灸が「血流を増やす」とき、実質的に動かしている主な変数はどれか。
血流は Q = ΔP / R、血管抵抗は R ∝ ηL / r⁴ で決まる。抵抗は半径の4乗に反比例するため、半径が 19% 広がるだけで抵抗は半分、血流は2倍になる。粘度も温度で下がるが効果は半径ほど大きくなく、健常者では灸で血圧が有意に変わらないことが多い。根拠:第1章
手掌・足底・指趾・耳などの無毛部に密に分布し、開くと大量の血液が皮膚表層を通って熱を放散する構造はどれか。
無毛部には細動脈と細静脈を毛細血管を介さず直結する動静脈吻合(AVA)がある。AVA は交感神経血管収縮線維の支配を強く受けるため、緊張の解除が大きな血流変化として現れやすい。有毛部には AVA がなく、加温時の反応は軸索反射と NO に依存する。根拠:第2章
血管内皮が産生し、血管を拡張させる代表的な物質はどれか。
内皮は NO・プロスタサイクリン・内皮由来過分極因子を産生する。血流が増えると内皮へのずり応力が上がって eNOS が活性化し NO が産生される——血流が増えること自体が、さらなる血管拡張を呼ぶ。交感神経血管収縮線維はノルアドレナリンを放出して α受容体を介し、逆に血管を収縮させる。根拠:第3章/[13]
灸の主要な標的と考えられている TRPV1 は、およそ何℃を超える熱で活性化するか。
TRPV1 の活性化温度閾値は約 43℃で、熱痛の閾値および軸索反射の発火と重なる。ただし温度感受性 TRP チャネルは TRPV1 だけではなく、より低い温度で開くもの(TRPV3・TRPV4)もあるため、灸の作用を TRPV1 だけで説明することはできない。根拠:第4章
組織熱傷が発生するとされるのは、組織温度が何℃を超えたときか。
およそ 42℃ で HSP 発現の閾値とタンパク質変性が、約 43℃ で TRPV1 の活性化が起こり、44℃ を超えると組織熱傷が発生する。50℃ 以上では不可逆的な細胞死と水疱形成が起こる。透熱灸はこの帯域を意図的に超える手技である。根拠:第6章/[14]
灸法を「熱の伝わり方」で分けたとき、金属を熱の伝導路として深部組織へ熱を運ぶ手技はどれか。
灸頭鍼は鍼という金属を伝導路にして深部へ持続的に加熱する。棒灸・箱灸は輻射熱で広範囲を低〜中温で、隔物灸は介在物を介した伝導熱で、台座灸・温筒灸は伝導と輻射の両方で熱を送る。伝達様式が違えば、主に動く血流の機序も違う。根拠:第9章
知熱灸はどのような手技か。
知熱灸は艾を皮膚上に置くが燃やし切らず、熱さを感じた時点で取り除く無痕灸である。TRPV1 の閾値(約43℃)に達した瞬間に刺激を終える設計で、軸索反射のトリガーには十分だが熱傷は作らない。燃やし切って灸痕を残すのは透熱灸である。根拠:第10章
レーザードプラ血流計(LDF)が出力する PU(灌流単位)について正しいのはどれか。
PU は相対値である。したがって「PU が 1.8 増えた」という記述だけでは、実際の血流量がどれだけ増えたかは分からない。LDF が届く深さは約 1 mm で、測っているのは皮膚微小循環の1点にすぎず、再現性の点から複数プローブの使用が推奨されている。根拠:第1章/[17]
棒灸を皮膚から 100 mm 離して用いたときの温度について、実測が示したのはどれか。
擬似皮膚モデル上の実測では、42℃ を超えていた時間は棒灸(20 mm)182秒、温筒灸 132秒、台座灸 87秒に対し、棒灸(100 mm)は 0秒=未到達であった。同じ器具でも距離が変われば、生体反応の閾値に届くかどうかが変わる。根拠:第2章/[18]
灸様の温熱刺激に対する局所血流の反応は、どんな経過をたどると報告されているか。
麻酔ラットの筋血流では、まず交感神経性の一過性減少(最低 −23.3%)が起こり、続いて増加(最高 +25.5%)へ転じ、上昇は約14分持続した。血圧変化を伴わないため、これは局所現象である。根拠:第3章/[9]
二相性反応のうち、後半の血流増加を担う主な機序はどれか。
薬理学的・外科的な介入により二相が別々の機序であることが分離されており、前半の減少は交感神経性、後半の増加は軸索反射と CGRP を介する。軸索反射は脊髄を経由せず、末梢の枝分かれの中で完結する反応である。根拠:第3章/[9]
1点の施灸で物理的に加温される皮膚の範囲は、どの程度と報告されているか。
物理的加温の範囲は直径約 15 mm、深さは皮下〜筋層で、7.5 mm 以遠では温度変化がわずかになる。広い範囲を温めたければ点数を増やすか、箱灸・棒灸のような面の灸を使うしかない。一方、神経反射の及ぶ範囲は物理的範囲をはるかに超える。根拠:第5章
健常者の下腿 ST36 への間接灸(5分)で観察された変化はどれか。
心拍数は 63.0 ± 7.8 → 60.8 ± 7.8 bpm と有意に低下し、RMSSD は 52.0 ± 27.1 → 64.3 ± 37.2 ms と有意に上昇、血圧に有意差はなかった(n=15)。局所皮膚温と心拍数には負の相関(r = −0.73)が報告されている。根拠:第6章/[3]
施灸部位から離れた部位で起こる循環反応について、正しいのはどれか。
非刺激側の皮膚温上昇のような増加もあれば、同経絡の遠位で灌流が +1.81 PU 増える一方、隣接する他経絡の遠位では −0.77〜−1.34 PU と低下する報告もある。灸の全身作用は総量を増やす作用ではなく、配分を組み替える作用として理解する。根拠:第11章
灸の適応のうち、主要国の産科ガイドラインに記載されているものはどれか。
英国 RCOG は 2017年の Green-top ガイドラインに灸・鍼を収載し、妊娠33〜35週での灸の使用を検討してよいとしている。これは灸が主要国の産科ガイドラインに記載された唯一の適応である。Cochrane レビューでも灸+通常ケアは出生時の骨盤位をおそらく減少させる(確実性:中等度)と評価された。根拠:第9章
熱傷のリスクがもっとも高く、施灸に注意を要するのはどれか。
糖尿病性神経障害・脊髄損傷・麻痺側など熱さを感じられない部位が最も危険である。皮肉なことに、これらは灸の適応とされる病態と重なる。重度の末梢動脈疾患では放熱のための血流増加が起こらず熱がこもり、浮腫のある部位では皮膚が菲薄化して熱傷閾値が下がる。根拠:第13章
灸の刺激量(灸量)を規定する変数として、総説で整理されているのはどれか。
灸の治療強度は温度・時間・面積の三つで規定されると整理されている。これに深さを加えると4変数になる。皮膚のC線維と筋のA線維では動員される線維も鎮痛の持続時間も異なるためである。「灸は温める治療」で止めると、この4つを問えなくなる。根拠:第1章/[8]
温度感受性TRPチャネルのうち、冷たさの受容に関わるのはどれか。
活性化温度閾値は TRPV1 >43℃、TRPV2 >52℃、TRPV3 >32〜39℃、TRPV4 >27〜35℃ に対し、TRPM8 は <25〜28℃、TRPA1 は <17℃ と、冷側の閾値を持つ。灸の温度帯は複数の閾値をまたぐため、開くチャネルは一つではない。根拠:第2章/[1]
「灸の作用は TRPV1 で説明できる」と言い切れない理由はどれか。
TRPV1・TRPV3 の二重欠損マウスでも 48〜50℃ での反応潜時が延びただけで、熱感覚そのものは消失しなかった。熱侵害受容は冗長性を持つ系として設計されており、単一分子では説明できない。根拠:第3章
熱を運ぶ Aδ線維と C線維の比較として、ヒトの実測に合うのはどれか。
健常成人での熱検出閾値は C線維 39.8 ± 1.7℃、Aδ線維 46.9 ± 1.7℃ で、反応潜時は Aδ 平均 459 ms に対し C 平均 961 ms であった。閾値の低いほうが遅く伝わる。根拠:第5章/[11]
軸索反射とはどのような反応か。
軸索反射は脊髄を経由しない局所の反応である。ラットの筋血流では、灸様温熱刺激に対して一過性の低下(平均 −23.3 ± 2.4%)に続く増加(平均 +25.5 ± 8.6%)という二相性が観察され、血圧の変化は伴わなかった。根拠:第7章/[13]
脊髄後角はどのような場所か。
後角は層構造を持ち、I層は主に侵害入力を、V層を含む深層は侵害入力と低閾値機械受容入力の双方を受ける。入った入力の大多数は脳へ送られる前に脊髄内で処理される。同じ分節には触覚・内臓・下行性入力も集まり、灸の熱入力はその一つとして到着する。根拠:第9章
灸刺激そのものに対する脊髄後角の広作動域(WDR)ニューロンの反応として、実測されているのはどれか。
IBSモデルラットの記録では、灸刺激は WDR ニューロンを黙らせるのではなくまず発火させている。測られているのは灸刺激そのものへの反応であり、結腸伸展刺激への応答を灸が抑制したかを測ったものではない。鎮痛を「入力が止まること」と考えると、この所見は読み違える。根拠:第10章
DNIC(ヒトでは CPM)と呼ばれる現象はどれか。
DNIC は「異所性に侵害刺激を加えると、空間的に離れた別の侵害入力が減弱する」現象で、ヒトでは CPM として評価される。関与する領域として PAG・RVM・青斑核・背側網様核が挙げられる。ただし灸でこれが起きることを示したヒト研究は見出せていない。「離れた場所の灸が効くのは DNIC だから」という説明は、現時点では仮説である。根拠:第13章
痛覚・温度覚を運ぶ経路について、正しいのはどれか。
痛覚・温度覚は触圧覚・深部感覚を運ぶ後索・内側毛帯系と異なり、脊髄レベルで交叉して対側を上行する。上行路は一本道ではなく、脊髄視床路・脊髄結合腕傍核路・脊髄網様体路・脊髄中脳路が並列に走り、役割も分化している。根拠:第1章/[16]
下行性疼痛調節系について正しいのはどれか。
吻側延髄腹内側部(RVM)には侵害受容処理を抑制する OFF 細胞と、促進する ON 細胞の二種類がある。したがって下行性調節系を「抑制系」と呼び切ることはできない。脳は脊髄の入力を、状況に応じて弱めることも強めることもする。根拠:第3章
「お灸をすると副交感神経が優位になる」と断定できない理由はどれか。
系統的レビューでは、全身加温は心臓迷走神経調節を低下させ、局所加温やサウナ浴は増加させると、逆向きの結果が整理されている。したがって「温める=副交感優位」という一言では、何が起きているかを言えない。どの範囲を、どの強さで温めたのかが結論を変える。根拠:第5章
体性-自律神経反射について、刺激部位による違いとして整理されているのはどれか。
消化管と同一分節にあたる腹部(ST25 など)への刺激は交感神経性の反射により消化管運動を抑制し、異分節の四肢(ST36 など)への刺激は副交感神経性の反射により促進すると整理されている。同じ刺激でも、どこに入れたかで反応の向きが変わる。根拠:第6章
灸の有害事象の症例報告を集めた系統的レビューで、もっとも多く報告されているのはどれか。
24論文64症例のうち、熱傷が6論文43症例と最多で、アレルギー7例、感染6例が続く。第3度熱傷や、顔面への直接灸後の下眼瞼外反といった症例も報告されている。ただし症例報告の集積であり、発生率を示す数字ではない。根拠:第9章/[32]
灸の臨床試験を読むときに注意すべき偏りとして指摘されているのはどれか。
灸の臨床試験は中国発が圧倒的多数で、非盲検・小規模・陽性結果に偏る傾向が指摘されている。なお熱と煙を遮断する偽灸柱を用いた盲検化の報告はあり(真の灸を受けたと信じた人数は治療群30名・偽群29名、P = 1.000)、盲検化は不可能ではないが普及していない。根拠:第10章
国際疼痛学会(IASP)が用いている痛みの三分類はどれか。
IASP は侵害受容性・神経障害性・侵害可塑性の三つの記述子を用いる。侵害受容性は組織損傷で受容器が活性化した痛み、神経障害性は体性感覚神経系の疾患・病変による痛み、侵害可塑性はそのどちらの明らかな証拠もないのに続く痛みである。臨床でまず決めるのは経穴でも壮数でもなく、この分類である。根拠:第1章/[1]
侵害受容を担う一次求心線維について正しいのはどれか。
C線維は無髄で 0.4〜1.4 m/s、ポリモーダルな型を含む。A線維侵害受容器は有髄で約 5〜30 m/s、多くは Aδ 域にある。ただし両者にはさらに機能的な亜型があり、「痛みの線維は Aδ と C の二つ」という整理は教育上の簡略化である。根拠:第2章/[2]
炎症のある組織で起きる末梢感作の結果はどれか。
ブラジキニンや PGE2 などのメディエータが末梢終末を感作し、閾値の低下(アロディニア)と反応の増大(痛覚過敏)が起こる。したがって末梢感作のある皮膚では、同じ壮数・同じ温度の灸でも、中枢に届く信号量が増える。根拠:第3章/[2]
脊髄後角の広作動域(WDR)ニューロンについて正しいのはどれか。
WDR ニューロンには皮膚・筋・内臓の入力が収束する。体表への刺激が同じ分節の内臓由来の信号処理に影響しうる理論的根拠がここにある。また持続的な侵害入力があるとシナプス強度が変化し、中枢性感作が生じる。根拠:第4章/[2]
痛みを処理する脳について、正しいのはどれか。
前帯状回・島皮質・前頭前野・一次体性感覚野・視床・扁桃体などが繰り返し報告され、「どこがどれくらい痛いか」と「それがどれほど不快か」は別の領域が担う。「痛みの強さは変わらないのに苦痛が減った」という臨床現象は、この並列性で理解できる。根拠:第5章
間接灸の実測温度について正しいのはどれか。
温筒灸 64.3 ± 3.3℃、台座灸 55.9 ± 5.0℃、棒灸は高さ20 mm で 51.2 ± 4.7℃、100 mm で 30.1 ± 3.3℃。「灸」という一語がまたぐ温度の幅は 30℃ 以上ある。なおこれは熱電対の置かれた位置の温度であり、皮膚のどの深さの温度でもない。根拠:第8章/[4]
侵害受容の熱刺激域(およそ 40〜45℃ 以上)を基準にすると、灸について言えるのはどれか。
温筒灸・台座灸・棒灸(20 mm)は侵害受容域を超えるが、棒灸(100 mm)は届かない。前者は侵害受容器を動員する熱刺激、後者は非侵害性の温熱刺激であり、両者を「灸」の一語でまとめて論じることはできない。メタ解析の異質性が高くなる一因でもある。根拠:第9章/[7]
痛みの経路のうち、灸についての定量データが現時点で見出せていないのはどれか。
末梢終末(ATP・痛覚閾値)、一次求心線維の選択性、後角の発火は動物実験(階層C)で、脳の活動変化はヒトの脳画像で測られている。一方、上行路の選択性と、ヒトの CPM・痛覚閾値の変化についての灸の定量データは見出せなかった。「離れた場所の灸が効くのは内因性の鎮痛系が働くから」という説明は、灸では未検証である。根拠:第14章
灸の臨床研究がもっとも集中している痛みの対象はどれか。
変形性膝関節症は、このライブラリで唯一、二重盲検・偽灸対照で有意差が出た RCT が存在する領域でもある(実灸の皮膚温 49.8℃/偽灸 40.9℃、n=110)。同時に、非盲検試験との結果の落差がもっとも大きい領域でもある。根拠:第1章/[10]
次のうち、神経障害性疼痛に分類されるのはどれか。
神経障害性疼痛は体性感覚神経系の疾患・病変によって生じる痛みで、帯状疱疹後神経痛や糖尿病性多発神経障害、神経根症が該当する。灸の研究は帯状疱疹後神経痛と脳卒中後肩手症候群に集中しているが、統合値は大きく見えても内訳の確実性は低い。根拠:第2章
慢性腰痛に対する灸のエビデンスについて、正しいのはどれか。
慢性腰痛は灸の適応としてもっとも一般的に語られる一方で、統合されたエビデンスの質はもっとも低い部類である。メタ解析では西洋薬・鍼に対する有意差が報告されているが、コアスタビリティ訓練との比較では有意差がない。根拠:第4章
侵害可塑性疼痛(線維筋痛症など)に対する灸の研究状況として、現時点で言えるのはどれか。
線維筋痛症を対象とした灸単独の RCT にも、効果量を報告したメタ解析にも到達できなかった。臨床でもっとも多く遭遇する型である可能性が高く、この型では下行性調節系が機能不全に陥っているとされる。空白がもっとも大きい領域が、もっとも需要のある領域と重なっている。根拠:第5章
灸の臨床試験で用いられる偽灸(sham)デバイスの原理はどれか。
実灸と偽灸は外観・燃焼過程・残渣が似ているが、偽の基部が熱と煙を遮断する。膝OA試験での実測は実灸 49.8℃/偽灸 40.9℃ であった。ただし熱を遮断するということは温熱刺激を与えていないということでもあり、盲検化の成否は条件つきである。根拠:第8章/[10]
症例報告を集めた系統的レビューから、灸の有害事象について言えないのはどれか。
24論文64症例が6か国から同定され、熱傷43例・アレルギー7例・感染6例などが報告されている。しかし症例報告には分母がないため、発生率は分からない。著者ら自身も発生率は不明と結論している。頻度を知りたければ、分母のある臨床試験の記録を見る必要がある。根拠:第9章
変形性膝関節症を扱ったあるメタ解析が 2023年に撤回された。出版社が挙げた撤回理由に含まれるのはどれか。
撤回理由には範囲の不一致、報告内容の不一致、データの利用可能性の不一致、不適切な引用、無関係な内容の混入、査読の操作が挙げられている。掲載されている数字が、そのまま使える数字とは限らない。引用する前に、誰の数字でも出所を確かめる必要がある。根拠:第10章
艾(もぐさ)の原料になるのは、ヨモギのどの部分か。
艾は葉そのものではない。葉に生えた毛茸(トリコーム)だけを集めたものである。綿状の実体をなすのは主に非分泌毛、香りと薬理成分を担うのは分泌毛で、「よく燃える繊維」と「成分の入った袋」は葉の上で別々の構造として存在している。根拠:第1章/[1]
艾の精製度を上げると、含まれる成分はどうなるか。
