025[4]
試験数/参加者10 RCT/625名11 RCT/918名
有効率RR 1.16(1.06, 1.27)p = 0.001/I² = 38%OR 3.87(2.56, 5.86)p < 0.00001/I² = 0%
VASMD −0.68(−2.56, 1.20)p = 0.48/I² = 98%MD −1.47(−1.64, −1.30)p < 0.00001/I² = 52%
血清 PGF2αMD −4.65(−8.42, −0.88)p = 0.02/I² = 0%
CMSSMD −3.56(−5.19, −1.93)p < 0.0001/I² = 97%
試験の国すべて中国(中国語)すべて中国

4-2 同じ介入の VAS が、片方で有意・片方で有意でない

Gou らの VAS 統合値は MD −0.68(95% CI −2.56, 1.20)であり、信頼区間が 0 をまたいでいる。すなわち有意差はない[6]。しかも I² は 98% で、研究間の異質性は極端に高い。統合された試験はわずか3件である。

一方 Song らの VAS 統合値は MD −1.47−1.64, −1.30)で有意であり、I² は 52%、統合されたのは7試験である[4]

なぜ食い違うのか

両者は含まれる試験が違う。Gou らは中国語文献に限定し、対象を「異なる介入時期」の試験に絞っている[6]。Song らは2010年から2023年の試験を PROSPERO 登録(CRD42024580466)のもとで収集した[4]統合の対象が違えば統合値も違う。これはどちらかが誤っているという話ではなく、統合値が「どの試験を入れたか」に強く依存するという話である。統合値を引用するときは、必ず含まれた試験数と I² を併記する。

4-3 有効率という指標の性質

両解析で一貫して有意なのは有効率である。Gou らは RR 1.16、Song らは OR 3.87 と報告している[6][4]。Song らはさらに、対照が薬物である場合 OR 4.05(2.54, 6.46)、対照が鍼である場合 OR 3.26(1.33, 7.97)と報告している[4]

ただし有効率は、この分野に固有の合成指標である。「著効・有効・無効」といった段階を研究者が定義し、そのうち有効以上の割合を数える。定義は研究ごとに異なり、連続量である痛みを恣意的な閾値で二値化している。そして非盲検の試験では、この判定に評価者の期待が入りうる。

臨床への翻訳

本書はこの構図を次のように読む。連続量である VAS では統合値が不安定であり、研究者が定義した二値指標である有効率では一貫して有意である。この非対称は、効果が本物であることの証拠にも、判定バイアスの証拠にもなりうる。どちらかに決められない。したがって患者への説明は「複数のメタ解析で有効率の改善が一貫して報告されているが、痛みの点数そのものについては解析によって結果が分かれている」という形になる。有効率だけを引いて「メタ解析で有効性が確認されている」と述べるのは、不都合な指標を落とした要約である。

4-4 バイアスリスクと安全性の報告

Song らは ROB 2 による評価で、低リスク1試験、「いくつかの懸念」7試験、高リスク3試験と判定している[4]。盲検化は「灸の特殊性により不可能」とされた。ファンネルプロットは比較的対称で、出版バイアスは小さいと評価されている。GRADE による確実性評価は行われていない。

有害事象は11試験のうち3試験のみが報告した[4]。対照群で胃腸反応15例、めまい・頭痛6例。灸群では水疱・発赤・皮膚の痒みが個別例として記載された。

Gou らの統合では、2試験で合計6名に有害事象が報告され、それ以外の特定の症状は報告されていない[6]。バイアスリスクは全体として不明確で、割付の隠蔽に関する報告は限定的であった[6]

著者らが挙げた限界は、言語バイアス、出版の質の平均的な低さ、二重盲検の欠如、最大の標本数が120例にとどまること、ホルモン研究の限定性、経穴選択と施灸時間の不均一である[4]

05子宮内膜症に伴う月経困難症

続発性月経困難症のうち最も頻度が高いのが子宮内膜症である(第1巻第3章)。この集団に対する灸の試験は存在するが、灸単独の統合値は見つからない。

5-1 卵巣子宮内膜症の月経困難症に対する隔物灸

Chen らは卵巣子宮内膜症に伴う月経困難症の患者54名を無作為に2群へ割り付けた[7]。介入群は下腹部と腰仙部に隔物灸を週1回30分、3か月受け、必要に応じて鎮痛薬の使用が認められた。

測定されたのは疼痛の重症度スコア、月経困難症の持続日数、そして鎮痛薬の総投与量である。結果は、介入群で疼痛スコア・持続日数・鎮痛薬使用のいずれも対照群より有意に減少したと報告されている[7]。著者らは「卵巣子宮内膜症の患者において月経困難症の症状を効果的に改善し、月経困難症の日数を短縮できる」と結論している。

この試験について本書が確認できなかったこと

本研究は中国語論文であり、本書は英文抄録から引用している。効果量の実数、信頼区間、対照群が具体的に何を受けたかは、英文抄録からは特定できなかった。したがって本書はこの試験を「有意差が報告されている」以上の強さでは扱わない。階層Dである。

5-2 ネットワークメタ解析での位置

Su らは症候性子宮内膜症に対する鍼灸関連療法と薬物療法の併用について、23のRCT・1,545名を統合したネットワークメタ解析を行った[8]。総合症状の有意な減少を示したのは、耳電気鍼(SUCRA 83.0%)、温針灸+改良内異止痛方(SUCRA 80.6%、耳穴埋針(SUCRA 79.6%)であった[8]。体幹電気鍼・穴位埋線・耳穴埋針は、通常治療単独より有意に有効であった。

介入の分解

上位に入った「温針灸+改良内異止痛方」は、温針灸と生薬方剤の併用である。したがってこの順位から灸の寄与を取り出すことはできない。同解析において灸単独の枝がどう評価されたかは、本書が参照した範囲では特定できなかった。

臨床への翻訳

子宮内膜症の患者に対する灸について、現時点で言える範囲は狭い。「灸により疼痛と鎮痛薬使用が減ったという小規模な報告が1件ある。ネットワークメタ解析では温針灸を含む併用療法が上位に入るが、灸単独の寄与は分離されていない」。ここで決定的に重要なのは、子宮内膜症が進行しうる疾患であり、標準治療が確立していることである。灸による症状緩和は、内分泌療法や手術の適応判断を置き換えない。第1巻第3章の判断表で「区分3:条件つきで行う」に該当する典型例である。