生葉と艾の重量比を 1:1 から 15:1 へ上げると、親水性のフェノール酸・フラボノイドは 58.67〜84.06% 減少したと報告されている。精製とは、薬理成分を捨てて熱源としての性質を得る工程である。「精製度が高い=成分が豊富」ではない。根拠:第2章/[2]
日本で直接灸(透熱灸)に用いられる艾の一般的な性質はどれか。
日本では精製度の異なる艾が灸法ごとに使い分けられており、皮膚の上で直接燃やす透熱灸には精製度の高い艾が用いられる。精製度が上がるほど親水性成分が失われ、繊維主体の材料に近づく。なお「精製度が高いほど最高温度が低い」を同一研究内で定量した報告には、今回の調査範囲では到達できていない。根拠:第3章/[12]
艾を長く寝かせると、燃え方について何が変わると報告されているか。
3年と10年の試料で着火温度は 218.3℃ と 222.6℃ であり、10年のほうがわずかに高い。残渣は試料により 11.1〜26.1% あり、フェノールは全試料で検出されている。原著は寝かせる年数の良し悪しそのものを述べていない。根拠:第4章/[3]
日本の艾を日本の標準的な施術条件で燃やし、煙を測定した研究の結果はどれか。
室内空気質・環境基準の対象物質のうち最も高い濃度で存在したのは 1,3-ブタジエンだが、最大値を下回ったと報告されている。ただし原著本文の実測濃度の表には到達できず、抄録原文のみを引用している。根拠:第8章/[12]
日本の艾を日本の標準的な施術条件で燃やして煙を測定した研究では、有害物質はいずれも管理基準値を下回った。この結果をふまえて施術所が取るべき対応はどれか。
原著は「安全が確認されたとしても、適切に安全な作業環境を保つ措置は実施されなければならない」と明記している。基準値以下であることと、有害物質が出ていないことは別である。燃焼にともなう物質の種類と量は物質ごとに異なる。根拠:第8章/[12]
灸の時間-温度曲線を読むとき、組織が受ける熱の総量に対応するのはどれか。
最高温度は一瞬の値にすぎず、サンプリング間隔が粗ければ実際より低く記録される。組織が受ける熱の総量に対応するのは曲線の下の面積である。ただし調査した文献に、この面積を積分して報告したものは見出せなかった。根拠:第1章
灸の温度を報告した文献を読むとき、数値より先に確認すべきことはどれか。
同じ台座灸が 55.9℃ とも 26.71℃ とも報告されている。前者は熱電対で灸そのものの温度を、後者は簡易生体モデルの最表面温度を測っている。どちらも正しく、測っているものが違う。測定点を確認せずに数値を並べると、同じ灸について矛盾した数字を集めることになる。根拠:第2章/[6][7]
透熱灸で艾炷のひねりの固さ(密度)を変えると、何が変わると報告されているか。
艾炷の密度と温度持続時間のあいだには有意な直線回帰が認められている(y = 1.9 + 3.2x、r = 0.92、p < 0.0001)。刺激量を調整するつまみは壮数だけではない。同じ大きさに見える艾炷でも、固くひねれば持続時間は長くなる。根拠:第3章/[4]
「艾炷を高くひねるほど熱が緩やかに伝わる」という経験則は、実測ではどうだったか。
高さの違う艾炷の温度上昇速度に有意差は認められず、原著は「高くひねった艾炷ほど緩やかに熱が伝わるという論拠は見出せなかった」と記している。変わるのは高さではなく密度である。ただし高さが他の指標を変えないと示した研究ではない。根拠:第4章/[4]
艾が燃えるとき、最初(120℃未満)に失われるのは何か。
熱重量分析によれば艾の分解は三段階で進む。120℃未満で水分と揮発性成分が失われ、150〜450℃でセルロース・ヘミセルロースが分解して主要な発熱が起こり、450℃超でリグニンとチャーが燃える。根拠:第5章/[3]
熱電対で灸そのものの温度を測った研究で、平均最高温度がもっとも高かったのはどれか。
平均最高温度は温筒灸 64.3 ± 3.3℃、台座灸 55.9 ± 5.0℃、棒灸は高さ20 mm で 51.2 ± 4.7℃、高さ100 mm で 30.1 ± 3.3℃ と報告されている。いずれも灸そのものの温度であって、皮膚温ではない。根拠:第8章/[6]
棒灸で皮膚からの距離を変えることは、臨床的にどう位置づけられるか。
棒灸の平均最高温度は高さ20 mm と100 mm で 20℃ 以上違う。距離を変えるだけで同じ器具が別の刺激になる。効きが乏しいときに時間を延ばす前に、そして熱傷を避けたいときにまず、動かすべきは距離である。根拠:第8章/[6]
隔物灸が他の灸法と異なる点として、実測で確かめられているのはどれか。
薄層クロマトグラフィにより、隔物として用いた生姜・大蒜からそれぞれの含有成分の溶出が確認されている。隔物灸は熱と成分という二つの経路を持つ。ただしこの文献は成分を確認した研究であり、温度は測られていない。根拠:第9章/[8]
自律神経系と体性神経系を分けている基準はどれか。
骨格筋を支配するのが体性運動神経、心筋・平滑筋・腺を支配するのが自律神経である。意識できるかどうかは基準ではない。心拍や発汗は意識にのぼるが随意には動かせず、呼吸運動は自律機能の側面を持ちながら呼吸筋が骨格筋であるため体性運動神経に支配される。根拠:第1章/[1]
交感神経系の節前ニューロンの細胞体はどこにあるか。
交感神経系は胸腰系で、節前ニューロンの細胞体は脊髄側角の T1 から L2(または L3)にある。副交感神経系は頭仙系で、脳神経 III・VII・IX・X と仙髄 S2〜S4 から起こる。三区分は機能ではなく解剖学的な起始と神経節の位置で分けられている。根拠:第2章/[1][3]
自律神経の節前線維が放出する伝達物質はどれか。
節前ニューロンは交感・副交感のいずれもアセチルコリンを放出し、ニコチン性受容体に結合する。分かれるのは節後で、副交感節後は ACh とムスカリン性受容体、交感節後は主にノルアドレナリンとアドレナリン受容体である。汗腺と副腎髄質はこの対応の例外にあたる。根拠:第3章/[3]
交感神経の活性化で起きる変化として正しいのはどれか。
交感神経の活性化は心拍数・心収縮力、瞳孔散大、気管支拡張、筋への血流、代謝、糖産生、脂肪分解を増やし、消化管運動・尿量・排尿筋収縮を減らす。副交感神経の活性化はおおむね逆向きだが、すべての臓器が「拮抗」で説明できるわけではない。根拠:第4章/[3]
圧受容器反射の求心路と中枢の組み合わせとして正しいのはどれか。
動脈圧受容器は頸動脈洞と大動脈弓にあり、前者は頸動脈洞神経から舌咽神経(CN IX)、後者は迷走神経(CN X)を経て、いずれも延髄の孤束核(NTS)でシナプスする。血圧が上がれば発火が増えて交感神経緊張が抑えられる、負のフィードバック系である。根拠:第6章/[7]
体性-自律神経反射とはどのような経路か。
総説はこの経路を「皮膚またはその下層の筋への刺激が求心神経の興奮をもたらし、感覚情報が中枢神経系へ運ばれ、そこで自律神経の遠心路へ転送されて内臓機能に影響する」と記述している。反射中枢の所在は刺激部位によって異なりうる。根拠:第7章/[9]
刺激の強度と、動員される反射経路の関係について整理されているのはどれか。
ST36 への低強度(0.5 mA)刺激は迷走神経-副腎軸を、より高い強度(1〜3 mA)は脊髄の交感神経反射を活性化すると整理されている。ただしこの分子レベルの検証は電気鍼で行われたものであり、灸で同じことが起きるかは別に確かめる必要がある。根拠:第9章/[9][11]
マウスに局所の灸様刺激を与えて胃運動を測った実験で、もっとも重要な所見はどれか。
41℃ の刺激では ST36・CV12 のいずれでも胃運動に有意な変化がなく、43℃・45℃ で初めて有意な変化が生じた。「温めれば自律神経が動く」という前提はここで崩れる。反応は TRPV1 ノックアウトで減弱し、ASIC3 ノックアウトでは変化しなかった。根拠:第10章/[12]
施灸した部位が赤くなり温かくなったことから言えるのはどれか。
皮膚血流は反射性の体温調節制御と、局所を温める・冷やすことによる影響の双方を受ける。局所加温それ自体が、軸索反射による一過性拡張 → NO によるプラトー相 → die-away という反応を起こす。発赤は、まずこの局所反応として説明できる。根拠:第11章/[13][15]
灸と自律神経について、査読済みのヒト研究が見出せていないのはどれか。
ヒトで施灸中の交感神経活動を微小神経電図で直接記録した研究には到達できなかった。微小神経電図は高度な技術を要し、実施できる施設が世界的に限られるためである。ほかに、温度を段階的に変えて自律神経指標を測った研究、腹部と四肢を比較した研究も見出せなかった。根拠:第13章/[8]
微小神経電図(microneurography)はどのような手法か。
微小神経電図は神経内から活動を直接記録する数少ない方法で、筋交感神経活動(MSNA)と皮膚交感神経活動(SSNA)が得られる。ただし技術的要求が高く実施施設が限られるため、灸の研究では用いられていない。根拠:第1章/[5]
代理指標(surrogate marker)とは何か。
代理指標は「測りたいものと関係があるが、それそのものではない量」である。読むときは、何との相関が確かめられているか、どの条件で相関が崩れるか、方向と大きさのどちらが読めるかを確認する。灸の研究で使われている指標は心拍数・心拍変動・皮膚温・血圧に限られていた。根拠:第2章
心拍変動の HF(高周波)帯域について正しいのはどれか。
HF は 0.15〜0.40 Hz と定義され、これは呼吸の帯域である。LF は 0.04〜0.15 Hz。したがって呼吸を統制または記録していない研究の HF・RMSSD の変化は、呼吸パターンの変化を見ている可能性が残る。根拠:第3章/[1][2]
LF/HF 比について、正しいのはどれか。
原著は「仮説は反証された」と明言している。LF パワーは交感神経駆動の純粋な指標ではなく、この帯域の変動の半分は副交感神経による。また二つの系は相反的に動くとは限らない。灸の研究で LF/HF 比が報告されていたら、その扱いには注意が要る。根拠:第5章/[2][3]
健常者の ST36 に間接灸を5分間行った無作為化クロスオーバー実験で報告されたのはどれか。
施灸中の局所皮膚温は 45.3 ± 3.3℃ に達し(p < 0.001)、心拍数は有意に低下、迷走神経指標(RMSSD)は有意に上昇した(n=15)。血圧に有意差はなかった。対照条件を置いた無作為化クロスオーバーで、灸の自律神経応答としては最も統制された条件のヒト報告である。根拠:第8章/[7]
「施灸で心拍数が低下した」という報告と、「施灸中に指尖温が低下した」という報告が併存することを、どう理解すべきか。
交感神経系は一枚岩ではなく、標的ごとに機能特異的な出力チャネルが並ぶ。心臓への出力と皮膚血管への出力は別に動きうるため、心拍数の低下と末梢皮膚温の低下は同時に起こりうる。「自律神経が整った」という一語は、どのチャネルの話かを消してしまう。根拠:第9章/[7][8]
灸の対照条件(偽灸)を作ることが難しい理由として、実験で示されているのはどれか。
もぐさの煙(2.5 ± 0.5 mg/m³)に25分間曝露した研究では、2回目の曝露中に心拍数の低下率や lnHF・RMSSD の増加率が対照群より有意に大きかった。灸が与えている入力は熱だけではない。熱・煙・接触・安静・期待のどこまでを再現するかが、対照条件の設計問題になる。根拠:第12章/[11]
鍼灸の臨床試験について、系統的レビューが記録している国別の偏りはどれか。
中国・日本・香港・台湾を起源とする鍼の試験はすべて陽性で、介入全般でも試験治療が優れていたとする割合は英国 75% に対し中国 99%、日本 89% であった。中国・ロシアで公表された試験に、無効と結論したものは一つもなかった。根拠:第13章
灸の有害事象の症例報告を集めた系統的レビューについて、正しいのはどれか。
6か国24論文64例のうち、熱傷が43例で最多、アレルギー7例、感染6例と続く。国別では中国が最多である。件数が少ないことは安全の証明ではなく、症例報告には分母がないため発生率は分かっていない。根拠:第14章/[15]
灸の自律神経反応を測った研究のうち、現時点で見出せていないのはどれか。
施術中の交感神経活動を直接記録した研究には到達できなかった。ほかに、灸の自律神経指標を統合した系統的レビュー、呼吸を統制したうえで HF・RMSSD を報告した研究、灸/非燃焼対照/煙のみ対照を並置した三群比較も見出せていない。根拠:第15章/[5]
熱傷の深度分類で、Ⅱ度とは傷害がどこまで及んだものか。
日本創傷外科学会の分類では、Ⅰ度は表皮まで、Ⅱ度は真皮まで(浅達性・深達性に分かれる)、Ⅲ度は皮下組織まで傷害が及んだものである。後遺症を決めるのは面積ではなく深度である。根拠:第1章/[3]
深達性Ⅱ度熱傷の知覚の特徴はどれか。
Ⅰ度は痛みと知覚過敏、浅達性Ⅱ度は強い痛みを伴うが、深達性Ⅱ度では痛みが軽度で知覚が鈍麻する。「痛がっていないから浅い」という読み方は逆であり、瘢痕を残しうるのはこちらである。根拠:第1章/[3]
44℃から51℃の範囲で加温温度が1℃上がると、表皮細胞死に必要な曝露時間はどうなると報告されているか。
44℃では表皮の細胞死に6時間の曝露を要するが、この温度域では1℃上がるごとに必要な曝露時間はおよそ半分になる。温度をわずかに上げることは、時間を大きく縮めることと同じ意味を持つ。根拠:第2章/[1][2]
熱傷が始まる場所は、皮膚のどこか。
熱損傷の総説が示す層の厚さは表皮 0.075〜0.15 mm、真皮 1〜4 mm。熱傷が始まるのは表皮の最深部にある基底層で、皮膚表面から 0.075〜0.15 mm の深さにある。「44℃で6時間」はこの深さの温度についての記述である。根拠:第5章/[2]
台座灸が最高温度に達するまでの時間として報告されているのはどれか。
台座灸の平均最高温度は 55.9 ± 5.0℃、到達時間は 160.7 秒である。温筒灸は 154.5 秒、棒灸(20 mm)は 126.7 秒。据えてから2分半ほどかけて温度が上がるということは、施術者が目を離せる時間ではないということでもある。根拠:第7章/[6]
系統的レビューにおける直接灸と間接灸の区別はどれか。
灸の安全性の系統的レビューは、直接灸を「艾炷を皮膚上に置くもの」、間接灸を「皮膚との距離を保つもの」として区別している。台座灸・温筒灸・棒灸・箱灸・隔物灸は間接灸に含まれる。両者の違いは温度の高低ではなく、損傷を意図しているかどうかというリスクの向きの違いである。根拠:第8章
知熱灸のリスク構造について、正しいのはどれか。
知熱灸は患者が熱感を訴えた時点で艾炷を取り除く手法で、刺激の終点を患者の主観で定義している。装置である以上、それが働かない条件——知覚鈍麻・糖尿病性神経障害・麻痺側・鎮静下——では安全装置がないのと同じになる。根拠:第9章/[4]
灸痕を残す手技について、和文文献のレビュー(38文献98症例)が示しているのはどれか。
収集された有害事象には皮膚腫瘍・水疱性類天疱瘡・熱傷・喘息発作などが含まれ、原著は多くの症例が深達性Ⅱ度以上の熱傷を由来とする有害事象であると述べている。灸痕を残す手技を選ぶときは、その場の反応ではなく長期の帰結まで含めた説明責任が生じる。根拠:第12章/[15]
侵害受容の閾値と組織損傷の閾値の関係について、正しいのはどれか。
TRPV1 の活性化温度閾値は >43℃、熱損傷の臨界温度は約 43℃ とされ、表皮細胞死の実験的閾値は 44℃ である。「熱い」と感じる温度と壊れ始める温度がほぼ同じ——これが灸という手技の安全域の狭さの正体である。根拠:第13章/[1][2]
二重盲検試験で実灸 49.8℃・偽灸 40.9℃ という約9℃の差があったとき、患者の推測はどうだったか。
9℃ の差は侵害受容閾値の 43℃ をまたぐにもかかわらず、自分がどちらの群かを正しく推測できた患者は 36% にとどまった(p = 0.565)。熱感は温度の代理指標としてすら精度が高くない。「熱かったから効いた」は、指標としては弱い。根拠:第15章/[9]
韓国の熱傷センターの集計で、灸による熱傷44例のうち60歳以上が占めた割合はどれか。
44例のうち 33例(75%)が60歳以上であった。灸の熱傷について、調査で到達したなかでもっとも明確な人口統計上の偏りである。ただし加齢による皮膚・感覚の変化によるのか、高齢者に灸の使用頻度が高いためかは、分母が不明なこの集計からは区別できない。根拠:第16章/[18]
施灸にとくに注意を要する患者の条件として、症例が積み上がっているのはどれか。
熱さを感じられなければ、知熱灸の安全装置も患者自身の回避行動も働かない。糖尿病性神経障害をはじめとする感覚障害では、灸の熱傷が深部に達した症例が報告されている。高齢・皮膚疾患・薬剤も注意因子として挙げられるが、因子によってデータの厚みは異なる。根拠:第16章/[19]
灸の有害事象の「発生率」について、正しいのはどれか。
引用できるデータは症例報告の統合・消費者相談の集計・熱傷センターの受診者集計で、いずれも「何回の施灸のうち何件」という形になっていない。発生率が低いのではなく、不明である。この区別をしないまま「灸は安全である」と述べることは、データの読み違えになる。根拠:第19章/[1]
施灸した局所を顕微鏡で観察した報告(マウス・46 ± 1℃・30分)が示したのはどれか。
表皮は不完全になり角層は厚く層構造が不明瞭、表皮〜真皮に瘢痕組織、真皮では膠原線維・弾性線維が減少し、間質には炎症細胞の浸潤と血管の拡張が認められた。そこにあるのは刺激の痕ではなく、損傷と修復の痕である。根拠:第1章/[1]
皮膚の創傷治癒はどの四相で記述されるか。
創傷治癒は止血 → 炎症 → 増殖 → 成熟(再構築)の四相で進む。止血は受傷直後、炎症は数日間、増殖は数週間、成熟は3週目ごろから最長12か月に及ぶ。この目盛を持たずに「7日目に増えた」という報告を読むと、良い知らせか悪い知らせかを判断できない。根拠:第2章/[2]
線維芽細胞が新しいコラーゲンを産生し始めるのは、受傷後いつごろか。
増殖相では5〜7日目までに線維芽細胞が新しいコラーゲンを産生し始め、筋線維芽細胞が創収縮に関与する。炎症相の数日間はまだ好中球・単球がフィブリンの足場に接着している段階である。根拠:第2章/[2]
治癒後の瘢痕の抗張力について報告されているのはどれか。
瘢痕の抗張力は元の組織の約80%にとどまる。灸痕は皮膚の外観上の記号ではなく、力学的性質の異なる組織である。灸痕を残す手技を選ぶことは、この性質の組織をそこに作ることを選ぶことでもある。根拠:第2章/[2]
熱ショックタンパク質の発現を制御している温度センサーはどれか。
熱ショックタンパク質は熱が上がれば自動的に増えるのではない。転写因子 HSF1 が温度を読み取り、三量体化することで働き始める。精製したヒト HSF1 での転移の中点は 36.15 ± 0.14℃(10分の前保温後)と報告されている。根拠:第3章/[8]
HSP70について正しいのはどれか。
細胞内では折りたたみを介助するシャペロンとして働くが、細胞外に出た HSP70 は受容体を介した免疫調節に関わる。同じ分子が居場所によって別の意味を持つ。「HSP が増える=良いこと」という単純化はできない。根拠:第5章/[11]
増殖相で組織を埋めるために不可欠なものはどれか。
増殖相で組織を埋めるには血流が要る。難治性創傷モデルのラットでは、灸群で治癒率が改善し、3日・7日に血流量・微小血管数・VEGF 発現がいずれも有意に上方調節されたと報告されている。ただし同一グループの同一モデルによる報告であり、独立した再現はない。根拠:第8章
灸と創傷治癒に関する報告について、正しいのはどれか。
切除創モデルでは線維芽細胞数・新生血管数の増加など修復を後押しする所見が得られた一方、複屈折コラーゲン(線維の成熟度を示す指標)は 21日目に対照群のほうが有意に高かった。都合のよい行だけを引くと、この所見は見えなくなる。根拠:第9章/[16]
褥瘡に対する灸の臨床研究を統合したメタ解析について、2025年に起きたことはどれか。
良好な統合効果(有効率 RR 1.21 など)を報告していたメタ解析は撤回された。統合値が大きいことと、その値が信頼できることは別である。引用する前に、その論文が現在も有効かを確かめる必要がある。根拠:第13章/[21]
灸と熱ショックタンパク質(HSP)について、文献調査で確認できたのはどれか。
灸と HSP を扱った文献は存在するが、対象は胃粘膜・心筋・骨髄など施灸部位ではない遠隔臓器であり、施灸局所の皮膚を測ったものにも、ヒトを対象としたものにも到達できなかった。「灸で HSP が誘導され、それが局所の修復を促す」という筋書きは、局所の実測では埋まっていない。根拠:第4章/[9]
皮膚の厚みの大部分を占めているのはどの層か。
表皮は 0.1 mm 前後、真皮は 1〜3 mm 程度である。「皮膚の厚み」と言うとき、その大半は真皮を指している。表皮はその上に乗った薄い膜にすぎない。血管・神経・汗腺・皮脂腺・毛包は、いずれも真皮の中にある。根拠:第1章/[5]
表皮の五層のうち、手掌・足底の厚い皮膚にだけ存在するのはどれか。
表皮は深部から順に基底層・有棘層・顆粒層・淡明層・角層の五層で、淡明層(2〜3細胞層)は手掌・足底の厚い皮膚にのみ存在する。他の四層は全身の表皮に共通する。根拠:第2章/[1]
皮膚のバリアを実際に担っている角層は、どんな細胞でできているか。
基底層で生まれた角化細胞が押し上げられながら分化し、最終的に核と細胞小器官を失って角質細胞になる。皮膚の壁は、細胞が計画的に死ぬことによってできる。日本人男性6名での実測では、表皮のターンオーバー時間は 36.2 ± 6.2 日と報告されている。根拠:第3章/[1][2]
角層の構造を「レンガとモルタル」に喩えるとき、モルタルにあたるのはどれか。
角質細胞がレンガ、細胞間を満たす脂質がラメラ構造をとってモルタルにあたる。角質細胞どうしはコルネオデスモソームで連結されている。なお細胞間脂質の組成比(セラミド等の比率)は、今回の調査範囲では一次文献の報告値に到達できていない。根拠:第4章/[2]
灸の血流研究で広く使われるレーザードプラ血流計(LDF)について、正しいのはどれか。
皮膚の微小循環は浅層(表面から 400〜500 µm)と深層(1.9 mm)の二つの血管叢からなるが、LDF の光が届くのは 1〜1.5 mm までである。出力は灌流単位(PU)という相対値で、絶対的な血流量ではない。根拠:第8章/[6]
エクリン汗腺の自律神経支配について正しいのはどれか。
エクリン汗腺はコリン作動性線維による交感神経支配を受け、節後線維はアセチルコリンを放出してムスカリン受容体を介して発汗を起こす。交感神経=ノルアドレナリンという対応が成り立たない例外にあたる。根拠:第9章/[8]
皮膚の機械受容器のうち、表皮の中にあるのはどれか。
メルケル盤は表皮内の非被包性終末(遅順応SA1)である。マイスナー小体は無毛部の表皮直下、ルフィニ終末は皮膚深部、パチニ小体は皮下組織にある。四つの受容器は深さの異なる階層に配置されており、刺激はその深達度に応じて別の受容器に届く。根拠:第11章/[10]
経表皮水分蒸散量(TEWL)は何を測っている指標か。
TEWL は皮膚の内外の水蒸気圧の差によって受動的に皮膚を通って蒸発する水の量で、低いほどバリアが保たれていると解釈される。ただし測定部位には汗腺があり、汗の寄与を分離できない。加温する灸の前後で測ると、変化がバリアによるのか発汗によるのかを TEWL 単独では判別できない。根拠:第12章/[7]
棒灸や灸頭鍼のように皮膚から離して行う灸で、主に働く熱の伝わり方はどれか。
熱の伝わり方は伝導・輻射・対流の三つ。皮膚に接触する台座灸では伝導が働き、離して行う灸では電磁波として飛ぶ輻射が主になる。数値モデルでは、伝導だけでは加熱が深さ約 1 cm までしか及ばず、輻射を組み込んで初めて深部到達が説明された。根拠:第1章/[5]
皮膚の熱物性について正しいのはどれか。
皮膚は均質な材料ではない。表皮・真皮・皮下脂肪では熱伝導率も比熱も違う。さらに層の厚みには部位差がある。したがって「皮膚を何度に温めたか」という一つの数字で、内部で起きていることを表すことはできない。根拠:第2章/[1]
灸の研究で報告されている温度を読むとき、正しい理解はどれか。
透熱灸の 140〜160℃ は石綿板上での艾炷底面の温度、台座灸の 26.71℃ は模擬生体モデル最表面の温度である。測定点が違うものを並べて比較してはならない。また皮膚は層ごとに熱物性が違うため、表面温度から内部温度を単純に外挿することもできない。根拠:第4章
家兎で間接灸の温度を測った研究では、皮膚表面と深さ 5 mm の温度はどうだったか。
間接灸では皮膚表面 58.41 ± 0.28℃ に対し、深さ 5 mm ではすでに 39.25 ± 0.55℃ まで下がっていた。表面の熱さと深部に届く熱は別の量である。ただしこれは家兎(階層C)の値で、ヒトの生体で深さごとの温度を測った研究には到達できていない。根拠:第6章/[4]
表皮の中では血流による冷却(ヒートシンク)が働かない。その理由はどれか。
表皮には血管がない。熱を持ち去る皮膚血管叢は、浅層が表面から 400〜500 µm、深層が 1.9 mm の深さにある。ヒートシンクが働き始めるのはその深さから下であり、表皮内では熱が運び去られない。根拠:第8章/[10]
加温に対して皮膚血流が増えて反応するまでの時間として報告されているのはどれか。
皮膚が血流を増やして反応するまでの時間は約 20秒であり、短時間の曝露では計算上、血流灌流を無視してよいとされている。透熱灸のように燃焼が短時間で終わる手技では、冷却が立ち上がる前に加温が終わっている可能性がある。根拠:第8章/[1]
皮膚を局所的に加温したとき、皮膚血流はどうなるか。
局所加温で皮膚血管コンダクタンスは基線 20.0 ± 6.6 %CVCmax から、34→38℃ でプラトー 52.9 ± 10.5%、34→42℃ で 80.7 ± 6.9% へ上昇したと報告されている。灸は熱を入れると同時に、熱を出す仕組みを起動している。根拠:第9章/[7]
皮膚温が深部体温より低いことは、何を意味しているか。
身体の内部は外界より温かく、皮膚はその中間にある。皮膚温が深部温より低いのは、放熱が行われている証拠である。灸が作るのは、この定常的な勾配に重なる局所的で一過性の温度上昇であり、施灸が終われば勾配は元の向きに戻る。根拠:第11章
熱による組織損傷は、何によって決まるか。
損傷はアレニウス型の速度式 ∂Ω/∂t = A・exp(−ΔE/RT) で記述され、「ある温度を超えたか」ではなく「ある温度にどれだけの時間さらされたか」の積分で決まる。温度は指数の中にあるため、温度が上がると損傷速度は急激に増す。最高温度だけでは安全性を論じられない。根拠:第12章/[1]
免疫の指標は、細胞の数・細胞の割合・細胞の活性という3つの層に分けられる。これらの関係として正しいのはどれか。
百分率は全体に占める比率であるため、分母が動けば分子が変わらなくても値が動く。A は数の層ではなく割合の層の性質である。C は数の層の説明であり、活性は細胞の働きを測る指標である。D は、三層が互いに別の量であるという前提に反する。根拠:第1章/[2]
健常者のNK細胞傷害活性をベースラインで繰り返し測定した研究が報告した、この指標を臨床試験のアウトカムに用いるうえでの問題はどれか。
報告されたベースラインは平均 21.5、標準偏差 9.3 であり、ばらつきが平均値の四割を超えている。D はこれと矛盾する。B は文献[8]が全10名で二法の値が異なったと報告しており誤り。C は文献[9]で1週後に上昇した値が4週後にベースラインの水準へ復しているため誤り。根拠:第2章/[8][9]
ラットに施灸してNK活性の上昇を観察した実験がある。この結果だけでは灸に固有の作用を示したとは言えない。その理由として適切なのはどれか。
同じ論文の中で、同程度の温度の熱傷刺激群が3日目と7日目の両方で偽刺激群より有意に高い活性を示している。A は誤りで、施灸刺激群は3日目に偽刺激群より有意に高かった。B は標準的な4時間の⁵¹Cr放出法と明記されている。C は、この研究に対する指摘として挙げられていない。根拠:第4章/[4]
ラットに6-ヒドロキシドーパミンを投与して交感神経終末を選択的に破壊したうえで施灸した実験で、報告された結果はどれか。
交感神経終末を選択的に破壊すると、施灸によって誘導されたNK細胞傷害活性の変化は消失した。原著はここから、交感神経系がこの効果を媒介していると結論している。A はインターロイキン4がこの方法では血清中に検出されなかったため誤り。B と D は報告されていない。根拠:第5章/[4]
施灸による白血球増多を報告した過去の実験について、用いられた刺激量の記述として適切なのはどれか。
文献[2]は、根拠とされてきた実験がウサギでは1壮 25mg 以上、ヒトでは 10mg 以上または小豆大の艾を用いたものがほとんどであったと整理している。A の 2mg は臨床で用いる米粒大の重量であり、過去の実験の刺激量ではない。根拠:第7章/[2]
ヒトに単回の施灸を行い、対照群と比べて白血球数の推移を測定した実験の結果はどれか。
施灸群は 5,838 → 5,850 → 5,375/mm³ で有意な変化がなく、対照群は 5,388 → 5,975 → 5,975/mm³ と有意に変化した。原著は対照群の変化について原因は不明とし、分画がほとんど変化していないことから大きな意義があるとは考えにくいとしている。根拠:第9章/[2]
ウサギで施灸3時間後に一過性の白血球増加が観察され、多形核白血球の百分率も同時に増加していた。この所見の解釈として適切なのはどれか。
原著は、増加が急性・一過性であること、多形核白血球百分率が3時間後に増加を示したことから、運動やストレス、アドレナリン投与の際にみられるマージナルプールからサーキュレイティングプールへの好中球の一過性の移動による見かけ上の増加と考察している。したがって A の産生亢進ではない。根拠:第10章/[2]
ウサギに週1回、ヒトに週2回の施灸を4週間くり返し、白血球数・白血球分画・リンパ球サブポピュレーションを測定した実験の結果はどれか。
ウサギは週1回を4週間、ヒトは週2回を4週間反復したが、白血球数・白血球分画・リンパ球サブポピュレーションのいずれにも有意な変化を認めなかった。B の CD4/CD8比が有意に変化したのは単回施灸の実験であり、反復施灸の結果ではない。根拠:第11章/[2]
熱と煙を遮断する台座を用いた偽灸デバイスの試験について、正しいのはどれか。
この試験は感冒の予防という設定で行われたが、報告されている評価項目は参加者と施術者が実灸と偽灸を区別できるかであり、発症率ではない。C は施術者の判定に群間差がなかったため誤り。D は偽物だと答えた参加者が両群とも 0名 であったため誤り。根拠:第14章/[5]
ヒトを対象に、灸だけを行ってNK細胞傷害活性を測った研究が見当たらない。この状況で施術者が患者に伝える内容として適切なのはどれか。
ヒトで測られていたのはNK細胞の百分率であり、傷害活性そのものを灸単独の介入で測った査読済みの研究には到達できていない。動物実験の結果をそのままヒトに移すこと(B)も、確かめられていないことを断定すること(C)も報告値を超える。証拠が見つからないことは効果がないことの証明ではないため、D も誤りである。根拠:第9章・第17章/[3][7][11]
骨盤位のうち、股関節が屈曲し膝関節が伸展した状態はどれか。
単殿位は股関節屈曲・膝関節伸展、複殿位は股関節も膝関節も屈曲した状態である。下肢が先進する足位は経腟分娩のリスクが高いとされ、Term Breech Trial では対象から除外された。診断は超音波検査による。根拠:第1章/[2]
正期産の骨盤位に対する標準治療はどれか。
標準治療は外回転術(ECV)、および正期産では予定帝王切開である。灸を考えるのは、この標準治療の枠組みを妨げない範囲においてである。灸は ECV の代わりに置くものではない。根拠:第1章/[3]
妊娠中の悪心・嘔吐(NVP)と妊娠悪阻(HG)の頻度として報告されているのはどれか。
妊娠中の悪心・嘔吐は妊婦の最大85%に生じ、その大多数はセルフマネジメントで足りる。もっとも重症の妊娠悪阻は 0.3〜1.0% とされる。ただし NVP がどこから HG になるかについて、広く受け入れられた線引きは存在しない。根拠:第2章/[12]
骨盤位の患者の訴えを層に分けたとき、空白になるのはどの層か。
骨盤位は妊婦本人には何の自覚症状も引き起こさない。妊婦が困っているのは骨盤位そのものではなく、その先に予定されている分娩様式と、それに伴う不確実性である。「何を楽にするための施術か」を、症状以外の層で言えるようにしておく必要がある。根拠:第4章
妊婦への施灸で、妊娠に固有の有害事象として挙げられているのはどれか。
Cochrane レビューが列挙した有害事象には子宮収縮と胎動の増加が含まれる。切迫早産の管理下にある妊婦では、子宮収縮は治療目標に反する方向の変化である。胎動の増加は作用機序の仮説としても語られており、同じ現象が目的にも有害事象にもなりうる。根拠:第7章/[18]
妊婦への施術中に生じた場合、その場で施術を中止すべきなのはどれか。
性器出血・破水を疑う所見のほか、規則的または強い子宮収縮、持続する腹痛、強い悪心・嘔吐、気分不良・動悸・めまい、予定していない水疱形成などが生じたら、その場で中止する。施術を始めてよいかの判断と、始めた施術をやめる判断は別である。根拠:第9章
つわり・妊娠悪阻に対する灸のエビデンスにおける最大の制約はどれか。
つわりの領域では公表症例報告を見出せず、加えて灸の煙が悪心を強めうるという固有の問題がある。骨盤位では対照群の頭位化率が 36%〜62.3% と自然回転が大きいことが最大の制約であり、分娩については灸の対照試験が見出せておらず、適応を支持する根拠がない。根拠:第11章
産科の三領域のうち、灸のエビデンスがもっとも厚いのはどれか。
骨盤位には Cochrane レビュー(13試験・2,181名)があり、中等度の確実性で分娩時の非頭位が減ると評価されている。つわりには灸を含む系統的レビューがあるが灸の試験は少数、分娩には灸の対照試験そのものが見出せなかった。根拠:第1章/[1]
骨盤位に対する灸(通常ケアへの追加)について、Cochrane レビューの評価に合うのはどれか。
分娩時の非頭位は中等度の確実性で減ると評価される一方、帝王切開は「ほとんど差がない」と評価されている(6試験・1,030名)。非頭位が減るのに帝王切開が減らない理由は検討されていない。患者に伝えるとき、この二つを一つにまとめてはならない。根拠:第1章/[1]
分娩(誘発・所要時間・分娩痛)に対する灸について、正しいのはどれか。
分娩を主要アウトカムとして灸を検証した対照試験は見出せなかった。分娩の管理は医師・助産師が担い、分娩監視装置と内診による連続的な監視のもとにある。灸の側に、この領域へ関与する根拠は現時点で存在しない。根拠:第3章/[12]