第II部

PMS

PMSに対する灸は、ネットワークメタ解析の中で上位に位置づけられている。ただしその順位が何を意味するのかは、SUCRAという指標の性質を知らないと読み違える。

この部を読むとネットワークメタ解析の順位表を、効果の大きさと取り違えなくなる。

06PMSのネットワークメタ解析

PMSに対する外治法を横断的に比較した最新のネットワークメタ解析がある。灸は12の介入のうち上位3位に入っているが、比較の相手と有害事象の報告状況を見ると、順位の意味は限定される。

6-1 解析の規模と対象

Xie らは月経前症候群に対する中医学の外治法について、21のRCT・1,818名を対象にベイズ流のネットワークメタ解析を行った[9]。比較された介入は、鍼、、耳穴圧迫、指圧、八の字環刺法、耳穴圧迫+灸、皮下埋線、耳マイクロニードル、頭皮鍼+電気鍼、健脾疏肝鍼、霊亀八法鍼、鍼+穴位注射の12種と、対照群(通常西洋薬・プラセボ・無治療)である[9]

6-2 灸の位置

表 6-1 PMSに対する外治法の順位(Xie ら 2026)[9]
アウトカム1位2位3位
総有効率健脾疏肝鍼(SUCRA 95.7%)霊亀八法鍼(87.3%)灸(84.1%)
症状・徴候スコア耳穴圧迫(71.2%)指圧(69.4%)灸(61.7%)

症状・徴候スコアについて、灸は無治療対照に対して MD −14.36(95% CI −21.11, −7.61、p < 0.001)であった[9]。一方、灸と鍼の比較は MD 0.56−7.68, 8.80、p = 0.894)で有意差はなかった[9]

総有効率については、原著は灸が鍼より優れていたと記述し、RR 0.790.69, 0.92、p = 0.002)を示している[9]

読者への注意

この RR の向きに注意されたい。通常の定義では、リスク比が1を下回ることは、灸群でその事象が少なかったことを意味する。アウトカムが「有効」であれば、RR 0.79 は灸のほうが有効例が少ないと読める。原著の記述と数値の向きを一致させるには、事象が「無効」として定義されていたか、比較の分子と分母が本書の想定と逆でなければならない。報告された統計値だけからは、どちらであるかを本書は確認できなかった。したがって本書は、この値を灸が鍼より優れていることの根拠としては用いない。同種のラベル不整合は、既刊『灸と痛みの生理学②』が扱った熱敏灸のメタ解析でも起きている[2]。この分野では珍しくない事故であり、数値を引用する側が確認する責任を負う。

6-3 バイアスリスクと安全性

ROB 2 による評価は、低リスク3試験、不明12試験、高リスク6試験であった[9]。著者らは「大半の研究は選択的報告の詳細が不十分なため、バイアスリスクが不明であった」と述べている。

有害事象を記述的に報告したのは、21試験のうち2試験のみである[9]。報告された内容は、鍼における局所皮下血腫の発生率 5.56%、通常西洋薬における胃腸障害と片頭痛の発生率 45.83% であった。著者らは、この報告状況のため定量的な安全性解析ができなかったことを限界として挙げている[9]

その他に著者らが挙げた限界は、一部の介入が単一試験のみに支えられていること、治療プロトコルの臨床的異質性、PMS重症度の層別化が試験間で不統一であること、対照群の薬剤と中医学的技法が可変であること、大半の研究に追跡評価がないこと、そしてネットワークメタ解析に内在する統計的な複雑さである[9]

臨床への翻訳

PMSに対する灸について言えるのは、「無治療と比べれば症状スコアが改善したという統合値がある。鍼と比べた場合、症状スコアには有意差がない」までである。灸を選ぶ理由を「鍼より効くから」に置くことは、この解析からは支持されない。灸を選ぶ理由は効果の優越ではなく、自宅で継続できること・侵襲がないこと・患者の受け入れやすさといった実施可能性の側にある。ただしそれらを比較した試験も、本書の調査範囲では見つかっていない。

07SUCRAという順位指標の読み方

前章と第13章は、どちらもネットワークメタ解析の SUCRA を扱う。この指標は直感的に読めるように見えて、二つの重大な誤読を招きやすい。ここで一度だけ整理する。

7-1 SUCRA とは何か

ネットワークメタ解析は、直接比較されていない介入どうしを、共通の対照を経由して間接的に比較する手法である。その結果として各介入が「1位である確率」「2位である確率」……が計算される。SUCRA(surface under the cumulative ranking curve)は、その順位の分布を0%から100%の一つの数字にまとめたものである。100%に近いほど上位に来やすい。

7-2 誤読1——SUCRAは効果の大きさではない

SUCRA が高いことは、その介入が「他より上位に来やすい」という意味であって、効果が大きいという意味ではない。極端な場合、すべての介入の効果がほとんど変わらなくても、わずかな差で順位はつく。

具体例

Xie らの解析で、灸の症状スコアの SUCRA は 61.7% で3位である[9]。しかし同じ解析で、灸と鍼の症状スコアの差は MD 0.56−7.68, 8.80、p = 0.894)で有意差がない[9]順位はついているが、その順位を支える差は統計的に区別できていない。順位表だけを見て「灸は鍼より上位だった」と述べることは、この情報を落とす。

7-3 誤読2——SUCRAは証拠の確実性を含まない

SUCRA は点推定の分布から計算される。その推定を支えている試験が1件なのか20件なのか、バイアスリスクが低いのか高いのかは、SUCRA の数字に反映されない。Xie らは一部の介入が単一試験のみに支えられていることを限界として挙げている[9]。単一の小規模な非盲検試験に支えられた介入が、多数の試験に支えられた介入より高い SUCRA を得ることは十分に起こりうる。

7-4 SUCRA を見たときにする三つの確認

  1. その介入を支える試験は何件か。1件なら順位は不安定である。
  2. 順位の差を支える効果量の信頼区間は0をまたいでいないか。またいでいるなら、順位差は統計的に区別できていない。
  3. 同じ解析の別のアウトカムで、順位はどうなっているか。アウトカムを変えると順位が反転する場合、その介入の評価は指標に強く依存している。

三つめの確認が決定的に効く例を、第13章で見る。同一の解析の中で、灸が総有効率で最高位、Kupperman指数で最下位になる。

臨床への翻訳

ネットワークメタ解析の順位表は、患者説明に使いやすい形をしている。だからこそ危ない。「メタ解析で灸は3位でした」という説明は、情報として何も伝えていない。伝えるべきは、何と比べて、どのアウトカムで、どれだけの差があり、その差が統計的に区別できているかである。この四つを言えないなら、順位には触れないほうがよい。