「BL67 への鍼と灸を併用した」試験から、灸単独の効果を判断できるか。
介入に鍼が含まれていれば、得られた差が灸によるものか鍼によるものかを分離できない。判定は「できる/できない」の二択であり、程度を付けない。研究を読むときは、まず介入の実体を分解して、その試験が灸について何を言えるのかを確定させる。根拠:第4章/[4]
偽灸(sham)には熱のあるものと熱のないものがある。この違いは何の違いか。
別の経穴への灸(熱あり)を対照にした試験は「効果はこの経穴に特異的か」を問い、作動しない機器(熱なし)を対照にした試験は「効果は刺激そのものによるか、期待によるか」を問うている。同じ「偽灸対照」でも、答えている質問が違う。根拠:第5章/[6][7]
骨盤位に対する灸を検討する妊娠週数として、研究条件ともっとも一致するのはどれか。
骨盤位に対する灸の試験の大半は33〜35週を対象としており、RCOG のガイドラインもこの週数での検討に言及している。28週未満は試験の対象外で、この時期の骨盤位はありふれた所見である。28〜32週は根拠が弱く、状態を確認したうえでの判断になる。根拠:第9章
日本の症例集積が報告した矯正率(72.2% など)を患者に伝えるとき、必ず添えるべき但し書きはどれか。
症例集積には対照群がない。骨盤位は自然回転が大きく、無作為化試験の対照群でも頭位化率は 36%〜62.3% と報告されている。したがって矯正率のうちどこまでが灸の上乗せ分かは、この数字からは分からない。なお入院中の切迫早産妊婦では矯正率 28.6% と低かった。根拠:第10章/[18]
月経周期を動かしている軸はどれか。
視床下部が GnRH をパルス状に分泌し、下垂体前葉が FSH と LH を出し、卵巣がエストラジオールとプロゲステロンを分泌して視床下部・下垂体に戻る。この輪は大部分の期間、負のフィードバックで回っており、排卵直前だけ向きが反転して LH サージが起こる。根拠:第1章
原発性月経困難症の痛みは、どう説明されているか。
原発性月経困難症は器質的な原因を伴わない月経痛で、プロスタグランジンを介した子宮の過収縮と虚血として説明される。標準治療はこの経路を直接遮断する薬剤である。有病率の報告は 16〜91% と幅があるが、これは頻度の差ではなく定義の不統一を反映している。根拠:第2章/[1]
続発性月経困難症の原因として、施術室でもっとも高い確率で遭遇するのはどれか。
子宮内膜症は生殖年齢の女性のおよそ 10% にあり、慢性骨盤痛または不妊を訴える患者では有病率が 35〜50% に達すると記述されている。原発性と続発性は痛みの性質だけでは分けられない。分けるのは、疾患を探したかどうかである。根拠:第3章/[2]
DSM-5 における PMDD の診断で決定的な要件はどれか。
PMDD は症状の内容ではなく時間的な配置で定義される。したがって過去を振り返った聞き取りでは診断が付かず、少なくとも2周期の毎日の前向き評定が要件になる。記録がなければ、施術の効果判定もできない。根拠:第4章/[4]
WHO による不妊の定義はどれか。
定義に含まれるのは期間だけで、原因は問われない。「不妊」は診断名ではなく状態の名前であり、男性因子・卵管因子・排卵障害・子宮内膜症・原因不明が同じ言葉で括られている。だから「不妊に灸は効くか」は、そのままでは答えられない問いである。根拠:第5章/[3]
更年期のホットフラッシュの病態として、測定に基づく理解に合うのはどれか。
ホットフラッシュは体温調節の許容幅(熱中性帯)が消失した状態で起こる、正常な放熱反応として説明されている。前向きコホートでは血管運動症状の総持続期間の中央値は 7.4 年、最終月経後も 4.5 年続くと報告されており、短期間で自然消失する症状ではない。根拠:第7章/[6]
「灸で腹部を温めると子宮の血流が増える」という説明について、正しいのはどれか。
存在するのは、ヒトの腹部加温による上腸間膜動脈の血流変化(加温は電気ディスク、被験者は全員男性)と、灸による子宮微小血管径の変化(ラット)の二つである。「ヒトの女性」「灸」「子宮」の三条件を同時に満たす測定はない。根拠:第14章/[17][19]
施灸せず、その日のうちに医療機関の受診を勧めるべき状況はどれか。
急性の下腹部痛、発熱を伴う骨盤痛、続く不正出血、妊娠の可能性があり本人も未確認——これらは施灸せず当日の受診を勧める区分である。婦人科的評価を一度も受けていない月経痛や不妊の訴えは、受診を勧め、評価の結果を確認したうえで開始する。根拠:第13章
月経困難症に対する施術の評価として、痛みの強さ以外に見るべき指標はどれか。
臨床の判断は、痛みが何点下がったかだけでは決まらない。痛みが何日続くか、鎮痛薬をどれだけ使うか、治療をやめたあと効果が維持されるか——これらが患者の生活を決める。640名の隔物灸試験は、これらを副次アウトカムとして測り、治療後3か月まで追跡している。根拠:第1章
施灸のタイミングを比較した無作為化試験で、月経前から始めた群が優れていたのはどの指標か。
月経開始の5〜7日前から始めた群と、月経の開始から終了まで行った群を比較した試験では、疼痛の持続について月経前開始が優れた。ただし「月経前の何日前が最適か」は10試験の統合でも有意差がなく、決まっていない。根拠:第3章/[5]
同じ疾患・同じ介入について二つのメタ解析の結論が揃わないとき、まず確認すべきなのはどれか。
月経困難症に対する灸の二つのメタ解析では、有効率では両方とも有意、VAS では一方が有意・他方が非有意という食い違いが生じている。「有効率」は研究ごとに定義が異なる合成指標であり、VAS のような連続量とは性質が違う。結論の向きではなく、測られた量を見る。根拠:第4章/[4][6]
生殖補助医療(ART)に灸を併用した論文を読むとき、最初に確認すべき欄はどれか。
ART は卵巣刺激から分娩まで段階が連なっており、採卵数・着床率・臨床妊娠率・生児出産率のどれを主要アウトカムに置いたかで、その試験が言えることが決まる。次に確認するのは、介入が灸だけか(鍼・生薬・赤外線が混じっていないか)、対照群が何を受けたかである。根拠:第8章
副次アウトカムに有意差が出なかったとき、正しい読み方はどれか。
試験の症例数は主要アウトカムに対して検出力が設計される。副次アウトカムの非有意は「差がない」ことの証明ではない。逆に、副次アウトカムで有意差が出ても、それは仮説を生む所見であって確かめられた結論ではない。根拠:第8章
PCOS に対する良好な統合値(妊娠率 RR 1.81 など)を、灸の効果として引用できない理由はどれか。
この統合値は 25 の RCT・1,991名 をまとめたもので、確実性も中等度と評価されている。しかし介入は鍼と灸の併用であり、得られた差のうちどれだけが灸によるものかは分離できない。数字の良さと、その数字が灸の話かどうかは別の問題である。根拠:第10章/[11]
卵巣予備能低下(DOR)に対する灸について、正しいのはどれか。
DOR で完了しているのは鍼の偽鍼対照試験(12週で胞状卵胞数の増加が有意、ただし24週では有意差が縮小)であり、灸については試験がいま始まったところである。適応として語られる頻度と、データの厚みは一致しない。根拠:第11章/[12]
ホットフラッシュに対する灸の試験で、対照が待機リスト(無治療)であることの弱点はどれか。
血管運動症状は総持続期間の中央値が 7.4 年に及び、経過のなかで変動する。待機リスト対照では、自然経過と期待による変化を介入の効果から分けられない。著者ら自身も、より大きな標本とプラセボ対照を含む研究を推奨している。根拠:第12章/[14]
更年期を扱ったネットワークメタ解析で、灸について起きたことはどれか。
49の RCT・4,579名 を統合した解析で、灸は総有効率で最高位、別のアウトカムで最下位という位置を同時に占めた。順位は「上位に来やすさ」を示す指標であって、効果の大きさでも、差が有意であることの保証でもない。根拠:第13章/[17]
月経困難症に対する灸のエビデンスの現状として正しいのはどれか。
複数のメタ解析で有効率の改善は一貫して報告されている一方、VAS の統合値は有意・非有意が分かれる。患者に伝えるときは、この二つを混ぜずに話す。640名試験の効果量そのものは、公表資料からは確認できていない。根拠:第15章
WHO による緩和ケアの定義に合うのはどれか。
WHO の定義に「終末期」「予後」という限定はない。むしろ「疾患の経過の早期に検討されたときに最も効果的である」とされ、早期の緩和ケアは生活の質を改善し、不必要な入院と医療サービスの利用を減らすとされている。根拠:第1章/[1]
緩和ケアを必要とする成人の疾患分布で、WHO がもっとも高い割合を示しているのはどれか。
内訳は心血管疾患 38.5%、がん 34%、慢性呼吸器疾患 10.3%、AIDS 5.7%、糖尿病 4.6% である。すなわち必要とする人の三分の二はがん以外だが、灸の臨床試験の対象はほぼすべてがん患者であり、ここに大きなずれがある。根拠:第2章/[1]
日本の緩和ケア病棟における鍼灸の実施状況として報告されているのはどれか。
緩和ケア病棟入院料加算を受けている 244施設への調査で、回答が得られた 98施設のうち鍼灸治療が実施されていたのは6施設(6.1%)であった。対象の愁訴は疼痛・倦怠感・便秘。在宅では、末期がん患者のケアで鍼灸師と連携している施設が 14.3% であった。根拠:第3章/[2]
緩和ケアで用いられる評価尺度について、正しいのはどれか。
NRS は強度を0〜10の一次元で、CFS は倦怠感を身体・精神・認知の多面で測る。STAS-J 症状版は医療者による他者評価である。同じ「倦怠感」でも尺度によって測っている対象が違うため、どの尺度を使ったかで結論が変わりうる。根拠:第4章/[5]
緩和ケアの患者で、施術より先に医療者へ伝えるべき変化はどれか。
従来と違う痛みは、灸で対応する対象ではない。病的骨折・消化管穿孔・脊髄圧迫などの初発症状でありうる。意識状態の変化、新たな発熱、呼吸困難の増悪も同様である。灸の臨床試験はこうした状態の患者を除外して行われており、そもそもデータが存在しない。根拠:第6章
血小板減少のある患者への施術についてしばしば引用される安全性データは、何のデータか。
引用されるのは鍼の後ろ向き症例集積(2,135回の施術)であり、灸のデータではない。血小板減少・好中球減少のあるがん患者で灸の有害事象を前向きに検討した研究は見出せなかった。この区別を落とすと、孫引きによる拡大解釈が起きる。根拠:第8章/[12]
化学療法誘発性末梢神経障害などで感覚が低下している部位に灸を行うとき、問題になるのはどれか。
灸の安全は「熱いと言われたら外す」という患者側のフィードバックに依存している。この経路が切れた部位では、いつもと同じ刺激量が熱傷になりうる。浮腫のある皮膚は薄く伸展して熱の伝わり方が変わり、リンパ節郭清後や照射後の四肢では皮膚損傷が蜂窩織炎の契機になりうる。根拠:第9章/[14]
がん緩和ケアの領域で、査読済みの研究を見出せなかったのはどれか。
照射部位への施灸の安全性を検討した査読済み研究は見出せず、放射線皮膚炎のガイドラインにも灸は登場しない。血液毒性下での施灸を前向きに検討した研究、灸の有害事象の発生率も同様に空白である。「研究がない」ことを「たぶん大丈夫」に読み替えてはならない。根拠:第13章/[1]
化学療法・放射線療法の副作用に対する灸の Cochrane レビューの結論はどれか。
29件の RCT・2,569名を含むレビューは、白血球数・ヘモグロビン値の改善や消化器毒性の軽減を示唆したが、確実性は低いと評価している。「示唆する」と「示された」は違う語である。根拠:第1章/[2]
がん緩和ケア領域における灸のメタ解析の統合値を割り引くべき理由として、実際に報告されているのはどれか。
がん疼痛のメタ解析は全10試験が中国で実施され、英語掲載は1件のみ。悪心・嘔吐の系統的レビューは16試験中15試験が中国で、全件が中国語掲載である。統合値がその地域の臨床設定に依存すること、そして陽性結果に偏る構造があることが、割引の理由になる。根拠:第2章/[3]
灸の臨床試験における盲検化について、正しいのはどれか。
実灸と外見・燃焼過程が同一で、台座が熱と煙を遮断する装置が開発され、被験者・施術者ともに区別できなかったことが検証されている(被験者 P = 1.000)。にもかかわらず、この手法を用いた試験は少ない。盲検化の弱さが、この領域の確実性を根本で規定している。根拠:第3章/[14]
ASCO–SIO のガイドラインが灸を推奨した対象はどれか。
推奨2.6 は「がん治療を完了した成人において、がん関連倦怠感の症状を管理するために臨床医は灸を推奨してもよい」である。エビデンスの質は低い。治療中の患者や他の症状に、この推奨をそのまま広げることはできない。根拠:第4章/[5]
ASCO–SIO のガイドラインが灸を推奨した根拠の2試験について、ガイドライン本文が明記している灸の内容はどれか。
根拠となった試験の介入は、赤外線レーザー灸や電気式・点火式の灸装置であり、植物材料の燃焼を伴わないものが含まれる。「灸が推奨された」という一文だけを持ち帰ると、日本の施術室で行う艾の灸と同じものだと誤解することになる。根拠:第4章/[5][6][7]
化学療法に伴う消化器症状に対する灸の系統的レビュー(32試験・2,990名)で報告されたのはどれか。
悪心・嘔吐 RR 0.70(0.61–0.79)、重度の悪心・嘔吐 RR 0.39(0.29–0.51)、下痢 RR 0.56(0.38–0.82)といずれも有意に減少と報告されている。ただしこの領域は、本巻で扱うなかで試験の質がもっとも低い部類に入る。根拠:第5章/[9]
患者を盲検化した唯一の便秘の試験(偽灸対照)では、どうだったか。
排便回数は灸群で週 3.3→4.6回、偽灸群で 2.7→3.7回とどちらも増えたが、群間差は有意ではなかった。非盲検の試験群では下痢・便秘・腹部膨満のいずれも有意に減少している。この対比が、この領域の確実性をもっともよく表している。根拠:第6章/[11]
がん緩和ケア領域の灸の研究のうち、骨髄抑制を扱ったものが特別な位置を占める理由はどれか。
白血球数やヘモグロビン値は数えられる指標であり、主観の入る余地が小さいぶん盲検化の弱さの影響を受けにくい。Cochrane レビューも白血球数とヘモグロビン値の改善に言及しているが、確実性は低く、結論的ではないとしている。根拠:第7章/[12]
緩和ケア領域の灸の臨床試験のうち、今回の調査範囲では見出せなかったのはどれか。
ガイドラインが灸を推奨した唯一の症状について、その根拠は機械式の温熱であった。艾を燃やす灸で同じ検証を行った試験は見出せていない。断熱型の偽灸装置はすでにあるため、これは明日にでも着手できる、検証可能な空白である。根拠:第14章/[5][14]
消化器疾患の臨床試験で用いられる指標のうち、「複合臨床指標」にあたるのはどれか。
指標は主観指標・複合臨床指標・客観指標の三つに分けられる。複合臨床指標は症状に検査値を混ぜて計算する指数で、CDAI と Mayo スコアが代表である。ただし重みの大半は患者の自己申告に置かれている。A は主観指標、C と D は客観指標にあたる。根拠:序章/第13章
胃の適応性弛緩(accommodation)が指すのはどの働きか。
適応性弛緩は胃底部が弛緩して容積を広げる迷走神経性の反射である。Goyal らは充満期に胃が空腹時容積の 10〜15倍 まで拡張し、胃内圧の有意な上昇を伴わないと記述している。B は前庭部のトリチュレーション、C は幽門の働きであり、いずれも胃の別の仕事である。根拠:第1章/[4]
Rome IV における食後愁訴症候群(PDS)の要件はどれか。
PDS は食事に誘発される膨満感または早期飽満感が週3日以上あり、通常量の食事を終えられない状態である。A は同じ機能性ディスペプシアの心窩部痛症候群(EPS)の要件、B は過敏性腸症候群、C は機能性便秘の項目であり、いずれも別の疾患についての正しい記述である。根拠:第2章・第6章・第9章/[1][5][6]
機能性ディスペプシアの病態を扱った Oshima の総説で、症状の重症度と密接に関連するとされたのはどれか。
Oshima は胃拡張への知覚過敏が約 37% の患者にみられ、症状の重症度と密接に結びついていると記述している。一方、胃排出遅延は約 30% にみられるが、症状の型・重症度との相関は「結論が出ていない」とされる。適応性弛緩の障害は最大 40% と頻度は最も高いが、症状との結びつきについて同様の記述はない。根拠:第3章/[3]
消化器領域で灸が起こしうる最大の有害事象はどれか。
機能性ディスペプシアも過敏性腸症候群も除外診断であり、症状がわずかに緩和されることで受診の動機が失われる経路で害が生じうる。この経路は有害事象として集計されないため、どの安全性レビューにも数字として現れない。A・B・D はいずれも Xu らの症例報告集計に現れる実在の有害事象だが、もっとも大きな害として挙げられるのは受診の遅れである。根拠:第4章・第8章・第12章・第17章/[16]
Rome IV における IBS-D(下痢型)の定義はどれか。
亜型は Bristol 便形状スケールにおける硬便(タイプ1〜2)と軟便・水様便(タイプ6〜7)の割合で決まる。A は IBS-C(便秘型)、B は IBS-M(混合型)、D は IBS-U(分類不能型)の定義である。第2巻で見るとおり、灸の臨床試験は IBS-D に強く偏っている。根拠:第6章/[5]
過敏性腸症候群で器質的疾患を見落とさないために、施術室で1問で聞ける鑑別の質問はどれか。
夜間の下痢は StatPearls が挙げる警告徴候の一つである。機能性の腸症状は睡眠中に軽減することが多い一方、器質的な炎症は睡眠と無関係に続くため、この一問が鑑別の手がかりになる。ただしこれは受診を勧める根拠であって、施術者が診断を下すためのものではない。根拠:第8章/[5]
Rome IV の機能性便秘の診断要件について正しいのはどれか。
6項目のうち2項目以上を満たせばよく、回数はそのうちの1項目にすぎない。残り5項目はいきみ・便形状・閉塞感・残便感・用手的補助という排便の質に関する項目である。C の腹痛は過敏性腸症候群の必須要件であり、機能性便秘では IBS の基準を満たさないことがむしろ条件になる。根拠:第9章・第6章/[6][5]
便秘のアウトカムのうち、患者の記録ではなく外から測る量はどれか。
大腸通過時間は X線不透過マーカーの移動で評価する客観指標であり、患者の期待では動きにくい。A・B・C はいずれも患者が記録するものである。第2巻で見るとおり、灸の便秘試験で用いられているのは A・B・C だけであり、大腸通過時間で灸を評価した試験には今回の調査範囲で到達できなかった。根拠:第10章/[6]
潰瘍性大腸炎とクローン病の炎症の深さの違いとして正しいのはどれか。
潰瘍性大腸炎の炎症は粘膜と粘膜下層に限局し、大腸に限られ、直腸から連続する。クローン病は全層性で、消化管のどの部位にも生じ、跳躍性病変を示す。全層性であることが、狭窄・瘻孔・膿瘍というクローン病に特徴的な合併症を生む。根拠:第12章/[7][8]
クローン病の疾患活動性指標 CDAI について正しいのはどれか。
Best らは、112 例・187 回の受診から 18 の予測変数を集め、担当医の全般評価を予測する式を導き、それを8変数に簡略化したものが CDAI であると述べている。CDAI には内視鏡が入っていない。内視鏡サブスコアを内蔵しているのは Mayo スコアである。この構造ゆえに、CDAI が大きく下がりながら内視鏡スコアが動かないという事態が原理的に起こりうる。根拠:第13章/[9][10][17]
足三里と中脘に 43〜45℃ の灸様刺激を与えたマウス実験(Su ら)で観察された胃運動の変化はどれか。
足三里(ST36)への 43℃・45℃ の刺激は胃運動を促進し、中脘(CV12)への同じ温度の刺激は抑制した。41℃ ではどちらの部位でも有意な変化がなかった。TRPV1 欠損マウスでは両方向とも減弱している。ただしこれはマウス・麻酔下の実験であり、測られたのは運動だけで知覚は測られていない。根拠:第15章/[12]
灸と消化器疾患をめぐる文献のうち、測定条件を確認できる査読済みの一次文献に到達できなかったのはどれか。
隔物灸(生姜灸・附子灸)の皮膚温については、測定条件を確認できる査読済みの一次文献に到達できなかったため、温度の数値は採用していない。そのため、第2巻で扱う隔物灸の臨床試験群の刺激量を、第15章の温度条件と突き合わせることが現時点ではできない。A は Mayo 内視鏡サブスコア、B は Rome IV、D は Xu らの集計であり、いずれも実在する報告である。根拠:第16章・第13章・第2章・第17章/[15][16]
灸という手技に固有の効果があるかを問える設計はどれか。
偽灸対照だけが、期待・注目・通院・皮膚接触・温感といった要素を両群でそろえたうえで手技そのものを比べる設計である。A・B・C はいずれも意味のある比較だが、それらが答えるのは「灸を含む一連の関わりに価値があるか」であって、「灸という手技に固有の効果があるか」ではない。根拠:序章
機能性ディスペプシアに対して鍼と灸を直接比較した無作為化試験(Mao ら)の主要評価項目 SF-LDQ の結果はどれか。
4週時点の群間差は 0.08[95%CI −0.634〜0.794]、p = 0.826 であった。副次評価では鍼が心窩部痛と不安で、灸が食後の膨満感で優っている。この試験には偽対照アームがないため、改善の何割が手技によるものかは分離できない。根拠:第1章/[1]
灸の臨床試験で用いられる偽灸(sham)について正しいのはどれか。
艾炷の下に断熱材を入れ、外観・燃焼過程・煙は保ったまま熱の伝達だけを遮る偽灸が実在し、第7章の便秘試験で実際に用いられている。したがって偽対照試験が少ない理由は技術的な不可能性ではなく、研究の設計と資源配分の問題である。根拠:第2章・第7章/[7]
過敏性腸症候群に対する灸の系統的レビュー(Park ら 2013)に含まれた20試験について正しいのはどれか。
適切な割付隠蔽が記述されたのは 20 試験中 2 試験(10%)、適切なランダム化は 6 試験(30%)である。20 試験のうち 19 が中国、1 が米国で、盲検が不可能であった試験は 19 件であった。この10%という数字が、以降のすべての効果量にかかる割引率になる。根拠:第3章/[2]
過敏性腸症候群に対する灸の系統的レビュー(Park ら 2013)で、偽灸対照を置いた唯一の試験の結果はどれか。
米国で行われた Anastasi らのパイロット試験(29 例)が唯一の偽対照試験で、プールされた Clinical Global Impression Scale の変化は MD 0.35[−0.77, 1.47]であった。ただしこの試験自身の抄録は、症状日誌から算出した腹痛について有意な群間差を報告している。同じ試験でも、どのアウトカムを見るかで結論が変わる。根拠:第4章/[2][4]
下痢型過敏性腸症候群に対する灸のメタ解析(Tang ら 2016)で、症状別に見て有意差が示されなかったのはどれか。
腹痛は p = 0.21、便の異常は p = 0.95 で、いずれも有意差がなかった。有意になったのは腹部膨満(p = 0.02)、排便回数(p = 0.02)、症状スコア総点(p = 0.0001)である。Rome IV において腹痛は過敏性腸症候群の必須要件であり、その必須要件について差が出ていない。根拠:第5章/[3][16]
下痢型過敏性腸症候群に対する隔物灸の3群試験(Ma ら)で、薬末入りの隔物灸群とプラセボ灸群を比べた結果はどれか。
原著は4週時点について「HM群と FM群のあいだで GSRS 総点に有意差はなかった」と明記している。有意差が報告されているのは、隔物灸群と薬物群のあいだである。プラセボ灸群の GSRS 総点も 8.60 ± 0.276 から 2.93 ± 0.302 へ下がり、薬物群の 3.73 ± 0.449 より低い値を示している。薬末を入れた隔物灸と、小麦粉を入れただけの隔物灸に差がない以上、介在物の薬効を患者への説明の根拠にすることはできない。根拠:第6章/[6]
機能性便秘に対する灸の偽灸対照試験(Park ら 2011)の結果の読み方として正しいのはどれか。
排便回数の群間差は −0.25[−2.08, 1.58]、p = 0.78 であった。信頼区間が臨床的に意味のある改善も悪化も含んでいるため、この試験は差の方向すら定めていない。灸群も偽灸群も排便回数は増えており、C も誤りである。「有意差がなかった」は「差がない」ではない。根拠:第7章・第8章/[7]
クローン病に対する隔物灸の無作為化試験(Bao ら 2014)で、有意な変化が示されなかった指標はどれか。
治療群では CDAI(p = 0.000)、CRP(p = 0.007)、組織病理スコア(p = 0.002)が有意に改善した一方、CDEIS は両群とも低下したが統計的に有意ではなかった。赤沈も両群で有意差がない。CDAI の重みの大半が自己申告に置かれていることを踏まえれば、この不一致は指標の構造から予測できる帰結である。根拠:第9章・第10章/[8]
潰瘍性大腸炎に対する鍼灸のドイツの偽鍼対照試験(Joos ら 2006)の結論はどれか。
著者らは「伝統的な鍼と偽鍼の効果の差は小さく、有意であったのは主要評価項目である CAI についてのみであった」と結論している。生活の質は鍼灸群で 146 ± 23 → 182 ± 18、偽鍼群で 157 ± 20 → 183 ± 23 とどちらも改善し、群間に有意差はなかった。根拠:第11章/[10]
実薬対照の試験で灸の効果量が桁違いに大きいとき、まず取るべき順序はどれか。
Ji ら(2013)は経口サラゾスルファピリジンとの比較でリスク比 5.42[3.38〜8.68]を報告したが、修正Jadadスケールで 4 点以上の試験は 43 件中 3 件、中国語発表が 37 件であった。確立した薬剤に対して桁違いの効果量が出ているときは、まず含まれた試験の質と発表国の一覧を見る。D のように恣意的に割り引くことも正しい手順ではない。根拠:第12章/[11]
発表国と試験結果の関係を調べた Vickers ら(1998)の報告内容として正しいのはどれか。
「中国またはロシア/ソ連で発表された試験のうち、検証された治療が無効であることを見出したものは一つもなかった」と記述されている。鍼以外の介入での陽性結果の割合は英国 75%、日本 89%、台湾 95%、ロシア/ソ連 97%、中国 99% であった。これは研究者個人の誠実さではなく、陰性結果が発表されにくいという出版の構造の問題である。根拠:第14章/[15]
灸の消化器領域の研究のうち、2026年8月時点で見出せなかったのはどれか。
内視鏡を測った唯一のランダム化試験(Bao ら 2014)では CDEIS に有意な変化がなく、内視鏡的改善を報告した研究は非ランダム化のコホート(Li ら 2026)である。粘膜治癒を主要評価項目に置いた灸のランダム化比較試験は、2026年8月時点で見出せなかった。A は Wang ら 2020、B は Xu ら 2014、D は Park ら 2013 であり、いずれも実在する報告である。根拠:第13章・第16章/[8][12][13]
冷え症という訴えの位置づけとして適切なのはどれか。
韓国医学の専門家調査は、CHHF を「西洋医学では独立した疾患として分類されない症状」と明記している。日本でも Sakaguchi らは「明確な定義を欠き、診断は個人の自覚に依存している」と述べ、基準を作ることを研究目的としている。C は誤りで、日韓の尺度は相互に換算されていない。根拠:第1章・第2章/[1][2]
Sakaguchi らの冷え症判別尺度で報告された感度・特異度は、何に対する性能を示しているか。
この研究の参照基準は、被験者自身が冷え症だと自覚しているかどうかである。したがって感度・特異度は自覚の再現性を示す。生理学的な指標や皮膚温を参照基準にした計算ではないため A・C は誤り。レイノー現象の除外はこの研究の目的ではない。根拠:第2章/[1]
同一の集団に「自覚」と「冷え感尺度」の二つの定義を当てた調査で観察されたことはどれか。
女性看護師 1,138名の調査では、日常的な冷えを自覚していたのが 44.3%、冷え感尺度で冷え症と判定されたのが 21.4% であった。同じ集団でも、定義を変えると該当する割合が大きく動く。この差は集団の差ではなく定義の差である。根拠:第4章/[5]
赤外線サーモグラフィによる皮膚温測定の標準化について、正しいのはどれか。
13か国24名のパネリストが3ラウンドの匿名調査を行い、16項目の原案から15項目について合意した。これが TISEM チェックリストである。スポーツ・運動医学の領域で作られたものであり、冷え症研究のために作られたものではない。著者らは、それ以前は何を報告すべきかの合意が存在しなかったと述べている。根拠:第5章/[9]
寒冷不耐症状重症度質問票(CISS)について正しいのはどれか。
CISS は手の外傷後の後遺症としての寒冷過敏を測る自己記入式尺度で、北スウェーデンの就労年齢の健常者 1,239名の調査から、95パーセンタイル(男性 49.5、女性 53.0)に基づいて「50 超を異常」とする閾値が導かれた。今回の調査範囲では、これを hiesho や CHHF の集団に適用した研究には到達できなかった。根拠:第7章・第16章/[8]
被験者46名から得た5,612枚の画像を用い、「精度100%」と報告された診断モデルの研究がある。この結果の読み方として適切なのはどれか。
同一人物から得た画像は互いに強く似ているため、独立した証拠として数えられない。46名から5,612枚という構造では、モデルが「誰の足か」を学習しても高い正答率が出うる。原著の分割手続きの詳細には到達できていないため断定はできないが、読み方としては人数を単位に見る。根拠:第8章/[11]
足三里への温筒灸で刺激量を変えた実験(Kuge ら 2018)の結果として正しいのはどれか。
原著は「左足関節の皮膚温を除き、観察したすべての部位で二つの刺激群のあいだに有意な反応の差はなかった」と記述し、その左足関節の交互作用も外れ値と考えられたと述べている。対照群では全部位で有意な変化がなく、刺激していない側でも上昇が観察されている。ただし n = 14 であり、差がないと結論できる試験ではない。根拠:第10章・第11章/[12]
冷え症に対する灸のランダム化比較試験(辻内ら 2021)を読むうえで、もっとも重要な設計上の事実はどれか。
対照はレッグウォーマー着用であるため、この試験が答えたのは「灸は何もしないより良いか」ではなく「灸はレッグウォーマーより良いか」である。灸には熱さと香りがあり盲検化されていない(B は誤り)。対象は 18〜39歳の女性であり(C は誤り)、主要評価項目は VAS による冷え症の程度である(D は誤り)。根拠:第12章/[14]
施灸した部位の温度上昇と、そこから離れた末梢(足背遠位)の皮膚温上昇を同時に測ったとき、両者の関係はどうなるか。
三陰交への灸バーナーでは施灸部位の皮膚表面温が4分後に 11℃ 上昇でピークに達した一方、足三里への温筒灸による足背遠位の皮膚温は 31.1℃ から 32.7℃ への変化であった。測定条件も対象も異なるため優劣の比較はできないが、量の桁が違うことは読み取れる。だから「熱ければ効く」という説明は成り立たない。根拠:第9章・第13章/[12][15]
我が国の灸療法の実態調査(形井ら 2025)で報告された内容として正しいのはどれか。
施灸を拒否された経験があると回答した割合は、患者が経験する前で 45.6%、経験した後で 33.2% であった。拒否の理由は熱さ・熱傷・煙への不快感である。有効性については 98.9% が「非常に有効」または「やや有効」と回答している。根拠:第14章/[16]
皮膚温を指標に、灸の壮数や時間と効果の関係(用量反応関係)を示したヒトの研究が見当たらない。この状況で施術者が取るべき対応はどれか。
単回刺激と3回刺激を比べた研究では、左足関節を除くすべての部位で有意差がなかった。壮数を増やすことの根拠を皮膚温に求められる研究には到達できていない。根拠が定まっていない変数こそ、記録に残す価値がある。B・C・D はいずれも、分かっていないことを分かったものとして扱う対応である。根拠:第10章・第16章/[12]
レイノー現象の定義として適切なのはどれか。
Cochrane レビューは、一次性レイノー現象を「寒冷または情動に対する過剰な血管攣縮反応を特徴とする一般的な状態」と記述し、古典的には指趾が白→青→赤と変化するとしている。C と D は第1巻で扱った冷え症の定義であり、レイノー現象の定義ではない。根拠:第1章/[4]
施術所で冷えを訴える患者のうち、医療機関での評価を勧めるべき所見はどれか。
色調変化を伴う発作性の冷えはレイノー現象を疑う所見であり、二次性であれば背景疾患の評価が優先される。全身性強皮症に続発する型が存在する。受診を勧めることと灸を続けることは矛盾しない。矛盾するのは評価を受けないまま経過を見ることである。根拠:第1章・第2章/[4][5]
韓国の多施設研究(6,149名)で、手足の冷えを訴える群に少なかった疾患群はどれか。
CHHF群では高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・脂肪肝・狭心症が低頻度であった。B と C は高頻度だった疾患、D は調整後の解析で関連が示された疾患である。ただし横断研究であり因果の方向は示されない。個々の患者の鑑別に当てはめてはならない。根拠:第3章/[2]
レイノー現象の評価指標のうち、級内相関係数が許容範囲を下回ったものの組み合わせはどれか。
許容範囲(ICC 0.70 以上)にあったのはレイノー症状スコア、発作時の症状、1日あたりの平均発作回数である。患者による全般評価と医師による全般評価、および発作の持続時間はこれを下回った。「よくなりましたか」という問いは再現性の低い測定である。根拠:第4章/[3]
一次性レイノー現象に対するカルシウム拮抗薬の Cochrane レビューの結論はどれか。
著者らは、発作頻度で測る限り最小限にしか有効でないという中等度の質のエビデンスと、重症度にはほとんど効果がないという高い質のエビデンスを提供している、と結論している。生理学的測定を行った5試験はいずれも群間差を検出していないため D も誤りである。根拠:第5章/[4]
レイノー症候群に対する鍼の系統的レビューにおける、灸の位置づけとして正しいのはどれか。
介入の内訳は手技鍼、手技鍼+灸、電気鍼である。灸を単独で用いた試験は含まれておらず、灸を含む試験でも鍼との寄与を分離できない。さらにネットワークメタ解析は「手技鍼±灸」について対照に対する有意な効果を示さなかった。根拠:第6章・第7章/[5]
糖尿病性末梢神経障害に対する灸のメタ解析(11試験927名)を読むとき、統合された効果量より先に確認すべき項目はどれか。