第III部

不妊治療の補助

この部が本書の中核である。ART併用の灸について、「何が測られたか」を軸に一件ずつ分解する。生児出産率まで報告した試験は、本書の調査範囲で1件だけであった。

この部を読むとART併用の試験を、主要アウトカムの欄から読み始められるようになる。

08アウトカムの定義が結論を決める

第1巻第6章で、ARTの段階ごとにアウトカムが異なることを見た。この章はそれを研究の読み方に翻訳する。ART併用の灸の論文を読むとき、最初に見るのは効果量ではなく主要アウトカムの欄である。

8-1 三つの問い

ART併用の試験を読むとき、本書は次の三つを順に確認する。

  1. 主要アウトカムは何か。採卵数か、着床率か、臨床妊娠率か、生児出産率か。
  2. 介入は灸だけか。鍼、生薬、赤外線照射などが混じっていないか。
  3. 対照群は何を受けたか。無処置か、偽灸か、別の介入か。

8-2 なぜ主要アウトカムが最初なのか

試験は、主要アウトカムに対して検出力が設計される。副次アウトカムに有意差が出なかったとしても、それは「差がない」ことの証明ではなく、「その差を検出できるだけの症例数が確保されていなかった」という意味である可能性が高い。逆に、副次アウトカムを多数測れば、そのうちのいくつかは偶然に有意になる。

要点

主要アウトカムに生児出産率が置かれていない試験は、生児出産について何も検証していない。副次アウトカムとして生児出産率が報告され、有意差がなかった場合、それを「灸は生児出産を増やさない」と読むことも、「灸は生児出産を増やす傾向があった」と読むことも、どちらも誤りである。正しい読み方は「この試験は生児出産率について結論を出せる設計ではなかった」である。

8-3 なぜ生児出産率を主要アウトカムにする試験が少ないのか

第1巻第6章で述べた構造的な理由が働く。生児出産率を主要アウトカムにすると、必要な症例数が数倍に膨らみ、追跡は妊娠期間を超える。採卵数なら数週で決着し、少数例でも統計的な差が出る。資源の制約が、測られる指標を上流へ押し上げる。

この構造は灸に固有のものではない。ART の補助介入研究全般に共通する。しかし灸の場合、そこに非盲検・単一国・小規模という条件が重なる。

臨床への翻訳

不妊治療中の患者から「灸は妊娠に効きますか」と問われたとき、答えは「何をもって効くと呼ぶかによります」から始まる。採卵数が増えたという報告はある。着床率については有意差が出ていない。生児出産率については、それを主要アウトカムに置いた試験が見当たらない。この三段を順に伝えることは、患者を突き放すことではない。患者は治療の意思決定をしている当事者であり、上流の指標と下流の指標の違いを知る権利がある。

09生児出産率まで見た、ただ一つの試験

本書の調査範囲で、ART併用の灸について生児出産率を報告した無作為化試験は1件であった。この章はその1件を、報告されたすべての数値とともに検討する。

9-1 試験の設計

Song らは、神闕(RN8)への隔物灸が予期せぬ低卵巣反応者の生殖アウトカムに与える影響を検討する、無作為化・非盲検の優越性試験を行った[10]

対象
44歳以下で POSEIDON Group 2a に該当する女性。すなわち35歳以上で、刺激前の卵巣予備能は正常(AFC ≥ 5 または AMH ≥ 1.2 ng/mL)でありながら、標準的な刺激後の採卵数が4個未満であった者である[10]
割付
1対1。灸群50名、対照群50名
介入
神闕(RN8)への隔物灸を、月経周期2日目から採卵まで3日間隔で12回。1回120分、艾炷10個を用い、腹部への赤外線照射を併用した[10]
対照
体外受精のみ(無処置対照)。
Per-protocol解析
灸群44名、対照群42名

9-2 主要アウトカム——上流では有意

表 9-1 主要アウトカム(Song ら 2024)[10]
指標灸群対照群p
採卵数5.8 ± 1.94.7 ± 1.90.012
成熟卵(MII)5.0(IQR 3.5–5.0)3.0(IQR 2.0–5.0)0.008
利用可能胚4.0(IQR 2.0–5.0)2.0(IQR 1.0–3.0)0.014

9-3 副次アウトカム——下流では有意差なし

表 9-2 副次アウトカム(Song ら 2024)[10]
指標灸群対照群p
着床率33/112(29.5%)14/73(19.2%)0.116
生児出産率(新鮮胚移植あたり)4/17(23.5%)2/13(15.4%)0.672
生児出産率(凍結融解胚移植あたり)12/45(26.7%)5/33(15.2%)0.224
累積生児出産率9/33(27.3%)4/30(13.3%)0.172
余剰凍結胚を有する割合23/33(69.7%)12/30(40.0%)0.018
周期キャンセル率11/44(25.0%)12/42(28.6%)0.708

有害事象はいずれの群にも生じなかった。血算・肝機能・腎機能の安全性指標は正常範囲内にとどまった[10]

上流の指標では差が出て、下流の指標では出なかった
採卵数
p = 0.012
有意
利用可能胚
p = 0.014
有意
着床率
p = 0.116
有意差なし
生児出産率(累積)
p = 0.172
有意差なし

棒は有意性の有無のみを示す。効果の大きさを表すものではない

図 9-1 模式図である。ARTの連鎖のうち、上流の指標で有意差が出て、下流の指標では出なかったという構造だけを示している。値は Song ら 2024 の報告値[10]に基づく。

9-4 著者自身が挙げた限界

著者らは四点を限界として明記している[10]

  1. 主要アウトカムを生児出産ではなく採卵数にしたこと。
  2. 標本が小さく、妊娠アウトカムに対する統計的検出力が不足していること。
  3. 非盲検デザインのためプラセボ効果を除外できないこと。
  4. 分割期胚のみを用いたため、一般化可能性が制限されること。
この試験をどう読むか

本書はこの試験を、陽性の証拠としても陰性の証拠としても読まない。読み取れるのは次の三つである。(1) 特定の集団——35歳以上で卵巣予備能は正常だが採卵数が少ない女性——において、採卵数と利用可能胚数が有意に増えたという報告がある。(2) 着床率と生児出産率については、群間差が有意でなかった。(3) その非有意は、効果がないことの証明ではなく、著者自身が述べるとおり検出力の不足によるものでありうる。この三つを縮めて「灸で妊娠率が上がる」と述べることは、報告されていないことを述べることである。

臨床への翻訳

この試験には、施術者にとって実務的な情報が二つある。第一に、介入は「灸+赤外線照射」であり、1回120分・艾炷10個・3日間隔で12回という相当な用量である。これを再現しない施術で同じ結果を期待する根拠はない。第二に、対象は POSEIDON 2a という明確に定義された狭い集団である。不妊一般ではない。適応を広げて引用することはできない。患者への説明は「あなたと似た条件の女性を対象にした試験が1件あり、採卵数は増えたが、生まれた子どもの数については差が出ませんでした」という形になる。