正中神経の MNCV で I² = 98%、SNCV で 97% という値は、試験ごとに結果がまったく異なることを意味する。異質性がこれほど高いとき、プールされた平均差は次の一人の患者に当てはめられる推定値としては読めない。効果量や p 値より先に、この列を見る。根拠:第8章/[7]
灸によって神経伝導速度が改善したという報告から言えることはどれか。
神経伝導速度は神経線維の伝導機能の指標であり、組織に届く血液や酸素の量を評価する指標ではない。循環の評価には皮膚灌流圧、経皮酸素分圧、足関節上腕血圧比などが用いられる。糖尿病性末梢神経障害と末梢循環障害は併存しうるが別の病態である。根拠:第9章・第10章/[7]
知覚が低下している糖尿病患者に施灸するときの、実務上の要点はどれか。
末梢神経障害があると熱の知覚が鈍り、患者が熱いと言う前に組織が損傷する。報告された症例では、腰部の 3 cm × 3 cm のII度熱傷から MRSA が播種し、対麻痺と尿閉が残存した。時間と距離で管理し、皮膚を残す手技を選び、施灸部位を毎回確認する。根拠:第11章・第14章/[11][14]
褥瘡に対する灸のメタ解析2件が撤回された理由として、撤回通知に記されているのはどれか。
両撤回通知とも、論文が「毀損された査読プロセスのみに基づいて受理された」ことを理由に挙げている。研究内容の誤りが判定されたのではなく、受理の手続きが毀損されていた。いずれも著者らは撤回通知に応答していない。したがって D も誤りである。根拠:第13章/[10][12]
経皮酸素分圧や足関節上腕血圧比のような循環の実測指標で、灸の効果を測ったヒトの試験が見当たらない。この状況における説明として適切なのはどれか。
経皮酸素分圧、足関節上腕血圧比、皮膚灌流圧、足潰瘍の治癒率、無痛歩行距離のいずれかを主要アウトカムに置いた灸のヒト試験には到達できていない。測られていないことを「示されている」と言うこと(A)も、証拠がないことを効果の否定と読むこと(C)も誤りである。動物実験の値をヒトの説明に用いること(D)も適切ではない。根拠:第10章・第16章/[1][7][14]
中国語圏の臨床試験で多く用いられる「総有効率」という指標の説明として適切なのはどれか。
総有効率は、各試験があらかじめ定めた基準にしたがって患者を分類し、有効と判定された人の割合を示す複合指標である。基準は試験ごとに異なるため C は誤り。B は連続量を二値に落としている点で誤り。D は症状スコアやQOL尺度の説明である。根拠:第3章/[3][10]
呼吸器疾患の臨床試験で用いられる指標のうち、患者の自己記入ではなく実測値であるのはどれか。
6分間歩行距離は運動耐容能の実数指標であり、患者が良くなったと感じるだけでは動かない。A は ACT スコア、B は VAS で、いずれも患者が自分で答える尺度である。D は総有効率であり、判定者の主観が入りうる。根拠:第1章・第2章/[5]
呼吸器疾患の試験で「灸」とひとくくりに書かれた介入を読むときの注意として、適切なのはどれか。
熱敏灸と warm-suspended moxibustion を比較した試験では、6か月追跡後のFEV1とPEFに有意差が認められたと報告されている。同じ「灸」でも種類が違えば結果は変わりうる。A は誤りで、これらの試験の抄録には手技の定義が記載されていないことが多い。C も誤りで、9種あるいは15種の介入を区別した解析が存在する。根拠:第4章/[3][9][12]
安定期COPDを対象に5種の介入を比較したネットワークメタ解析がある。この解析を「灸のメタ解析」として引用すると不正確になりうる理由はどれか。
比較された5種は鍼刺・艾灸・穴位貼敷・穴位埋線・耳穴療法であり、艾を燃やすのは艾灸のみである。そしてこの解析は穴位埋線を最良と結論している。「鍼灸が有効」という結論を持つ論文が、艾を燃やさない手技を最良としていることがある、という点に注意が要る。根拠:第5章/[11]
喘息に対する灸の系統的レビューについて、原著が明記しているのはどれか。
原著は、CD4陽性およびCD8陽性T細胞の割合と好酸球数に対する効果が、上乗せの比較と直接比較のあいだで一致しなかったと明記している。A はエビデンスの質が中等度から非常に低いと記されているため誤り。B は小児の生活の質には効果がなかったとされる。D は報告された有害事象がすべて軽度であったため誤り。根拠:第7章/[2]
熱敏灸と西洋薬を比較したメタ解析が報告した、統合結果はどれか。
3か月の治療後も6か月の追跡後も、有効率・ACTスコア・FEV1・PEFのいずれにも有意差は認められなかった。有効率の相対危険度は 1.01(95%CI 0.92〜1.12) と 1.12(95%CI 0.93〜1.36) で、いずれも1をまたいでいる。原著は組み入れた試験の質が低いことも限界として挙げている。根拠:第8章/[3]
喘息に対する鍼のCochraneレビューについて、正しいのはどれか。
レビューは、いくつかの研究で偽鍼の群に用いられた経穴が中医学において喘息の治療に用いられるものであったと指摘している。A は誤りで、統計学的に有意な効果も臨床的に意味のある効果も認められなかった。C は誤りで、介入は鍼である。D は誤りで、検索は2003年8月までである。根拠:第10章/[1]
安定期COPDの患者を対象とした試験で、群間効果が認められなかったアウトカムはどれか。
努力肺活量と1秒量については、時間効果・群間効果・交互作用のいずれも認められなかった(P > 0.05)。A・B・C はいずれも群間効果が認められている。動いたのは増悪頻度・運動耐容能・症状であり、気流閉塞そのものを表す実数は動かなかった。根拠:第11章/[5]
アレルギー性鼻炎に対する間接灸のメタ解析で、有意差が認められなかったアウトカムはどれか。
VASの標準化平均差は −0.38(95%CI −1.06〜0.30) で信頼区間が0をまたぎ、血清IgEも両群間に有意差が認められなかった。原著自身が、VASスコアと血清IgEの改善については明らかな優位性はなかったと結論している。この事実は、アレルギーの機序そのものが変わったという説明を支持しない。根拠:第14章/[10]
呼吸器疾患を対象に、灸を偽灸と比較した無作為化比較試験が見当たらない。この状況から言えることはどれか。
喘息・COPD・アレルギー性鼻炎のいずれについても、偽灸を対照とした無作為化比較試験には到達できていない。偽対照がなければ、期待や通院に伴う効果を差し引けない。妥当性を検証済みの偽灸デバイスは2006年から存在するため C は誤りであり、証拠がないことは効果の否定ではないため B も誤りである。根拠:第16章・第17章/[9][10][13]
DSM-5の身体症状症(SSD)とICD-11の身体的苦痛症(BDD)が、それ以前の身体表現性障害から変更した最も大きな点はどれか。
旧来の身体表現性障害は器質的説明の不在を診断の柱に置いていたが、これは検査技術で診断が動くこと、患者に否定的な含意が伝わることの2点で弱点があった。SSDとBDDはいずれもこの柱を外し、症状への思考・感情・行動と機能障害の側に基準を移している。A・B・Dはいずれもこの改訂の要点ではない。根拠:第1章・第2章/[2]
1990年から2012年に実施された32研究・70,085人を統合したメタ解析で、プライマリケア受診者における身体表現性障害(DSM/ICD基準)の点有病率として報告された値はどれか。
報告値は26.2%(95%CI 19.1〜33.3、I²=98%)で、質の高い研究に限ると34.8%であった。Aは一般住民におけるBDDの点有病率、Cは同じ研究における「MUSが1つ以上」の12か月有病率、Dは別の研究で報告された偽鍼と関係性強化を組み合わせた群の症状緩和割合であり、いずれも本問の対象ではない。根拠:第3章/[1]
同じプライマリケアのメタ解析で、身体化障害の有病率はDSM-IV基準で0.8%、ICD-10基準で4.7%、質問票による判定で12.8%と報告された。この3つの数値の差から最も適切に言えることはどれか。
同一のレビューが同じ疾患概念について、判定手段だけを変えて算出した3つの値である。したがって差は判定手段に由来する。Aは年代の比較ではないため言えない。Bは質問票の値が大きいことを精度の高さと取り違えている。Cは国別の比較を行った結果ではない。根拠:第3章/[1]
香港・フィリピン・カタールの一般住民18,105人を対象とした調査で、併存疾患を調整した過去30日間の役割喪失日数は、BDDのみの群で4.7日、SSDのみの群で3.1日と報告された(p<0.001)。この結果から言えることはどれか。
役割喪失日数は生活機能の障害の指標であり、調整後もBDD群のほうが多かった。Bは有病率の話で、実際にはBDD 2.0%・SSD 3.5%とSSDのほうが高い。Cはp<0.001と報告されているため誤り。Dは治療反応を測った研究ではない。根拠:第2章/[2]
脳を能動的な推論装置とみなす予測処理モデルでは、持続する身体症状はどのように記述されるか。
このモデルでは、脳は予測と感覚入力の差(予測誤差)を最小化しようとする装置とみなされ、持続する身体症状は「推論の失敗」として位置づけられる。期待は症状が生じた後の増幅要因としてだけでなく、症状知覚の成立そのものに関与する。A・B・Dはこのモデルの記述ではない。根拠:第4章/[3]
無害な温刺激と冷刺激を皮膚上に交互に並べて同時に与えると灼けるような痛みが生じる(サーマルグリル錯覚)。この現象が臨床的に示していることはどれか。
与えられているのはいずれも無害な温度であり、組織は損傷していない。それでも痛みが生じる。Aは前提と矛盾する。Cはこの錯覚が実験的に再現される現象であることと合わない。Dは温度覚を内受容感覚の入口とみなす記述と逆である。根拠:第6章/[6][7]
ドイツの一般住民2,510人を対象にSSS-8を検証した研究では、重症度区分が1段階上がるごとに医療機関の受診回数がどう変化すると報告されたか。
報告値は53%増加(95%CI 44〜63)である。Bの12%は同研究における医療利用との関連を示す発生率比1.12を割合として誤読したもの、Cの24%は一般的健康状態との相関係数−0.24の誤読であり、いずれも別の指標の値である。根拠:第8章/[9]
心身医療の外来を受診した372人で、質問票による身体症状症の検出精度を調べた研究がある。この研究が示した最も重要な限界はどれか。
最適な組み合わせ閾値でも感度69%・特異度70%であり、著者らもこれを診断ではなく「リスクのある人を同定する手段」と位置づけている。Bは対象に男性31.2%が含まれており誤り。Cは診断面接を基準として比較した研究であるため誤り。Dは報告されていない。根拠:第9章/[10]
年8回以上受診する医学的に説明されない症状をもつ成人80名に、五行鍼灸を12回以上加えた無作為化比較試験では、26週時点の主要評価項目の群間差は−0.6(p=0.05)だったが、欠測値を補完すると−0.4(p=0.12)になった。この結果の読み方として適切なものはどれか。
解析方法を変えるだけで有意性が失われる結果は頑健とは言えない。Aは感度分析の目的を否定するもの。Bは補完後にp=0.12となる事実と整合しない。Dは差の符号が介入群の改善を示していることと矛盾する。なおこの試験の対照は待機群であり、偽鍼ではない点にも注意する。根拠:第11章/[13]
機能性身体症状と最初に診断された成人で、後に器質疾患が判明した割合は、診断評価研究では8.8%、自然経過を追った追跡研究では0.5%と報告されている。この2つの値の差の説明として適切なものはどれか。
診断評価研究は「改めて系統的に調べ直したときに変わる割合」、追跡研究は「通常の経過のなかで後に判明する割合」を測っており、測定している場面が違う。A・C・Dはいずれも原著が述べている説明ではない。なお著者らは、特定の身体疾患が系統的に見落とされている様子はなかったとしている。根拠:第13章/[14]
医学的に説明されない症状をもつ患者の自然経過について、系統的レビューが報告した改善と悪化の割合はどれか。
報告値は改善50〜75%、悪化10〜30%である。無処置でも半数以上が改善するため、対照群のない前後比較で改善が観察されても施術の効果とは言えない。A・B・Cはいずれも報告値と一致しない。根拠:第16章/[16]
身体症状症・身体的苦痛症と灸の関係について、現時点で定量的なデータが存在しないのはどれか。
診断基準で選ばれた患者に灸単独を偽灸と比較した試験は、今回の調査範囲では見出せなかった。Bは5研究376人の系統的レビューが存在する(ただし確実性は低〜非常に低)。Cは3地域18,105人の調査で報告されている。Dは一般住民2,510人の検証で設定されている。根拠:第17章/[18]
8つのデータベースから9,526本を検索し、身体症状症に対する鍼の無作為化比較試験を集めた系統的レビューでは、5研究376人が組み入れられた。この5研究に共通する設計上の特徴はどれか。
組み入れられた研究は、鍼をパロキセチンまたはデュロキセチンに併用する設計が中心であった。したがって「鍼だけで身体症状症が改善する」とは言えない。Aは偽鍼単独比較で、この5研究の中心的な設計ではない。C・Dはこのレビューの対象ではない。根拠:第2章/[1]
身体症状症または身体的苦痛症の診断基準で選ばれた患者を対象に、灸単独を偽灸と比較した無作為化比較試験について、現時点で言えることはどれか。
英語・日本語・中国語圏を7つの角度から検索したが、この条件を満たす試験は見出せなかった。存在しないことの証明ではないが、身体症状症を対象とした鍼の系統的レビューでも灸単独の試験は組み入れられていない。A・B・Cはいずれも存在を前提としており、根拠がない。根拠:第1章・第19章/[1]
慢性疲労症候群に対する灸の系統的レビュー(15研究・1,030人)で用いられた対照はどれか。
対照は鍼が10試験、薬物(フルオキセチン、ビタミン類、パロキセチン)が5試験であり、偽灸対照は1つも含まれていない。したがって、このレビューの結果から灸に固有の効果を切り分けることはできない。A・B・Dはいずれも組み入れられていない対照である。根拠:第4章/[2]
あるメタ解析で、統合された疲労尺度の不均一性がI²=98%と報告された。この値の解釈として適切なものはどれか。
I²は試験間のばらつきが偶然では説明できない程度を示す指標であり、98%は極めて大きい不均一性を意味する。この状況で点推定値だけを引用すべきではない。Bは意味が逆。C・DはI²の定義とは無関係な読み方である。根拠:第4章/[2]
がん関連倦怠感をもつ96人を灸群・偽灸群・通常ケア群に割り付けた多施設・評価者盲検試験で、偽灸群について報告されたことはどれか。
偽灸群も治療期間中は有意な改善を示した。灸群だけが改善を示したのは治療終了後4週の追跡期間であり、この構造が判定時期の設計に直結する。A・Bは報告と異なる。Dは灸群について述べられたことで、偽灸群のことではない。根拠:第6章/[4]
機能性便秘の患者を灸群と偽灸群に割り付けた試験では、排便回数が灸群で週3.3回から4.6回へ、偽灸群で2.7回から3.7回へ増加し、群間差は−0.25(95%CI −2.08〜1.58、p=0.78)であった。この結果から言えることはどれか。
両群とも群内では増加したが、群間差の信頼区間は0をまたぎp=0.78であった。前後比較だけを見れば「効いた」と読める大きさの変化が、偽灸群でも同じように起きている。Aは変化の向きが逆。C・Dは群間差がなかったことと整合しない。根拠:第9章/[9]
中国語圏の「亜健康」を対象とした灸の試験3件では、対照としてビタミンE内服または漢方薬服用が用いられた。この設計から言えないことはどれか。
偽灸対照がないため、施灸という行為に伴う期待・関係性・通院・儀式の要素がすべて灸群にだけ加わっている。したがって温熱刺激に固有の効果とは言えない。A・B・Cはいずれも報告された事実であり、この設計から言える。根拠:第8章・第11章/[6][7][8]
熱と煙を遮断する台座を用いた偽灸デバイスを、55〜75歳の志願者71人で検証した二重盲検試験では、実灸を受けたと思うと答えた人数は治療群30人・偽対照群29人であった(p=1.000)。この結果が意味することはどれか。
両群でほぼ同じ人数が実灸を受けたと判断しており、群間差はなかった。すなわち盲検化が成立している。Bは台座が熱と煙を遮断する設計であることと整合しない。Cは試験前の質問票で期待に有意差がなかったと報告されている。Dは施術者の判定でも群間差がなかった(p=0.811、0.840)ため誤り。根拠:第12章/[12]
過敏性腸症候群の患者262人を、待機・偽鍼のみ・偽鍼+関係性の強化の3群に割り付けた試験で、十分な症状緩和を報告した割合はどう変化したか。
3群はいずれも実際の治療を受けていない。それでも報告割合は28%・44%・62%と段階的に上昇し、傾向性の検定はp<0.001であった。著者らは最も頑健な成分を患者-施術者関係としている。A・B・Dはいずれも報告と異なる。根拠:第13章/[13]
慢性疼痛を対象とした39試験・20,827人の個別患者データメタ解析で報告された、鍼と対照の群間差の大きさはどれか。
無治療対照との差が約0.5標準偏差、偽鍼との差が約0.2標準偏差である。この0.2は、非特異的効果を差し引いても残る部分にあたる。Cは大小が逆。Dはいずれの比較でもp<.001と報告されていることと矛盾する。根拠:第14章/[14]
1966年から1995年のMedline抄録を対象に、発表国別の陽性結果の割合を調べた研究がある。英国で発表された試験のうち試験治療が優れていたとされたものは75%であった。中国およびロシア/ソ連について報告されたことはどれか。
中国99%、ロシア/ソ連97%であり、両国で発表された試験のうち試験治療が無効であったと報告したものは1本もなかった。著者らは出版バイアスを説明として挙げ、系統的レビューではこれらの国のデータの扱いを慎重に検討すべきとしている。A・B・Cはいずれも報告と異なる。根拠:第15章/[17]
灸の有害事象を14のデータベースから網羅的に集めた系統的レビューが、結論として明記していることはどれか。
著者らは、灸は完全に無リスクではなくアレルギー・熱傷・感染などの潜在的な有害事象があるが、その発生率は不明であると結論している。Bはアレルギー反応や感染も報告されており誤り。Cは妊婦での早産・前期破水などの報告があり誤り。Dは別のレビューで死亡例を含む報告があり誤り。根拠:第17章/[19][20]
医学的に説明されない症状をもつ患者では、無処置でも50〜75%が改善すると報告されている。この事実が施術の判定に与える帰結として適切なものはどれか。
対照を置かなければ、観察された改善のどこまでが自然経過かを区別できない。Aは自然経過の存在が施術の効果を否定する根拠にはならないため誤り。Bは改善を中止理由とするもので、この事実からは導けない。Dは判定時期の議論とは無関係で、むしろ施術中の改善だけでの判定は避けるべきとされる。根拠:第16章・第18章/[18]
米国内科学会と米国疼痛学会の合同ガイドラインは、腰痛患者を病歴と身体診察によって3つの広いカテゴリに分類すべきとしている。その3つに含まれないものはどれか。
3分類はA・B・Dである。心理社会的因子は独立したカテゴリではなく、慢性の障害性腰痛への移行を予測する要素として病歴聴取に含めるべきものと位置づけられている。この違いは、心理的要因を「腰痛の一種」ではなく「予後の因子」として扱うという設計を反映している。根拠:第2章/[3]
山口県の整形外科外来を腰痛で受診した320人について、画像・神経学的診察・ブロック注射まで用いて原因を判定した横断研究では、非特異的腰痛と判定された割合はどれか。
非特異的腰痛は70人(22%)、特異的腰痛は250人(78%)であった。Dの85%は欧米の報告として広く流通している数字で、この研究の結果ではない。著者らは日本での割合が低い理由を、医療制度による診断のばらつきと推測している。根拠:第3章/[5]
腰痛が「世界的に障害の主要な原因」とされるとき、その根拠として数えられているものはどれか。
数えられているのは死亡ではなく、障害を抱えて生きた年数(YLD)である。腰痛が生命を奪うことはまれだが、生活を奪う量が大きい。この点は、施術の目標を痛みの強さだけに置かず、生活機能も測るべき理由につながる。根拠:第1章・第14章/[1]
腰痛のない人3,110人のCT・MRI所見を年齢別に推定した系統的レビューで、80歳の無症候者における椎間板変性の有病率はどれか。
椎間板変性は20歳の37%から80歳の96%へ増加する。Bの37%は20歳での値、Cの43%は80歳での椎間板突出、Aの19%は20歳での線維輪の亀裂であり、いずれも同じ研究の別の値である。著者らは、多くの変性所見は正常な加齢の一部で疼痛とは関連していないと述べている。根拠:第4章/[6]
50歳以下の症候群と無症候群のMRI所見を比較したメタ解析で、脊柱管狭窄のオッズ比は20.58(95%CI 0.05〜798.77、p=0.32)と報告された。この結果の解釈として適切なものはどれか。
点推定値は大きいが信頼区間が1をまたいで極端に広く、p値も有意水準に達していない。この推定にはほとんど情報がない。Aは点推定値だけを取り出した誤読、Cは信頼区間の下限だけを取り出した誤読、Dは研究の設計と無関係である。根拠:第5章/[7]
腰痛における椎体骨折のレッドフラッグの診断精度を検証したCochraneレビュー(14研究)が、結論として述べていることはどれか。
結論は、精査の判断を導くうえで潜在的に有用なレッドフラッグはごくわずかしかない、というものである。Bは言い過ぎで、外傷の痕跡や高齢など有用な項目は存在する。Aは結論と逆。Dはこのレビューが述べていない。なお研究間の異質性が大きくメタ解析は実施できなかった。根拠:第7章/[9]
同じレビューでは、椎体骨折の有病率が組み入れ研究間で0.68%から68%まで開いていた。この事実が臨床判断に与える帰結はどれか。
検査後の確からしさは、検査前の確からしさと尤度比の両方で決まる。もともとの有病率が0.68%の場と68%の場では、同じ所見が陽性でもたどり着く結論が違う。Bは検査前確率を無視した誤り。Cは逆。Dはばらつきの原因が医療の場の違いにあることと整合しない。根拠:第8章/[9]
国際整形徒手理学療法士連盟が重篤な脊椎病変の評価枠組みを公表した際、レッドフラッグについて明記した現状認識はどれか。
枠組みは、大多数のレッドフラッグについて診断精度の質の高い証拠が存在しないことを明記し、そのうえでレッドフラッグの役割を明確にする臨床推論の経路を提供するものと位置づけられている。Cは、まれではあるが帰結が重大という認識と逆である。根拠:第9章/[10]
33コホート・11,166人を統合したメタ解析で、急性腰痛の疼痛得点(最大100点)はベースラインで52だった。6週後の値はどれか。
6週後は23(95%CI 21〜25)である。Cの12は26週後、Dの6は52週後の値であり、いずれも同じコホートの別の時点である。最初の6週間で半分以下に落ちるこの動きが、施術の効果を判定するときの基準線になる。根拠:第11章/[11]
同じメタ解析で、急性コホートと持続性コホートの疼痛得点はベースラインでほぼ同じ(52と51)だった。52週後について報告されたことはどれか。
急性は6まで下がるのに対し、持続性は23で止まっている。出発点が同じでも、その後の動き方が違う。この差は、慢性の患者のほうが自然経過による改善の余地が小さく、施術の効果を判定しやすいことを意味する。A・B・Dはいずれも報告値と一致しない。根拠:第12章/[11]
鍼のCochraneレビューは、偽介入との比較で疼痛の平均差が−9.22(95%CI −13.82〜−4.61、VAS 0〜100)だったと報告したうえで、ある注記を加えている。その注記はどれか。
この差は15点または30%の相対変化という臨床的に重要な閾値に達していなかったと明記されている。Bは信頼区間が0を含まないことと矛盾する。Cはこの比較が直後(7日まで)の効果であることと合わない。Dは確実性が低と判定されているため誤り。根拠:第15章/[14]
慢性腰痛に対する灸の系統的レビュー(10RCT・987人)で、灸が有意差を示さなかった比較相手はどれか。
体幹安定化トレーニングとの比較のみ有意差がなかった(p=0.08)。西洋薬と鍼に対しては有意差が報告されている。Cの無処置はこのレビューの比較対象に含まれていない。ガイドラインが慢性腰痛の第一選択に運動を置いていることと、この結果は整合している。根拠:第16章/[13]
腰痛に対する表在温熱と寒冷を検証したCochraneレビュー(9試験・1,117人)の結論として適切なものはどれか。
ヒートラップ療法が急性・亜急性の混在集団で疼痛と障害を短期的に小さく減少させるという中等度の証拠があるとされた一方、寒冷は質の低い3研究しか見つからず結論を出せないとされた。Aは温熱の証拠を過大に、Dは安全性の問題を述べたものではない。根拠:第1章/[1]
米国内科学会のガイドラインが急性・亜急性腰痛の非薬物治療として挙げた表在温熱・マッサージ・鍼・脊椎マニピュレーションのうち、中等度の質の証拠がついていたものはどれか。
推奨1のなかで中等度の質の証拠がついているのは表在温熱だけで、他の3つはいずれも低い質の証拠とされている。なお慢性腰痛への推奨2では鍼が中等度の質に上がる一方、表在温熱は一覧に現れない。根拠:第2章/[2]
温熱療法の証拠を灸にそのまま当てはめることができない理由として、適切でないものはどれか。
灸は皮膚に熱を加える手技であり、Dは前提そのものが誤りである。A・B・Cはいずれも、温熱療法の証拠を灸へ外挿する際の障害として実際に挙げられる違いである。だからこそ両者を分離する偽灸対照の試験が要る。根拠:第3章/[1]
慢性腰痛に対する灸の系統的レビュー(10試験・987人)で、灸が有意差を示さなかった比較相手はどれか。
体幹安定化トレーニングとの比較のみ信頼区間が0をまたぎ、有意差がなかった。西洋薬と鍼に対しては有意差が報告されている。Dのマッサージは併用の比較には登場するが、単独の比較相手として有意差の有無が示された対象ではない。根拠:第4章・第5章/[3]
腰痛に対する灸の系統的レビュー2件(10試験987人、21試験2,198人)で、GRADEにより判定された証拠のレベルはどれか。
どちらのレビューも証拠レベルを very low から low と判定している。試験の数が増えても、個々の試験の設計が変わらなければ確実性は上がらない。Dは両レビューともGRADEを適用していると明記しているため誤り。根拠:第4章・第6章/[3][4]
腰痛患者の炎症性サイトカインを測定した30試験のメタ解析は、出版バイアスの解析でEgger検定のp値が極めて小さい値をとったと報告している。この所見が意味することはどれか。
Egger検定は小規模研究効果を検出するもので、有意であることは小さな試験ほど大きな効果を報告している状態を示す。原因の候補には出版バイアスや小規模試験の質の低さがある。Cは、この解析が高い異質性を報告しメタ回帰でも説明できなかったこととも矛盾する。根拠:第7章/[5]
寒湿型腰痛の72人を対象に、両群とも同じ鍼治療を受け、一方の群にのみ雷火灸を加えた試験では、総有効率が観察群94.3%、対照群82.9%と報告された。この結果の読み方として適切なものはどれか。
両群とも鍼を受けており、違いは灸を加えたかどうかだけである。したがって示されたのは上乗せ効果であり、灸単独の効果ではない。Bは対照群でも高い有効率が報告されていることと矛盾する。Cは偽灸対照が置かれていないため誤り。根拠:第8章/[6]
慢性腰痛に対する運動療法のCochraneレビュー(249試験)が報告した、無治療・通常ケア・プラセボと比べた疼痛強度の差と証拠の確実性の組み合わせはどれか。
疼痛強度は運動群のほうが15点良好(12〜18点良好)で、確実性は中等度である。7点良好は機能制限のほうの値であり、こちらも確実性は中等度である。確実性が高いと判定された比較はこのレビューにはない。根拠:第10章/[8]
慢性非特異的腰痛に対する鍼のCochraneレビュー(33研究・8,270人)は、偽介入との比較で疼痛の平均差を−9.22(95%CI −13.82〜−4.61、VAS 0〜100)と報告したうえで、ある注記を加えている。その注記はどれか。
この差は15点または30%の相対変化という閾値を満たしていなかったと明記されている。Aは信頼区間が0を含まないことと矛盾する。Cはこの比較が7日までの即時効果であることと合わない。Dは確実性が低と判定されているため誤り。根拠:第11章/[9]
慢性疼痛を対象とした39試験・20,827人の個別患者データメタ解析が報告した、鍼と対照の群間差の大きさはどれか。
無治療対照との差が約0.5標準偏差、偽鍼との差が約0.2標準偏差である。Bは大小が逆。Dはいずれの比較でも有意と報告されていることと矛盾する。この0.2は、非特異的効果を差し引いても残る部分にあたる。根拠:第12章/[10]
33コホート・11,166人のメタ解析によれば、急性腰痛の疼痛得点(最大100点)はベースライン52から6週後23へ低下する。この事実が施術の効果判定に与える帰結として適切なものはどれか。
6週間で29点低下するこの動きは、証拠のある治療の効果量を上回る大きさである。したがって急性期の改善は自然経過で説明されうる。Aは逆で、自然経過による変化が大きいぶん判定しにくい。Dはこの比較と矛盾する。根拠:第16章/[14]
慢性腰痛の運動療法試験230件・31,674人を対象に、バイアスのリスクと効果量の関係を調べたメタ疫学研究が見出したことはどれか。
疼痛強度についてはどのバイアス領域とも有意な関連が認められず、身体機能についてのみアウトカム測定のバイアスとの関連が有意であった。Aは疼痛の結果と矛盾し、Cは身体機能の結果を無視している。この粒度で持っておくことが、粗い一般化を避ける。根拠:第17章/[15]
灸の有害事象について、複数の系統的レビューが共通して述べていることはどれか。
灸は完全に無リスクではなく、アレルギー・熱傷・感染などの潜在的な有害事象があるが発生率は不明であると結論されている。腰痛の領域でも、21試験2,198人を集めたレビューが安全性のレベルをまだ評価できないとしている。Aはアレルギーや感染も報告されており誤り。Bは死亡例を含む報告があるため誤り。根拠:第18章・第19章/[16][17]
日本整形外科学会肩こりプロジェクト委員会による肩こりの定義に含まれているものはどれか。
定義は「頸より肩甲部にかけての筋緊張感(こり感)、重圧感、および鈍痛などを総称」するもので、含まれているのは感覚の種類の列挙である。原因も期間も重症度の基準も含まれていない。つまり肩こりは、患者が報告する感覚によって定義されている。根拠:第1章・第2章/[1]
世界疾病負荷研究2019を用いた解析では、1990年から2019年にかけて頸部痛の有病者数が増加したと報告された。その増加率はどれか。
1990年から2019年で発生数71.89%、有病者数98.21%、YLD数78.17%の増加が報告されている。Cの142%は2019年と比較した2044年までの有病者数の予測増加、Dの519は2021年の年齢標準化発生率(10万対)であり、いずれも別の指標の値である。根拠:第3章/[2][3]
肩こり群60名と非肩こり群10名を対象に、生体組織硬さ計と第三者の触診で筋硬度を測った日本の研究で、認められなかった関係はどれか。
硬さ計と触診は有意に相関し、鍼灸治療の効果は実施群で高かった。一方、肩こり群と非肩こり群のあいだに硬さの差はなく、自覚度と硬さにも、治療前後の変化量にも相関がなかった。著者らはここから「肩こりと硬さとの関係性がない」と述べている。根拠:第4章/[4]
硬さ計の測定値と第三者による触診が有意に相関したという所見から、言えることはどれか。
裏づけられたのは硬さを検出する能力である。同じ研究で、その硬さは肩こりの有無とも自覚度とも対応しなかったため、Bは言えない。Cは一致を示しただけで優劣の比較ではない。Dは効果予測を検討した研究ではない。根拠:第4章・第5章/[4]
緊張型頭痛の患者203人で、筋硬度計による上部僧帽筋の硬さと頭痛の重症度の関連を調べた研究において、頭痛重症度と有意に関連しなかったものはどれか。
硬度・慢性緊張型頭痛・年齢・脱力・眼瞼の重い感じは頭痛重症度と関連したが、肩こりと頸部痛は有意な関連を示さなかった。器械で測った硬さは症状と関連しうるのに、患者が訴える「こり」は関連しない。この乖離が、肩こりを測るうえでの中心的な問題である。根拠:第6章/[5]
健常若年成人22人に上部僧帽筋の自己ストレッチを行わせ、前後の変化を測定した研究で観察されたことはどれか。
血圧、眼灌流圧、唾液アミラーゼ活性、眼精疲労と肩こりのVAS、僧帽筋の硬さ、皮膚と脈絡膜の血流がいずれも低下し、眼圧と心拍数は変化しなかった。硬さが下がったこと単独を施術の効果の根拠にできないのは、健常者でも同時にこれだけの指標が動くからである。根拠:第7章/[6]
慢性僧帽筋筋痛と診断された76人を、レーザードップラー血流計と表面筋電図で測定した研究の主要な所見はどれか。
患者では疼痛側の局所血流が一貫して低く、低い収縮強度でその差は有意であった。著者らは、この低下が筋内圧の変化では説明されないとしたうえで、微小循環の調節障害が中心的な意味を持つと結論している。Bの平均パワー周波数には変化がなかった。根拠:第8章/[8]
反復的な組立作業に伴う慢性筋痛の患者17人から上部僧帽筋の生検を行い、同時に血流を測定した研究で報告されたことはどれか。
筋痛は局所血流の低下と相関し、痛みの左右差が大きいほど血流低下も大きかった。ミトコンドリア機能の障害を示す ragged red fibers は筋痛の存在と関連し、I型線維に限局していた。B・C・Dはいずれも報告と異なる。根拠:第9章/[9]
健常者・線維筋痛症・作業関連僧帽筋筋痛の3群に僧帽筋への刺鍼を行い、刺激後60分間の血流を測定した研究の所見はどれか。
3群とも血流増加は認められたが、重症の作業関連僧帽筋筋痛の患者群では刺激の種類による差がなく、全般に血流反応が小さかった。深部刺激での筋血流の増加は、健常者で2つの患者群より有意に大きかった。血流増加は症状の持続期間や年齢と負の相関を示した。根拠:第10章/[10]
頸部痛を主訴とした頭蓋外椎骨動脈解離58例を集めたスコーピングレビューが報告した患者像はどれか。
女性が63.8%、平均年齢は36.8歳であった。頸部痛は典型的に片側性・重度で鎮痛薬に反応しにくく、発症契機は半数で同定できなかった。年齢と性別から「まず心配ない」と判断する根拠にはならない。根拠:第11章/[11]
頸部の重篤病態のレッドフラッグについて、複数の研究が共通して指摘していることはどれか。