10PCOS——鍼と灸を分離できない

多嚢胞性卵巣症候群に対する統合値は、本書に登場するなかで最も良好な数字を持つ。しかしその介入は「鍼+灸」であり、灸単独の寄与を取り出すことができない。

10-1 統合値

Li らは PCOS に対する鍼と灸の併用について、25のRCT・1,991名を統合した[11]

表 10-1 鍼+灸の PCOS に対する統合値(Li ら 2022)[11]
アウトカム効果量(95% CI)GRADE
妊娠率RR 1.81(1.58, 2.08)0%中等度
排卵率RR 1.31(1.22, 1.40)19%中等度
流産率RR 0.45(0.28, 0.73)0%中等度
LHMD −2.31 mIU/mL(−2.86, −1.77)76%中等度
LH/FSH比MD −0.47(−0.64, −0.30)67%中等度
卵巣容積MD −0.75 cm³(−1.30, −0.20)20.4%非常に低い
BMIMD −1.78 kg/m²(−2.53, −1.03)71%非常に低い
空腹時インスリンMD −2.48 mIU/L(−3.85, −1.12)68%非常に低い
総テストステロンMD −7.04 ng/dL(−9.38, −4.70)89%非常に低い
FSHMD −0.08 mIU/mL(−0.36, 0.21)p = 0.6081%非常に低い
エストラジオールMD 2.94 pg/mL(−1.05, 6.93)86%非常に低い
DHEASMD −0.56 μmol/L(−1.64, 0.52)97%非常に低い

GRADE で中等度と評価されたのは、妊娠率・排卵率・流産率・LH・LH/FSH比の5項目である。それ以外はすべて「非常に低い」と評価された[11]。FSH・エストラジオール・DHEAS は信頼区間が0をまたぎ、有意差がない。

10-2 灸を分離できない

このレビューは「鍼と灸の併用」を一つの介入として扱っている。用いられた灸の種類は温針灸16試験、懸灸5試験、灸箱3試験、その他である[11]

温針灸という問題

16試験で用いられた温針灸は、刺入した鍼の柄に艾を装着して燃やす手技であり、定義上、鍼と灸が不可分に結合している。この介入から灸の寄与を統計的に取り出すことは、解析手法の問題ではなく、介入の構造上できない。したがって表10-1の数値は、灸の効果量として引用できない。

10-3 バイアスリスクと国

バイアスリスクは低リスク1試験、中等度15試験、高リスク9試験であった[11]。試験の実施国は主に中国(江西・遼寧・湖南・安徽・雲南・広州・上海・南京)であり、1試験は所在が不明である。

著者らは、多くの研究が中等度から高いバイアスリスクを示すこと、FSH とエストラジオールにおける研究間の実質的な異質性が説明されないままであること、予測区間が「将来の研究は有意に異なる推定値を出しうる」ことを示唆すること、一部のアウトカムでは標本不足のため出版バイアスの検定が不完全であることを限界として挙げている[11]

臨床への翻訳

この表は、本書で最も引用したくなる数字を含んでいる。妊娠率 RR 1.81 は大きく、GRADE も中等度である。だからこそ、介入が何であったかを落としてはならない。PCOS の患者に灸のみを行う施術者が、この統合値を根拠として提示することはできない。提示できるのは「鍼と灸を併用した研究の統合では妊娠率・排卵率の改善が中等度の確実性で報告されているが、そのほとんどが温針灸であり、灸だけの寄与は分けられていない」である。介入を分解して伝えることが、この領域における誠実さの実体である。

11卵巣予備能低下と、灸単独データの不在

卵巣予備能低下(DOR)は、灸の適応として語られることが増えている領域である。しかし完了した対照試験は鍼のものであり、灸については試験がいま始まったところである。

11-1 鍼では偽鍼対照試験が完了している

Wang らは DOR の患者120名(18〜40歳)を鍼群と偽鍼群に無作為に割り付け、12週間にわたり週3回・1回20分の治療を行い、その後12週間追跡した[12]。主要アウトカムはベースラインから12週までの胞状卵胞数(AFC)の変化である。

完了は108名。12週時点の AFC の増加は、鍼群で中央値 2.00(IQR 0 〜 4.00)、偽鍼群で 0(IQR 0 〜 0.25)であり、鍼群が有意に大きかった(p = 0.003)[12]ただし24週時点では群間差が縮小し、有意でなくなった。AMH の上昇と FSH の低下は両群に生じ、群間差はなかった。有害事象は軽微であった[12]

この試験の位置

介入は鍼であって灸ではない。本書がこれを掲げるのは、二つの理由による。第一に、この領域で偽対照を置いた試験が実施可能であることを示している。第二に、主要アウトカムが AFC という代理指標であり、12週で出た差が24週で消えたという時間構造を持つ。灸の試験を読むときの参照点になる。

11-2 灸については試験が始まったばかりである

DOR に対する灸の無作為化比較試験は、本書の調査時点でプロトコルが公表された段階にある。He らは16週間の「陰陽調整灸」を介入とし、主要アウトカムを胞状卵胞数の変化、副次アウトカムを血清ホルモン・更年期症状・不安・抑うつ・QOL とする単施設の無作為化比較試験のプロトコルを公表している[13]。中枢の神経機序を調べるために安静時機能的MRIを併用する設計である。

プロトコルは結果ではない

プロトコル論文には結果がない。本書がこれを引用するのは、この領域に灸の対照試験が「まだ存在しない」ことの積極的な証拠としてである。試験が計画されている事実は、現時点で結果が出ていない事実と両立する。

11-3 この領域の空白

本書の調査範囲では、卵巣予備能低下に対する灸単独の効果を、対照を置いて検証した完了済みの無作為化比較試験に到達できなかった。

臨床への翻訳

この空白は、患者説明において具体的な言葉になる。「卵巣の予備能に灸が効くという臨床試験は、いま行われているところで、結果はまだ出ていません」——これは事実であり、患者を落胆させる情報ではなく、意思決定に必要な情報である。不妊治療は時間が有限な領域である。根拠のない期待によって標準治療の判断が遅れることは、この領域における最も重い害になりうる。第1巻第13章の判断表で「区分3:条件つきで行う」——主治医の治療を代替しないことを明示し、標準治療の継続を前提とする——に該当する。

第IV部

更年期のホットフラッシュ

この領域には二つの構造的な難しさがある。症状が年単位で自然に消えることと、対照に何を置くかが決まっていないことである。そしてここに、同じ解析の中で順位が反転する例がある。

この部を読むと同じ解析の中で評価が反転する例を、自分の言葉で説明できるようになる。

12対照に何を置くかで、この領域は決まる

ホットフラッシュに対する灸の無作為化試験は存在する。ただし対照は待機リストであり、著者自身がプラセボ対照の必要性を述べている。この領域で待機リスト対照が弱い理由は、第1巻で見た自然経過にある。

12-1 唯一到達できた無作為化試験

Park らは閉経周辺期および閉経後の女性51名を3群——灸1群、灸2群、待機リスト群——に無作為に割り付け、4週間で14回の施灸を行った[14]

結果は、4週時点で、治療群と対照群のあいだのホットフラッシュの重症度と頻度の差が統計的に有意になったと報告されている[14]。QOL の指標にも改善が示された。著者らの結論は「灸は対照と比較してホットフラッシュの頻度と重症度を減少させる」であり、同時に「より大きな標本と、おそらくはプラセボ対照を含む、さらなる研究」を推奨している[14]

本書が確認できなかったこと

本書は本研究の全文に到達できなかった。頻度と重症度の実数、群間差の大きさ、信頼区間は、参照した書誌情報の範囲では確認できていない。したがって本書は「有意差が報告されている」以上の強さでこの試験を扱わない。階層Dである。

12-2 待機リスト対照が、この領域でとくに弱い理由

第1巻第7章で見たとおり、血管運動症状は放置しても最終的には収まる。SWAN の報告では総持続期間の中央値は7.4年、日本系の女性では4.8年であった[15]。すなわち症状は数年かけて自然に減衰する。

さらに、症状の強さには大きな変動がある。加えて、この領域は主観的アウトカムのみで測られる。自然減衰・変動・主観評価という三つが揃うと、待機リスト対照との比較では、介入の効果と期待による効果を分離できない。

要点

Park ら自身がプラセボ対照の必要性を述べているのは、この構造を理解しているからである[14]本書は、この領域における偽灸対照の無作為化試験に到達できなかった。

12-3 施術そのものが症状を誘発しうる

Freedman と Krell は、症状のある閉経後女性で熱中性帯が直腸温にして 0.0 ± 0.06℃ まで狭まっていることを示し、運動負荷という軽度の熱負荷で症状あり群の全員にホットフラッシュが起きたと報告している[16]

臨床への翻訳

この所見は、効果研究の設計にも臨床の現場にも同時に効く。温熱刺激そのものが、この患者群では症状の誘発因になりうる。したがって施術中に生じた熱感やのぼせを「反応が出ている」と解釈してはならない。それは症状の再現である可能性がある。また、対照に「温めない偽灸」を置いた試験と「熱を与える偽灸」を置いた試験では、比較の意味が根本的に変わる。既刊『灸の臨床|産科② エビデンスと臨床判断』が骨盤位について指摘した「偽灸は二種類ある」という論点が、ここでは症状の誘発という形でさらに重くなる。

13同じ解析の中で首位と最下位が同時に起きる

本書で最も重要な一つの表を、この章に置く。同一のネットワークメタ解析の中で、灸はあるアウトカムで最高位、別のアウトカムで最下位になった。この事実は、順位表という形式そのものへの警告である。

13-1 解析の規模

Yang らは閉経周辺期症候群に対する鍼灸様式について、49のRCT・4,579名を統合したネットワークメタ解析を行った[17]。比較されたのは、手技鍼・電気鍼・灸・耳鍼・温鍼など16の様式と、西洋薬や生薬との併用である。試験の実施国は48件が中国、1件がオーストラリアである[17]

13-2 同じ介入、二つの順位

表 13-1 同一解析における灸の位置(Yang ら 2025)[17]
アウトカム灸の SUCRA順位本書の判定
総有効率95.8%最高位比較統計の向きを確認できず
Kupperman指数0%最下位電気鍼+西洋薬に有意に劣る
この二つの数値の出所

総有効率の SUCRA 95.8% は本文に明記されている。Kupperman指数の SUCRA 0% は順位図に示された値であり、本文は灸がこのアウトカムで最下位であったことを記述している[17]

Kupperman指数において、灸は電気鍼と西洋薬の併用に対し SMD −4.61(95% CI −5.62, −3.59)で有意に劣っていた[17]

読者への注意

総有効率について、原著は灸が耳鍼に対し RR 0.29(0.09, 0.49)、鍼+西洋薬に対し RR 0.18(0.04, 0.33)などで優越したと記述している[17]。ただし第6章と同じく、1を下回るリスク比を優越として提示する向きの問題があり、報告された統計値だけからは事象の定義を確認できない。本書はこれらの値を優越の根拠としては用いず、SUCRA の順位のみを事実として扱う。

13-3 なぜ反転するのか

二つのアウトカムは、測っているものが違う。

総有効率
研究者が定義した「著効・有効・無効」の段階のうち、有効以上の割合。二値化された合成指標であり、定義は研究ごとに異なる。非盲検の試験では判定に期待が入りうる。
Kupperman指数
更年期症状を項目ごとに重みづけして合計する連続量の尺度。個々の症状の変化が数値として反映される。

第4章で月経困難症について見た構図と、同じ構図である。研究者が定義した二値指標では灸が上位に来て、標準化された連続量の尺度では下位に沈む。

この一致が意味すること

月経困難症(第4章)と更年期(本章)という、疾患も解析も異なる二つの領域で、同じ非対称が現れている。「有効率では良く、連続量では良くない」という組み合わせは、この分野に繰り返し現れるパターンである。これが判定バイアスによるものなのか、二値化が臨床的に意味のある変化を拾っているのかは、現在のデータからは決められない。決められないということ自体を、読者は持ち帰るべきである。

13-4 この解析の質評価と限界

著者らは45試験が Jadad スコア4点以上(高品質)、4試験が3点(中等度)であり、「全体として中等度から高品質であった」と評価している[17]。一方でファンネルプロットによる出版バイアスの評価は「いくつかの懸念」とされた。

著者らが挙げた限界は、出版バイアスと小規模研究効果を除外できないこと、介入プロトコルとアウトカム定義の異質性、追跡期間が短く長期評価ができないこと、そして文献検索を英語とスペイン語の出版物に限定し、会議抄録・学位論文などの灰色文献を除外したことである[17]。著者らは、灰色文献の除外が治療効果の過大評価につながった可能性にも言及している。有害事象のデータは結果セクションに報告されていない[17]