椎骨動脈解離では組み入れ研究がすべて症例報告または症例集積、腫瘍では25研究すべてが症例報告であり、いずれも診断精度を定量できていない。臨床家の合意研究も、レッドフラッグはクラスターとして解釈されるときに最も情報を持つとしている。Bは言い過ぎ、Dはいずれの研究も述べていない。根拠:第12章・第13章/[12][13]
非特異的頸部痛に対する温熱療法の系統的レビューは、91研究を同定したうえで、ある結論を述べている。その結論はどれか。
組み入れ基準を満たしたのは2研究・67人のみで、証拠基盤はきわめて限られていた。著者らは推奨も非推奨も支持できないとしつつ、重篤な有害作用が予期されないことから自己管理の選択肢として考慮されうると述べている。Dは運動療法と直接比較した結果ではない。根拠:第16章/[16]
非特異的頸部痛に対する温熱療法の系統的レビューは、91研究を同定したうえで組み入れ基準を満たした研究の数を報告している。その数はどれか。
組み入れ基準を満たしたのは2研究・計67人のみで、いずれも乾式温熱を検討したものであった。著者らは推奨とも非推奨とも結論できないとしつつ、重篤な有害作用が予期されないことから自己管理の選択肢としては考慮されうると述べている。Aは運動療法のCochraneレビュー、Dは慢性疼痛の個別患者データメタ解析の試験数である。根拠:第1章/[1]
慢性非特異的頸部痛の患者92人を、低出力持続温熱・温熱+イブプロフェン・偽温熱+偽薬・対照の4群に分け、全員に通常の理学療法を行った試験で報告された所見はどれか。
低出力持続温熱もイブプロフェンも疼痛と頸部障害指数を有意に減少させ可動域を増加させたうえで、自宅運動の遵守率が温熱群と温熱+イブプロフェン群で有意に高かった。温熱が運動の代わりではなく、運動を続けさせる方向に働いた点が臨床的に重要である。根拠:第2章/[3]
慢性非特異的頸部痛の70人を、同じ温度・同じ時間の泥パック群とホットパック群に分け、両群とも経皮的電気神経刺激と在宅運動を併用した試験の結果はどれか。
両群とも大半の指標で有意に改善し、群間比較では疼痛VAS・修正頸部障害指数・抑うつ・生活の質の複数項目で泥パック群が優った。同じ温度・時間でも媒体が違えば結果が変わりうる。ただし両群とも電気刺激と運動を併用しているため、温熱単独の効果は切り出せない。根拠:第3章/[4]
日本語で言う「肩こり」を対象として、灸単独を偽灸と比較した無作為化比較試験について、現時点で言えることはどれか。
英語・日本語・中国語圏を複数の角度から検索したが、この条件を満たす試験は見出せなかった。代わりに見つかるのは頸椎症・頸椎症性神経根症・頸性めまいを対象とした試験である。A・B・Dはいずれも存在を前提としており根拠がない。根拠:第4章/[5]
頸椎症に対する雷火灸のメタ解析は、総有効率でオッズ比2.48(95%CI 1.80〜3.41)を報告したうえで、結論に留保を付けている。その留保はどれか。
著者らは治療効果と安全性が統計的に有意であったとしたうえで、エビデンスレベルが低いため結果は慎重に解釈すべきであり、大規模で質の高い試験が必要と述べている。Cは信頼区間が1をまたいでいないことと矛盾する。なお比較相手は「他の治療」であり偽灸ではない。根拠:第5章/[5]
椎骨動脈型頸椎症の60例を、温熱感受性が消失するまで施灸する群と各経穴15分と定めた群に分けた試験が示したことはどれか。
治癒・有効率は治療後と6か月後の追跡のいずれでも、温熱感受性が消失するまで施灸した群のほうが高かった。臨床症状と機能のスコアも同群で有意に大きく改善した。灸の量が結果を変えうるなら、量の記載がない試験の結果は自院の施術に当てはめられない。根拠:第6章/[6]
頸椎症による慢性頸部痛の111例を、選穴の異なる2群に分けて鍼・直接灸・皮内鍼を行った試験では、全体の群間差は有意でなかったが、45歳超と罹病7年超の部分集団では差が認められた。この結果の読み方として適切なものはどれか。
全体で差がなく部分集団でのみ差がある結果は、事前に規定されていない層別解析の可能性を疑って読む。層別する軸を後から選べば偶然の差が見つかりやすくなるためである。B・Cは結果の一部だけを採用するもの、Dは試験が述べていない。根拠:第7章/[7]
頸部痛に対する運動療法のCochraneレビュー(27試験)が、中等度の質の証拠として支持しなかったものはどれか。
伸張のみ、呼吸運動、全身の体力トレーニング、パターン同期を伴うフィードバック運動については、治療直後の疼痛や機能を変えない可能性があるという低い質の証拠が示された。中等度の質で支持されたのは筋力強化を含む運動である。なお急性の頸部痛については証拠が見つからなかった。根拠:第10章/[10]
頸部疾患に対する鍼のCochraneレビューには2つの版が書誌データベースに収載されている。より新しい版(2016年11月17日)について、書誌上の事実はどれか。
新しい版は「WITHDRAWN:」を冠した表題で収載されており、書誌記録上は前の版の更新版として位置づけられている。撤回の理由は原典で確認できていないため、確認できるのは収載状態という書誌上の事実のみである。文献を引くときは、著者名と年号だけでなく版と収載状態まで見る必要がある。根拠:第11章/[12]
慢性疼痛を対象とした39試験・20,827人の個別患者データメタ解析が報告した、鍼と対照の群間差の大きさはどれか。
無治療対照との差が約0.5標準偏差、偽鍼との差が約0.2標準偏差である。Bは大小が逆。Aはいずれの比較でも有意と報告されていることと矛盾する。この0.2は、非特異的効果を差し引いても残る部分にあたる。ただしこれは鍼のデータであり、灸の効果量は推定できない。根拠:第12章/[13]
健常若年成人22人に上部僧帽筋の自己ストレッチを行わせ、前後を測定した研究の所見から、施術の効果判定について言えることはどれか。
自己ストレッチだけで、硬さ・自覚のVAS・血圧・眼灌流圧・唾液アミラーゼ・皮膚と脈絡膜の血流がいずれも低下した。対照を置かなければ、施術後の硬さの低下が施術によるものか、力を抜いたことによるものかを区別できない。Dは自覚と硬さの相関が別の研究で否定されていることとも整合しない。根拠:第16章/[17]
肩こり群60名と非肩こり群10名で自覚度と筋硬度を測った研究は4つの所見を同時に報告している。そのうち効果判定にとって最も重い意味を持つのはどれか。
変化量どうしに相関がなかったことは、「硬さが取れたから楽になった」という因果の説明がこの測定に支持されないことを意味する。Bは触診の能力を裏づける所見だが、効果判定の根拠にはならない。Dは研究の限界であって所見ではない。根拠:第17章/[18]
灸の有害事象について、14のデータベースを検索した系統的レビューが結論として明記していることはどれか。
灸は完全に無リスクではなく、アレルギー・熱傷・感染などの潜在的な有害事象があるが発生率は不明であると結論されている。Aはアレルギーや感染も報告されており誤り。Dは別のレビューで死亡例を含む報告があるため誤り。分母が不明である以上「めったに起きない」とは言えない。根拠:第18章/[19][20]
日本の地域住民3,040人を対象としたベースライン調査では、X線上の膝OAの有病率が54.6%と報告された。同じ調査における「症状のある膝OA」の有病率はどれか。
症状のある膝OAは24.3%であり、X線上の膝OA(54.6%)の半分以下である。Cの39.3%は10年後の第4回調査におけるX線上の有病率、Dの61.5%はベースラインにおける女性のX線上の有病率であり、いずれも同じ研究の別の値である。根拠:第1章/[1]
X線上の膝OAが54.6%、症状のある膝OAが24.3%という同一集団の2つの数値から、施術者が持つべき理解はどれか。
画像上の変化を持つ人の半分以下しか症状を訴えていない。したがって所見の存在だけでは施術の理由にならない。AとBは行き過ぎた一般化であり、Dは症状のある膝OAが画像上のOAの部分集合であることと矛盾する。根拠:第1章/[1]
日本の地域住民コホートで報告された、膝痛と腰痛の併存に関する所見はどれか。
膝痛と腰痛の両方を有する者は全体の12.2%であり、膝痛の存在が腰痛に影響し、その逆も同様であると報告された。同じコホートでは膝OAと腰椎症が42.0%の人で併存していた。B・C・Dはいずれも報告と異なる。根拠:第2章/[2][3]
Kellgren-Lawrence分類が測っているものはどれか。
骨棘の形成や関節裂隙の狭小化といったX線上の構造変化を段階に分けたものであり、痛みの強さや生活機能を測ったものではない。同じ集団でX線上のOAが54.6%、症状のあるOAが24.3%と分かれるのは、両者が別の量だからである。根拠:第4章/[1]
症状のある膝OA患者392人を対象とした試験のベースライン解析では、KL gradeとWOMAC得点の関係についてどう報告されたか。
Spearmanの相関検定で、KL gradeとWOMACの疼痛・機能・こわばりの各得点および総得点に正の相関が示された。地域住民では画像所見が症状の有無を決めないが、すでに症状のある患者のなかでは、gradeが重症度の目安になりうる。この2つは矛盾しない。根拠:第5章/[5]
50歳以上の慢性膝痛患者282人を対象とした無作為化比較試験では、主要アウトカムに臨床的に意味のある最小の差が設定された。疼痛(0〜10の数値評価尺度)についてのその値はどれか。
疼痛は1.8単位、身体機能(WOMAC、0〜68)は6単位が臨床的に意味のある最小の差として設定された。Dの6単位は機能のほうの値である。自院で0〜10の尺度を使う場合、1.8点が患者が違いを感じ始める目安になる。根拠:第7章/[8]
症状のある膝OA患者392人をレーザー灸群と偽レーザー群に割り付け、KL grade別に4週後の改善を解析した研究で、grade 1 より有意に大きな改善が認められたのはどの層か。
疼痛・機能・総得点について、grade 2 と grade 3 の患者が grade 1 より有意に大きな改善を示した。こわばりについては grade 2 のみであった。grade 4 では有意な効果が示されなかった。著者らの結論も、レーザー灸は grade 2 と 3 で有効というものである。根拠:第8章/[5]
同じ試験でKL grade 4 の患者に有意な効果が示されなかったという報告から、正確に言えることはどれか。
有意差が出なかったことは効果がゼロであることの証明ではない。部分集団に分けた時点で人数は減り、小さな効果は検出されにくくなる。B・C・Dはいずれも報告されていないことを断定している。言えるのは、改善が重症度に単調に比例していなかったという事実までである。根拠:第9章/[5]
X線所見はあるが症状のない人について、施術者が取るべき位置として適切なものはどれか。
X線上の膝OAは地域住民の多数派に近く、その半分以下しか症状を訴えていない。所見の存在は施術の理由にならない。A・B・Dはいずれも、予防効果や進行抑制を示す報告がないまま通院を求めるものである。根拠:第10章/[1][5]
膝OAに対する灸の43研究・4,008人のメタ解析が、治療レジメンについて報告した所見はどれか。
週3回を超える治療頻度が、それより少ない回数より有効であったと報告されている。ただしこれは研究間の比較であり、同一患者に異なる頻度を割り付けた試験ではないため、因果として読むには弱い。根拠:第11章・第12章/[7]
変形性関節症研究学会が膝OAの「中核治療(Core Treatments)」として挙げているものはどれか。
中核治療は、関節炎に関する教育と構造化された陸上運動プログラム(食事による体重管理を伴う場合と伴わない場合)である。オピオイドは強く推奨されず、アセトアミノフェンは条件つきで推奨されないと位置づけられている。根拠:第15章/[11]
灸と膝痛について、現時点で定量的なデータが存在しないのはどれか。
灸を運動療法に上乗せし、運動単独と比較した試験は今回の調査範囲では見出せなかった。Bは392人のKL grade別解析があり、Cは複数の偽対照試験が存在し、Dはメタ解析が頻度について報告している。膝痛は、灸で偽対照試験が実際に積まれた領域である。根拠:第17章/[5][14]
慢性の変形性膝関節症疼痛をもつ110人を実灸群と偽灸群に割り付け、週3回・6週間施術した二重盲検試験で、24週時点の結果はどうであったか。
WOMAC疼痛得点は3週・6週・12週・24週のいずれでも実灸群が有意に優ったが、身体機能は3週・6週・12週で有意、24週ではp=0.058で有意ではなかった。痛みが軽くなることと動けるようになることは別々に動く。根拠:第2章/[1]
変形性膝関節症患者150人を実灸群と偽灸群に割り付け、SF-36で生活の質を評価した試験で、実灸群が有意に優った下位尺度はどれか。
全体的健康感が6週と12週、活力が12週で有意であった。SF-36には8つの下位尺度があり、そのうち2つで差が出た。「生活の質が上がる」と一般化して伝えるのは報告値を超えている。根拠:第3章/[2]
変形性膝関節症患者392人をレーザー灸群と偽レーザー灸群に割り付け、15m最速歩行時間を主要アウトカムとした二重盲検・多施設試験の結果はどれか。
レーザー灸群では4週・12週とも治療前より有意に短縮したが、偽群では有意差がなかった。両群の比較でもレーザー灸群が短かった。偽群でこの指標が動かなかったことは、実測の歩行時間が期待や通院の影響を受けにくい可能性を示唆する。根拠:第4章/[3]
膝痛の領域で複数の偽灸対照試験が実施できた理由として、報告に基づいて言えることはどれか。
熱と煙を遮断する台座を用いた偽灸デバイスは、志願者71人の試験で参加者・施術者とも判別できないことが確認されている。膝痛の110人の試験でも盲検化の成功が明記され、392人の試験はレーザー方式で二重盲検を実現している。A・C・Dはいずれも報告に根拠がない。根拠:第1章・第13章/[17]
膝OAに対する灸の43研究・4,008人のメタ解析で報告されたWOMACの効果量はどれか。
WOMACは−0.91、VASは−0.95と報告された。Aは運動療法のCochraneレビューにおける疼痛の標準化平均差、Dは撤回された温鍼灸のメタ解析が報告したWOMACの値であり、いずれも別の文献の値である。根拠:第5章/[5]
膝OA患者において鍼と灸の併用を他の標準治療と比較した18試験のメタ解析で、WOMACのアウトカムについて報告されたことはどれか。
60週を超える長期では有意な改善が報告された一方、4週未満の短期と6〜60週の中期では結果が一定しなかった。通常は治療直後に効果が最も大きく時間とともに減衰するため、逆のパターンは解釈が難しい。この不一致の理由は原著で説明されていない。根拠:第6章/[6]
膝OAに対する温鍼灸と薬物療法を比較した30試験の系統的レビューについて、その後に起きたことはどれか。
この論文は2023年に撤回され、同じ雑誌に撤回通知が掲載されている。撤回された論文の数値が撤回後も引用され続けることは実際に起こるため、引用の前に文献の現在の状態を確認する習慣が要る。根拠:第7章/[7][8]
膝OAに対する陸上運動療法のCochraneレビュー(54研究)が、100点法で報告した治療直後の疼痛の改善はどれか。
治療直後の疼痛は12点改善した。Dの10点は身体機能、Bの4点は生活の質、Cの6点は2〜6か月後の疼痛であり、いずれも同じレビューの別の値である。効果は治療終了後2〜6か月持続すると報告されている。根拠:第8章/[11]
変形性関節症研究学会の2019年ガイドラインが、膝OAの中核治療として挙げているものはどれか。
中核治療は関節炎に関する教育と構造化された陸上運動プログラム(食事による体重管理を伴う場合と伴わない場合)である。アセトアミノフェンは条件つきで推奨されず、経口・経皮のオピオイドは強く推奨されないと位置づけられている。根拠:第9章/[12]
50歳以上の慢性膝痛患者282人を、無治療・鍼・レーザー鍼・偽レーザー鍼の4群に割り付けた試験の12週時点の結果はどれか。
12週時点で鍼もレーザー鍼も偽レーザー鍼と比べて疼痛・機能のいずれも有意に改善しなかった。無治療対照との比較では12週時点でわずかな疼痛の改善が認められたが、1年時点では認められなかった。著者らはこれらの患者に対する鍼を支持しないと結論している。根拠:第10章/[14]
灸のメタ解析で総有効率が灸群93.11%、対照群76.41%と報告された。この指標を扱ううえで適切な態度はどれか。
総有効率は判定基準が試験ごとに異なり、非盲検では判定者の期待が入りやすく、効果の大きさを表さない。灸群の値だけを示すと、対照群でも76.41%が「有効」と判定されていた事実が消える。A・B・Cはいずれもこの指標の性質と合わない。根拠:第15章/[5]
392人の試験をKellgren-Lawrence grade別に解析した研究で、grade 4 の患者に有意な効果が示されなかった理由について、この解析から検証できることはどれか。
機序を測っていないためBは検証できず、grade 4 の患者はベースラインのWOMAC得点が高い(症状が重い)ためCの床効果も当てはまらず、各層の人数が抄録に示されていないためDも確かめられない。分かるのは、この層で有意な改善が観察されなかったという事実だけである。根拠:第16章/[4]
灸の有害事象について、複数の系統的レビューが共通して述べていることはどれか。
灸は完全に無リスクではなく、アレルギー・熱傷・感染などの潜在的な有害事象があるが発生率は不明であると結論されている。膝OAのメタ解析でも重篤な有害事象が1件報告されている。Aはアレルギーや感染も報告されており誤り。Bは死亡例を含む報告があるため誤り。根拠:第17章/[19][20]