読者への注意——報告の内部矛盾

この解析には、本文どうしが食い違っている箇所がある。方法の節は「中国語と英語で2025年6月17日までに公表された臨床試験」を検索したと述べ、検索先として PubMed・Cochrane Library・Web of Science・EMBASE に加えて CBM・CNKI・WanFang・VIP という四つの中国語データベースを挙げている。ところが限界の節は「文献検索は英語とスペイン語で公表された研究に限定した」と述べている[17]。この二つは両立しない。含まれた49試験のうち48試験が中国のものであることを踏まえれば、限界の節の記述のほうが誤りである可能性が高いが、本書はどちらが正しいかを断定しない。読者が持ち帰るべきは、Jadad スコアで高品質と評価された試験を集めた解析であっても、報告そのものの内部整合は保証されないということである。数値を引用する側が、方法の節と限界の節を突き合わせる責任を負う。

臨床への翻訳

更年期症状に灸を用いる施術者が、この解析から取り出せる説明は一つしかない。「灸は、研究者が定義した有効率という指標では上位に評価されていますが、標準化された更年期症状の尺度では、電気鍼と薬の併用に有意に劣っています。同じ解析の中で、指標を変えると評価が反対になります」。片方だけを引用することは、この解析が示した最も重要な事実——評価が指標に依存するということ——を隠す。第7章で述べた SUCRA の三つの確認のうち、三つめ(別のアウトカムで順位はどうか)が決定的に効く実例である。

第V部

確実性と臨床判断

ここまでの数値を、明日の判断と、患者に話す言葉に変換する。あわせて、本書が到達できなかったものを列挙して次の研究者に渡す。

この部を読むと患者に言えることと言えないことを、六つの文に収められるようになる。

14出版バイアス・単一国問題・安全性

本書に登場した統合値の大半は中国で実施された試験からなる。この事実がどれだけの割引を要求するのかを、実証データで確認する。

14-1 国によって陽性率が違う

Vickers らは、特定の国からの試験が一貫して陽性の結果を示すかどうかを検証した[18]。Medline(1966年1月〜1995年6月)の抄録を対象に、二つの解析を行っている。

鍼に関する解析では、1,085の抄録のうち252が適格であった。結果は明確である。中国・日本・香港・台湾を出所とする試験は、すべて陽性であった。ロシア/ソ連からのものは11件中10件が陽性であった[18]

鍼以外の無作為化・対照試験の解析では、1,100のうち405が適格であった。陽性の割合は次のとおりである[18]

表 14-1 国別の陽性結果の割合(Vickers ら 1998・鍼以外の対照試験)[18]
陽性の割合
英国75%
日本89%
台湾95%
ロシア/ソ連97%
中国99%

中国およびロシアの試験で、治療が無効であったと結論したものは一件もなかった[18]。著者らの結論は「一部の国は異常に高い割合の陽性結果を公表している。出版バイアスが一つの説明でありうる」である。

この表の読み方

三つ注意する。第一に、これは1995年までのデータであり、その後の研究環境の変化は反映されていない。第二に、日本も89%であり、この問題は他国の問題ではない。第三に、この表は個々の試験が捏造であることを示すものではない。陰性の結果が投稿されない、あるいは採択されないという出版の段階での選択が、公表された文献全体の姿を歪めるという指摘である。

14-2 本書の統合値への適用

表 14-2 本書に登場した統合値と、その試験の出所
統合値試験数出所
月経困難症(Gou ら 2016)[6]10すべて中国(中国語)
月経困難症(Song & Chen 2025)[4]11すべて中国
PMS(Xie ら 2026)[9]21中国のデータベースを中心に収集
PCOS(Li ら 2022)[11]25主に中国、1試験は所在不明
更年期(Yang ら 2025)[17]4948試験が中国、1試験がオーストラリア

本書に登場する統合値のうち、中国以外の試験を実質的に含むものは一つもない。これは灸の研究がそこに集中しているという事実の反映であり、研究者の資質の問題ではない。しかし、統合値を読む側にとっては、確実性の段を一段下げる理由になる。

14-3 安全性——本書の範囲での確認

本書が扱った試験のうち、有害事象について具体的な報告があったのは次のとおりである。

  • タイミング比較試験(208名完了):1件。施灸時間が過長であったもので、2日で完全に回復した[5]
  • ART併用試験(100名):いずれの群にも有害事象は生じなかった。血算・肝腎機能も正常範囲内[10]
  • 月経困難症のメタ解析:11試験中3試験のみが報告。灸群では水疱・発赤・皮膚の痒みが個別例として記載[4]
  • PMSのネットワークメタ解析:21試験中2試験のみが記述的に報告し、定量的な安全性解析ができなかった[9]
  • 更年期のネットワークメタ解析:有害事象のデータは結果セクションに報告されていない[17]
安全性の空白

婦人科領域の灸の試験は、有害事象をほとんど報告していない。報告がないことは、有害事象がなかったことを意味しない。既刊で扱ったとおり、症例報告のレビューでは6か国24論文64例が集計され、その大半(43例)は熱傷である[19]。系統的レビューは灸が「完全に無リスクではない」と結論し、発生率は不明であるため大規模な前向き研究が必要だと述べている[20]。本書が扱った領域の試験は、その前向き研究の役割を果たしていない。

臨床への翻訳

安全性について患者に言えることは、「臨床試験では重い有害事象はほとんど報告されていませんが、そもそも有害事象を報告している試験自体が少数です」である。これは「安全です」とは違う。第1巻第12章で述べたとおり、婦人科領域における実質的なリスクは熱傷ではなく受診の遅れであり、それはどの安全性レビューにも集計されない。

15患者への説明と、空白リスト

最後に、本書の内容を患者に話す言葉へ変換し、到達できなかったものを列挙する。空白の明示は、この教材の結論そのものである。

15-1 主題別・現在地の一覧

表 15-1 婦人科の四主題における灸の現在地(本書の判定)
主題言えること言えないこと
月経困難症複数のメタ解析で有効率の改善が一貫して報告されている[4][6]。持続日数・鎮痛薬使用・治療後3か月の維持を報告した640名の試験がある[3]VASの統合値は解析により有意・非有意が分かれる[4][6]。640名試験の効果量は公表資料から確認できない
施灸のタイミング月経前開始と月経中開始を直接比較した試験があり、疼痛持続では前者が優れた[5]月経前の何日前が最適かは、10試験の統合でも有意差なし[6]
PMS無治療対照に対して症状スコアの改善が報告されている[9]鍼との差は有意でない[9]。追跡評価をもつ試験がほとんどない
不妊治療の補助POSEIDON 2a群で採卵数・利用可能胚数の増加が報告されている[10]生児出産率に有意差はなく、それを主要アウトカムに置いた試験は見当たらない[10]
PCOS妊娠率・排卵率・流産率の改善が中等度の確実性で報告されている[11]介入は鍼+灸であり、灸単独の寄与を分離できない[11]
更年期待機リスト対照に対して頻度と重症度の減少が報告されている[14]Kupperman指数では最下位に評価されている[17]。偽灸対照試験に到達できなかった
子宮内膜症疼痛・持続日数・鎮痛薬使用の減少が小規模試験で報告されている[7]効果量を英文抄録から特定できない。ネットワークメタ解析でも灸単独は分離されていない[8]

15-2 患者に話す六つの文

効果の説明は、次の六文の範囲に収まる。これを超えると、報告されていないことを述べることになる。

  1. 「月経痛については、複数の研究をまとめた解析で改善の報告があります。ただし痛みの点数そのものについては、解析によって結果が分かれています。」
  2. 「月経の5〜7日前から始める方法と、月経が始まってから行う方法を比べた研究が1件あり、痛む日数については前者のほうが良い結果でした。」
  3. 「薬を減らせたという報告はありますが、どれだけ減ったかという数字は公表された資料からは確認できていません。」
  4. 「不妊治療の補助については、採卵数が増えたという報告があります。生まれた子どもの数については、差が出ていません。」
  5. 「更年期の症状については、評価する尺度を変えると結論が逆になる解析があります。」
  6. 「灸は、婦人科の検査や治療の代わりにはなりません。」
臨床への翻訳

この六文は、患者を灸から遠ざけるものではない。効果を大きく語る施術者は、患者が医療機関で受ける説明と矛盾する。矛盾した瞬間に、その施術者の言葉全体の信用が失われる。境界を正確に語る施術者は矛盾しない。矛盾しないことが、長く選ばれる条件である。第1巻第13章で述べたとおり、この領域で防御可能な立場は、効果の大きさではなく境界の正確さの側にある。

15-3 空白リスト——次に測られるべきもの

本書の調査範囲で到達できなかったものを、次の研究者が着手できる粒度で列挙する。

表 15-2 到達できなかった研究(本書の調査範囲)
#空白必要な設計
1ART併用の灸で、生児出産率を主要アウトカムに置いた試験がない生児出産率を主要アウトカムとし、そのための症例数を確保した多施設無作為化試験
2ホットフラッシュに対する偽灸対照試験がない熱を伴う偽灸と伴わない偽灸を分けた3群デザイン。第12章の誘発リスクを踏まえた安全性評価を含む
3卵巣予備能低下に対する灸単独の完了済み対照試験がないプロトコルは公表されている[13]。結果の公表を待つ
4640名試験の効果量が公表資料から確認できない[3]効果量と信頼区間を含む完全な報告
5PCOSで灸単独の枝を持つ試験がない[11]温針灸ではなく、鍼を伴わない灸を介入群とする試験
6中国以外で実施された婦人科領域の灸の試験がほとんどない[18]他地域での再現試験
7婦人科領域の灸の試験が有害事象をほとんど報告していない[9][17]有害事象の前向き系統的収集を組み込んだ試験

加えて、第1巻第14章で挙げた四つの空白——灸によるヒト女性の子宮血流の実測、灸を介入とし保温を対照とした冷えの対照試験、月経周期を統制した灸のヒト生理実験、月経困難症に対する灸の Cochrane による評価[21]——は、本書でも埋まらなかった。

空白の性質

ここに挙げた11の空白は、いずれも「効かないことが示された」ではなく「まだ測られていない」である。両者を混同してはならない。しかし同時に、「まだ測られていない」は「効く」でもない。現時点で言えるのは、測られていないということだけである。この一文を言えるかどうかが、教材を読んだ施術者と読んでいない施術者を分ける。

演習

理解度チェック

本書の内容から10問。選択するとその場で正誤と解説が出ます。設問はすべて本文に記載した報告値・記述に対応しており、各問には該当章へのリンクを付けました。自己確認のための演習であり、資格や技能を証明するものではありません。

第I部月経困難症——痛み以外の指標3問
Q01 出典:第1章

月経困難症に対する施術の評価として、痛みの強さ以外に見るべき指標はどれか。

Q02 出典:第3章

施灸のタイミングを比較した無作為化試験で、月経前から始めた群が優れていたのはどの指標か。

Q03 出典:第4章

同じ疾患・同じ介入について二つのメタ解析の結論が揃わないとき、まず確認すべきなのはどれか。

第II部・第III部PMSと不妊治療の補助4問
Q04 出典:第8章

生殖補助医療(ART)に灸を併用した論文を読むとき、最初に確認すべき欄はどれか。

Q05 出典:第8章

副次アウトカムに有意差が出なかったとき、正しい読み方はどれか。

Q06 出典:第10章

PCOS に対する良好な統合値(妊娠率 RR 1.81 など)を、灸の効果として引用できない理由はどれか。

Q07 出典:第11章

卵巣予備能低下(DOR)に対する灸について、正しいのはどれか。

第IV部・第V部更年期と、確実性3問
Q08 出典:第12章

ホットフラッシュに対する灸の試験で、対照が待機リスト(無治療)であることの弱点はどれか。

Q09 出典:第13章

更年期を扱ったネットワークメタ解析で、灸について起きたことはどれか。

Q10 出典:第15章

月経困難症に対する灸のエビデンスの現状として正しいのはどれか。

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付録

引用文献

本書の記述はすべて以下の一次・二次資料に基づく。本文に到達できなかった資料はその旨を明記し、その資料からは数値を引用していない。中国語論文は英文抄録から引用した旨を併記した。

  1. Yang M, Chen X, Bo L, Lao L, Chen J, Yu S, Yu Z, Tang H, Yi L, Wu X, Yang J, Liang F. Moxibustion for pain relief in patients with primary dysmenorrhea: A randomized controlled trial. PLoS One. 2017;12(2):e0170952.(本書は効果量を再掲しない。正本は既刊『灸と痛みの生理学②』)PMC5295763
  2. Xu N, Huang Y, Huang H, Huang Y, Lai S, Zhang Z, Zhong Y. Curative Effect of Heat-sensitive Moxibustion on Primary Dysmenorrhea: A Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med. 2022;2022:1281336.(同上)PMC9356805
  3. Liu Y, Sun J, Wang X, Shi L, Yan Y. Effect of herb-partitioned moxibustion for primary dysmenorrhea: a randomized clinical trial. J Tradit Chin Med. 2019;39(2):237-245.(本書は英文抄録から引用した。効果量は抄録に記載がない)PMID 32186047
  4. Song S, Chen H. Systematic review and meta-analysis of the effectiveness of moxibustion therapy for primary dysmenorrhea. Front Med (Lausanne). 2025;12:1545146. PMC11879802
  5. Liu LY, Li XJ, Wei W, Guo XL, Zhu LH, Gao FF, Liang FR, Yu SY, Yang J. Moxibustion for Patients with Primary Dysmenorrhea at Different Intervention Time Points: A Randomized Controlled Trial. J Pain Res. 2020;13:2653-2662. PMC7585511
  6. Gou CQ, Gao J, Wu CX, Bai DX, Mou HY, Hou XL, Zhao X. Moxibustion for Primary Dysmenorrhea at Different Interventional Times: A Systematic Review and Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med. 2016;2016:6706901. PMC5225331
  7. Chen LF, Jin XF, Li BW, Zhan MJ, Hu HT. [Herb-separated moxibustion on dysmenorrhea in ovarian endometriosis: a randomized controlled trial]. Zhongguo Zhen Jiu. 2020;40(7):717-720.(中国語。本書は英文抄録から引用した)PMID 32648394
  8. Su Y, Ji R, Zheng X, Jia Y, Zhu H, Li C, Yu Z, Zhu M, Yu S, Tian X, Yang J. Efficacy and safety of acupuncture-related therapies in symptomatic endometriosis: a systematic review and network meta-analysis. Arch Gynecol Obstet. 2025;311(3):697-714. PMC11920332
  9. Xie Y, Zhao J, Fan S, Yang N, Liu H, Guo Y, Feng X, Wang Z, Zhang M, Wang F. Efficacy comparison of different external traditional Chinese medicine therapies as monotherapy or in combination for premenstrual syndrome: a systematic review and network meta-analysis. Front Psychiatry. 2026;17:1720232. PMC12913161
  10. Song JY, Sun ZG, Ma YX. Efficacy and safety of Shen Que (RN8) moxibustion on reproductive outcomes in unexpected poor ovarian responders: a randomized controlled trial. J Ovarian Res. 2024;17(1):177. PMC11363657
  11. Li P, Peng J, Ding Z, Zhou X, Liang R. Effects of Acupuncture Combined with Moxibustion on Reproductive and Metabolic Outcomes in Patients with Polycystic Ovary Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med. 2022;2022:3616036. PMC8991411
  12. Wang X, Du P, Yang L, Li J, Hang T, Qi L, Su C, Liu X, Li W, Zhu Y, Lu G, Xu H, Fang Y. Effect of Acupuncture for Diminished Ovarian Reserve: A Randomized Sham-Controlled Trial. Int J Womens Health. 2026;18:580821.(介入は鍼であり灸ではない)PMC13071158
  13. He Y, Duan Y, Song Y, Zhou W, Chen X, Zhou Z, Kong W, Yang K, Zhou H, Hu F, Fu C. Clinical efficacy and mechanism exploration of Moxibustion for diminished ovarian reserve: a randomized controlled trial protocol. Front Public Health. 2026;14:1805995.(プロトコル論文であり結果を含まない)PMID 42534888
  14. Park JE, Lee MS, Jung S, Kim A, Kang K, Choi J, Park J, Choi SM. Moxibustion for treating menopausal hot flashes: a randomized clinical trial. Menopause. 2009;16(4):660-665.(本文に到達できず、本書は書誌情報の範囲で引用した)PMID 19293729
  15. Avis NE, Crawford SL, Greendale G, Bromberger JT, Everson-Rose SA, Gold EB, Hess R, Joffe H, Kravitz HM, Tepper PG, Thurston RC; Study of Women's Health Across the Nation. Duration of menopausal vasomotor symptoms over the menopause transition. JAMA Intern Med. 2015;175(4):531-539. PMC4433164
  16. Freedman RR, Krell W. Reduced thermoregulatory null zone in postmenopausal women with hot flashes. Am J Obstet Gynecol. 1999;181(1):66-70. PMID 10411797
  17. Yang X, Zhu F, Zhong Y, Liao P, Ji Q, Li S, Feng X, Zheng Y, Xue Q, Chen G. Comparative effectiveness of different acupuncture therapies for perimenopausal syndrome: a systematic review and network meta-analysis. Front Neurol. 2025;16:1696085. PMC12852026
  18. Vickers A, Goyal N, Harland R, Rees R. Do certain countries produce only positive results? A systematic review of controlled trials. Control Clin Trials. 1998;19(2):159-166. PMID 9551280
  19. Xu J, Deng H, Shen X. Safety of moxibustion: a systematic review of case reports. Evid Based Complement Alternat Med. 2014;2014:783704. PMC4058265
  20. Park JE, Lee SS, Lee MS, Choi SM, Ernst E. Adverse events of moxibustion: a systematic review. Complement Ther Med. 2010;18(5):215-223. PMID 21056845
  21. Smith CA, Armour M, Zhu X, Li X, Lu ZY, Song J. Acupuncture for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4:CD007854. PMC8406933

灸の臨床|婦人科② エビデンスと臨床判断
第1版 2026年8月25日発行

数値の出所について。本書に記載した数値は、すべて原著論文の報告値である。編者が計算・換算・丸めた値は含まない。図9-1は模式図であり、キャプションにその旨を記した。研究の確実性は Cochrane の語彙(高・中等度・低・非常に低)に寄せて記述し、本書に登場する灸の統合値のうち「高い確実性」に相当するものは一つもない。統計指標のラベルと数値の向きが一致しない報告については、原著の記載をそのまま引用したうえで不整合を明示し、その値を効果の根拠としては用いなかった(第6章・第13章)。

既刊との境界。原発性月経困難症に対する灸の鎮痛効果量は、既刊『灸と痛みの生理学② 臨床エビデンスと限界』が正本である。本書はそれを再掲していない。訴えの分類・標準治療・安全性と連携の判断は、第1巻『灸の臨床|婦人科① 病態と適応』にある。

この巻が扱わないこと。本書は疾患の診断基準・画像診断・薬物療法の用量を扱わない。経穴の選定・壮数・施術手技の指導も行わない。示したのは、研究から何がどこまで言えるかと、それを患者にどう伝えるかである。

発行と利益相反。本書の発行者は合同会社YOMOGI BASEである。同社はよもぎ・お灸に関連する商品を扱う事業者であり、この利害関係を開示したうえで、本書では特定の商品・サービス・銘柄に一切言及せず、効能をうたわない編集方針を採っている。効果を扱う教材において、この開示はとりわけ重要である。文献の選定・数値の引用・空白の明示は、事業上の利害と独立して行った。自社および自社関係者による発信は、査読の有無にかかわらず出典として用いない。

ご利用にあたって。本書は教育・研究目的の学術情報であり、個々の患者に対する診断・治療方針を示すものではない。臨床判断は、施術者自身の責任において、患者の状態と関連法規に基づいて行われたい。婦人科疾患および不妊治療の診断と治療は医師の管轄である。

改版履歴。2026年8月25日 第1版発行。